通貨の特徴と選び方

通貨の特徴と選び方

香港ドル:最新金利と通貨の特性

外貨預金のお預入れに当たっては、各通貨の特徴や傾向を理解することが大切です。
通貨選択の際の参考にしてください。

香港ドル

  • 国際通貨である香港ドルを独自に発行
  • 米ドルとのペッグ制 (固定相場制) を採用
  • 対円相場は、米ドルの対円相場とほぼ連動

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こんなお客さまにおすすめ
中国およびアジアの成長力に興味・関心を持っている方。

情報の豊富さ
5つ星のうち 1
通貨の安定性
5つ星のうち 3
金利
5つ星のうち 1

独自通貨を発行も1国2制度が事実上崩壊

中国の特別行政区である香港。かつては英国の植民地でしたが、1997年に中国に返還されました。返還後も「1国2制度」のもと、2047年まで中国本土とは異なる資本主義体制を維持することが約束されていました。
金融政策の独自性も中国から認められており、中国本土で流通する人民元ではなく、国際通貨である香港ドルを独自に発行しています。
中国の一部でありながら、規制が少なく、透明性や公平性の高い自由経済地域として経済的な発展をとげてきた香港は人口密度の高い活気あふれる街で、狭い平地に高層ビルが林立する風景は有名です。
世界でも重要な金融センターとして、世界中の銀行や証券会社などが集まっていました。オフショア人民元のハブでもあります。
国際貿易港としての歴史も古く、アジアの物流の拠点でもあります。
しかし、2014年の雨傘運動、2019年の「逃亡犯条例」改正案をめぐる大規模デモ、2020年の「香港国家安全法」導入以降、中国本土政府による統制が急速に強化され、民主派の活動制限や選挙制度の改正など「一国二制度」の実質的な形骸化が進みました。これを受けて米国は香港への優遇措置を停止、制裁措置を発動しました。2025年現在、司法独立は形式上、維持されていますが、国家安全を理由とした逮捕などが相次いでいます。自由度が低下した香港の金融センターとしての地位は低下しました。
とはいえ2025年3月に発表された「グローバル金融センターインデックス (GFCI) 」の調査では、ニューヨーク、ロンドン、シンガポールに次ぐ4位のままで、依然としてアジア有数の金融ハブであり続けています。
また、世界有数の貨物取扱量を誇る香港国際空港や、活発なコンテナ港を有し、国際物流のハブとしても機能しています。
香港経済は足元堅調で、IMFの推計では2025年実質GDP成長率見通しは1.52%となっています。中国本土経済の成長が追い風となる一方、米国の金融政策や地政学的リスクへの警戒感は残っています。

通貨の特性

香港ドルの発行は中央銀行ではなく、市中銀行である香港上海銀行、スタンダード・チャータード銀行、中国銀行の3行が行っています。金融政策は中央銀行に相当する香港金融管理局 (HKMA) が行っています。
香港ドルは、1983年以降、米ドルとのペッグ制 (固定相場制) を採用し、2005年に目標相場圏制度が導入されたことにより、1米ドル=7.75~7.85香港ドルの間での変動幅が設けられました。
したがって香港ドルの対円相場も米ドル / 円の動きに強く連動します。
米ドルとのペッグ制を採用しているため、香港の金融政策は基本的に米国FRB (連邦準備制度理事会、中央銀行に相当) の金融政策に追随せざるを得ません。ペッグ制、連動性を保つためには双方の金利の動きをそろえなければならないためです。
香港の米ドルペッグ制は1香港ドルの発行ごとに相当する米ドルが裏付けされる仕組みになっています。
返還以降、香港の景気動向は中国本土の景気動向の影響が大きくなりました。しかし、香港はペッグ制を採用しているため、どんなに中国 (香港) の景気がよくても、米国の景気が悪ければ緩和的な金融政策を取らざるを得ないというジレンマを抱えています。逆に米国が利上げを行っていれば、景気が悪くても金融を引き締めなければなりません。いずれペッグ制を解消するという見方もあります。また、中国が統制を強めることで香港が国際金融センターとしての地位を維持できなくなれば、資金が流出する恐れがありペッグ制の維持が困難になるとの見方もあります。バスケット制への移行、または人民元にペッグするとの予想もあります。HKMAと香港政府は、ペッグ制の維持に極めて強い意志を繰り返し表明していますが、香港ドル預金をする場合はテールリスクとして意識しておきましょう。
2019年ごろに盛んだった市民の民主化デモは抑え込まれ、2022年5月には警察出身の強硬派の香港行政長官が選出されました。2024年の「国家安全条例」施行から1年余りが経ち、言論の自由をめぐる状況は厳しさを増しているといいます。中国共産党の支配が強まり、政治的なリスクは大きいと言わざるを得ません。中国経済とのつながりが強まるなか、米中対立が激化することも懸念材料となります。

過去10年間の香港ドルの値動き (チャート)

米ドルとのペッグ制を採用している香港ドルの対円相場は、米ドルの対円相場とほぼ連動しています。2008年のリーマンショック時にはFRBが政策金利を段階的に引き下げたことなどから、米ドル / 円が下落し、それに合わせて香港ドルも対円で下落しました。
しかし、2012年安倍晋三内閣が大胆な金融緩和を打ち出したことをきっかけに対米ドルで円安が進み、香港ドルに対しても円安トレンドに転換しました。
2018年以降しばらく狭いレンジでのボックス相場が続きましたが、2021年以降米国金利の上昇とともに米ドル高・円安が進み、香港ドル / 円も連動して動きました。
2022年には米国で金融引き締めが急速に進んだことを受けて香港ドルにも対米ドルで下落圧力がかかりました。香港ドルは許容変動幅 (1米ドル=7.75~7.85 香港ドル) の下限に達したことから、5月から11月までHKMAが大規模な為替介入 (香港ドル買い) を行いました。これにより介入の原資となる外貨準備高が急減し、ドルペッグ制の維持に不安も見られました。いったん持ち直したものの再び香港ドルは下落し、2023年2月以降も複数回の為替介入や利上げを行いました。ペッグ制の崩壊に賭ける投機筋の標的にされている面もあったとみられます。
ただ、その後当局の強い意志と、米国との金利差の縮小、コロナからの景気回復期待が高まったことなどにより香港ドルは上昇基調に転じました。2024年米ドル高・円安が一層進んだ局面では香港ドル / 円も連動し、2024年7月に1香港ドル=20円台後半の高値をつけました。
HKMA の余偉文総裁は、2025年1月にも「ペッグ制」について、香港にはこの制度を変更する意図も必要性もなく、外貨準備は潤沢で香港はペッグ制を守る能力を備えているとの認識を示しました。
足元で対米ドルでは非常に荒い値動きを見せています。米ドル安の流れのなか5月初旬に7.75香港ドルの変動幅上限まで上昇。HKMAがペッグを維持するために巨額の香港ドル売り介入を実施しました。この介入によって銀行間金利が急低下、香港ドルの調達コストが下がりキャリートレード (金利の低い香港ドルで調達し、金利の高い米ドルに投資する動き) が活発化します。今度は香港ドルが急落、1米ドル=7.85香港ドルと変動幅の下限に到達しました。
一方、香港ドル / 円は引き続き米ドル / 円に連動した値動きで足元は落ち着いた値動きです。2025年6月現在はここ2年ほどのレンジの下限1香港ドル=18円台で推移しています。

香港ドル/円チャート (10年)

注目指標はこれ !

米国の雇用統計
FRB (米連邦準備制度理事会) が毎月発表しています。香港ドルは米ドルにペッグしているので、米ドル相場に大きく影響する米国の雇用統計は重要な指標のひとつです。
<発表時期>
12日を含む週から3週間後の金曜日 (だいたい第1金曜日) の日本時間22:30 (夏時間は21:30)
中国製造業PMI (購買担当者景気指数)
中国の製造業の購買担当者に生産意欲などを調査して指数化した景気指標。中国国家統計局と中国物流購買連合会から発表されています。香港ドルは米ドルにペッグしているので、現時点で中国の景気動向が香港ドル相場に直接的に影響することはありませんが、影響の大きい中国経済の動向をおさえるためにチェックしましょう。
<発表時期>
毎月1日ごろ (日本時間10:30)
中国GDP成長率
中国国家統計局が四半期ごとに発表しています。香港ドル相場に直接影響を与えることはありませんが、中国製造業PMIと同様に中国経済をはかるうえで見ておきたい指標です。もし米ドルとのペッグが解消された場合は注目したい指標のひとつです。
<発表時期>
1・4・7・10月中旬 (原則として日本時間11:00ごろ、1月は変更が多い)
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