通貨の特徴と選び方
通貨の特徴と選び方
英ポンド:最新金利と通貨の特性
外貨預金のお預入れに当たっては、各通貨の特徴や傾向を理解することが大切です。
通貨選択の際の参考にしてください。
英ポンド
- EUの中心メンバーだったが、ユーロは採用せず
- GDPは欧州2位、世界6位。北米とも深い関係
- 主要国の中では、歴史的に金利が高い傾向がある
- こんなお客さまにおすすめ
- 世界の政治・経済への影響力が強い英国の通貨です。近年、英ポンドの変動幅はユーロや米ドルに比べてやや大きくなっており、リスクを取って、より大きな為替差益を得たい方に向いているかもしれません。
- 情報の豊富さ
- 通貨の安定性
- 金利


欧州の中心的存在 金融・証券市場で大きな影響力を持つ
英国はイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの4つの国からなる連合王国です。経済規模 (GDP) はドイツに次ぐ欧州第2位、世界第6位 (2024年、IMF) です。地理的・歴史的に欧州だけでなく、北米とも深い関係を持っています。
15~17世紀の大航海時代から世界の覇権を握っていた欧州の中心的存在で、18世紀後半には産業革命を起こし、世界に先駆けて近代的な工業国家となりました。英国で金本位制が確立されたこと、英国が世界に工業製品を輸出したことなどから、英ポンドは世界の基軸通貨となりました。第二次世界大戦後に米ドルに基軸通貨の座を取って代わられるまで、ロンドン市場は国際的資本・金融・為替市場の中心として圧倒的な地位を誇っていました。その歴史もあって、英国は現在でも金融・証券などの分野で世界的な影響力を持っており、ロンドン中心部のシティ (金融街) はニューヨークのウォール・ストリートと並ぶ金融センターとして知られています。
英国は、EU (欧州連合) の当初からの中心メンバーでしたが、政治的・経済的主体性が失われることを懸念して、通貨連合に加わってユーロを採用することを選びませんでした。
2008年9月に発生した金融危機 (リーマンショック) は2009年には世界同時不況をもたらし、金融セクターに依存していた英国経済には特に大きな影響がありました。そのため高金利を背景に上昇していたポンド相場は、直前の高値から半値以下まで暴落しました。これに対応して英国の中央銀行であるBOE (イングランド銀行) が5.75%まで引き上げていた政策金利を1年余りで0.5%まで急速に引き下げた結果、英景気は回復基調となりポンド相場は安定しました。2009年後半からギリシャ債務危機を発端にユーロ危機へと発展し、ユーロ圏経済は再びマイナス成長に陥りましたが、英国経済は緩やかな成長を続け、ポンドは2013年からは上昇基調となりました。
2016年6月に、英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票が行われ、その結果離脱 (ブレグジット) が決定しました。投票前後には離脱の影響への懸念が強まってポンドは再び安値圏近辺まで売られましたが、その後安定、2020年1月31日のEUからの離脱実行が、成長率などに与えた影響は限定的なものとなったことで再び上昇基調となりました。その後2020年前半には新型コロナウイルスの感染拡大を受けて景気が急速に悪化しましたが、2021年の実質GDP成長率は8.6%と第2次大戦以降最大のプラス成長となりました。その一方、エネルギー・食料品相場が大きく上昇し、インフレが高進しました。そこで、英国の中央銀行であるBOEは2021年12月16日、政策金利を0.15%引き上げ年0.25%にすると発表して利上げを開始し、その後2023年8月までに、2008年以来となる5.25%まで引き上げられました。
2022年2月、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始、現在まで両国の戦闘は長期化の様相を見せています。英国は米国とともにウクライナへの支援、ロシアへの経済制裁の中心的役割を果たしていますが、地政学的要因などからユーロ圏ほど直接的な影響は受けないと考えられています。
金利引き上げ開始以降堅調に推移していたポンドですが、ジョンソン元首相がコロナ禍における自粛期間中に首相官邸などで複数回のパーティーを行っていたことなどから、2022年7月辞任に追い込まれました。その後就任したトラス元首相が経済政策で迷走し、通貨安、債券安、株安のいわゆる「トラス・ショック」を招き、英金融市場が大混乱となったことから、わずか50日での辞任表明となりました。しかしトラス元首相の後任に、投資銀行やヘッジファンドなど金融業界での経験が豊富で、経済政策に強いと見られるスナク元財務相が就任したことで政治的な混乱が収束し、英ポンドは2022年末頃から再び上昇基調となりました。その後も金利引き上げが続いた英ポンドは、主要国で唯一緩和策を続けた円に対し堅調な値動きが続き、2024年4月には2008年8月以来約16年ぶりに200円台に乗せました。
2024年3月、日銀金融政策決定会合で「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至った」として、2013年から続けてきた異次元緩和が終了され、約17年ぶりとなる利上げが決定され、その後2024年7月、2025年1月に追加利上げが実施されました。一方BOE (英中銀) は2024年8月、ECB (欧州中銀=ユーロ) に続いて利下げを開始し、2024年11月、2025年2月、5月にも追加緩和を行って2025年6月現在4.25%になっています。
その間、2024年7月にポンド / 円は208円台まで上昇していましたが、政府・日銀が大規模な円買い (ドル売り) の市場介入を4月~5月に続いて行ったことに加え、7月末に日銀が追加利上げを決定、8月にはBOEが利下げしたことから180円付近まで急落しました。しかしその後は急激な下落に対する反発に加え、日銀の追加利上げ姿勢が弱まったことなどから堅調な推移となっています。
英国の名目GDPは世界第6位、欧州ではドイツに次ぐ第2位の経済大国です。さらにロンドンの金融市場はニューヨーク市場と並ぶ世界屈指の金融センターとしての地位を維持しています。今後も英国は政治、経済など様々な分野で世界をリードしていくと考えられます。多くの欧州先進国がユーロを導入する中、英ポンドは先進国の中では金利が高いこともあって投資家にとっての価値を維持するでしょう。
通貨の特性
為替市場における英ポンドの取引高は、米ドル、ユーロ、円に次いで第4位と流動性が高く、取引に対する規制もありません。経済指標、政治関連報道など投資に関わる情報を手に入れやすいことも有利な条件と言えます。主要国の中では、歴史的に金利が高い傾向にあるので、金利面を重視する場合には有力な選択肢となります。
同じ欧州の通貨であることから、英ポンドはユーロと似たような値動きをする傾向がありますが、ユーロに比べると変動幅が大きくなりやすいのが特徴です。これまでも投機的な売買によって短期的に相場が激しく動くことがありました。そのため、英ポンド預金のタイミングを探るうえでは、金利とともに値動きに注意が必要でしょう。タイミングが合えば、金利と英ポンドの値上がりの双方で有利な投資となります。
いち早くコロナとの共存を選択し経済回復を重視している英国ですが、ロシアによるウクライナ侵攻が予想以上に長期化して、その影響が多岐にわたって経済の回復が妨げられれば、期待感とのずれから影響を受ける可能性があるので注意が必要です。また2020年1月に正式にEUから離脱した英国ですが、いくつかの分野で未だにEUとの交渉が続いていることから、今後経済的、政治的に結びつきの強いEUとの関係をめぐって、短期的な変動要因となる可能性があります。変動幅が大きいだけにリスクにも注意が必要です。
変動要因
歴史的に他の先進国に比べ金利が高いことから、BOE (英中銀) のMPC (金融政策委員会) による今後の経済見通しや、金利見通しに英ポンド相場は他の通貨以上に左右されやすくなっています。したがってMPCの結果や声明だけでなく、物価指標をはじめとする主要経済指標の結果にも注意が必要です。
地政学的、経済的、歴史的に結びつきが強いユーロとの連動性が強いとも言われていますが、英国がEUを離脱して、以前ほど強い結びつきではなくなっていることから、今後その関係がやや変化する可能性もあります。
北海油田の開発、生産に携わっていることから原油相場との相関性 (原油高→英ポンド高、原油安→英ポンド安) が指摘されますが、脱炭素への流れに加え、イギリスが手掛ける北海油田が枯渇してきていることもあって相関性が弱まっています。
また、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化による英国経済へのネガティブな影響が引き続き懸念されています。
過去10年間の英ポンドの値動き (チャート)
2006年から2007年前半までの英ポンド相場は、ユーロ相場同様、日本に比べて英国の政策金利が高かったことなどから、ポンド高・円安基調が続き、一時は1ポンド=250円越えの水準まで上昇しました。しかし、2007年秋にサブプライムローン問題が深刻化すると、一転してポンド安が進み、2008年初めまでに1ポンド=190円台まで下落しました。さらに2008年9月にリーマンショックが起きると、英国では金融業が経済の中で重要な地位を占めていたことからポンド売りが強まり、2009年初めには1ポンド=120円割れまで急落しました。その後ユーロ圏ではギリシャ債務危機が発生しましたが、英国には直接的な影響が少なかったこと、ユーロ圏に比べて英国の経済回復は早かったことから、アベノミクスによる円安と相まって英ポンドは2015年半ばには1ポンド=195円超へポンド高が進行しました。
2015年後半からは、英国のEUからの離脱の是非を問う国民投票の実施に伴って、不透明感と離脱による悪影響の懸念が高まったことから、一転してポンド安の動きとなって1ポンド=150円割れまで下落し、2016年6月に行われた国民投票でEUからの離脱が決定すると2016年10月には1ポンド=122円台までポンド安が進みました。しかし離脱の影響が限定的だったことなどから反発し1ポンド=140円台から150円台の取引となりました。
その後、英国の合意なきEU離脱の懸念や、ユーロ圏の景気への不安などを受けて英ポンドは2019年半ばに再び1ポンド=126円台まで下落しました。
一旦1ポンド=147円台まで反発したものの、2020年に入るとコロナ禍による景気後退の懸念でポンド売りが強まって、再び1ポンド=124円台まで反落しました。しかし、英国がいち早くコロナとの共存を選択し、2021年の実質GDP成長率が8.6%と第2次大戦以降最大のプラス成長となったことや、BOEが2021年12月に政策金利を0.15%引き上げ年0.25%にすると発表して利上げを開始したこともあって、ポンドは上昇に転じました。2022年2月にロシアによるウクライナへの侵攻が始まりましたが、直接的な影響は限定的とされたこと、エネルギー価格の急上昇は北海油田を持つ英国は産油国の一角を占めることなどから好材料となり、BOEが利上げを継続していたこともあってポンドは堅調に推移し2022年4月には1ポンド=168円台まで上昇しました。
ジョンソン元首相が2022年7月辞任に追い込まれ、その後就任したトラス元首相の在任時に通貨安、債券安、株安のいわゆる「トラス・ショック」となって一時1ポンド=148円台まで急落。しかしトラス元首相の後任に、スナク元財務相が就任したことで英ポンドは2022年末頃から再び上昇基調となり、2024年4月には2008年8月以来約16年ぶりに1ポンド=200円台に乗せました。
その後も英ポンドは2024年7月に1ポンド=208円台まで上昇しましたが、政府・日銀の市場介入や、7月末の日銀による追加利上げの決定からポンド安に、8月にはBOEが利下げを開始したことから1ポンド=180円付近まで急落しました。その後、ポンド安は一服し、1ポンド=180円から190円台で推移しています。

注目指標はこれ !
- 消費者物価指数 (CPI)
- 物価指標の1つであり、金融政策を判断するうえで注目される指標です。イングランド銀行は年2%のインフレターゲットを設定しています。
- <発表時期>
- 毎月中旬の日本時間18:30ごろ (夏時間は17:30ごろ)
- 製造業PMI
- 民間金融調査会社マークイットが発表する英国の製造業購買担当者景気指数です。米国のISM 製造業景況指数と同じく景気転換の先行指標として注目されています。
- <発表時期>
- 毎月下旬の日本時間18:30ごろ (夏時間は17:30ごろ)
- 製造業生産高
- 製造業部門の生産動向を示す指標で、英国国家統計局が毎月発表しています。数値が高いと景気が好調であるとみなされ、英ポンドも上がりやすくなります。
- <発表時期>
- 毎月上旬の日本時間18:30ごろ (夏時間は17:30ごろ)
- 失業率
- 英国国家統計局が毎月発表。失業率と同時に発表される失業保険申請件数の増減も、英ポンド相場に影響を与えることがあります。
- <発表時期>
- 毎月中旬の日本時間18:30ごろ (夏時間は17:30ごろ)
- 小売売上高
- デパートやスーパー、コンビニエンスストアなど、英国の小売業全体の売上高です。英国経済は個人消費への依存度が高いため、小売売上高が好調であれば景気は上向きやすくなります。
- <発表時期>
- 毎月中旬の日本時間18:30ごろ (夏時間は17:30ごろ)
- RICS住宅価格
- 英国王立不動産鑑定士協会 (RICS) が毎月発表する住宅価格指数です。同協会に所属する鑑定士に住宅価格の先行きについて調査し、「上昇」との回答から「下落」との回答を引いた数値を発表します。
- <発表時期>
- 毎月中旬ごろ
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