通貨の特徴と選び方
通貨の特徴と選び方
カナダドル:最新金利と通貨の特性
外貨預金のお預入れに当たっては、各通貨の特徴や傾向を理解することが大切です。
通貨選択の際の参考にしてください。
カナダドル
- 原油の輸出量は先進国トップクラスの資源国
- 五大湖周辺は自動車産業の拠点
- 米国の金融政策の先行指標としての側面も
- こんなお客さまにおすすめ
- 基軸通貨以外にも預金の国際分散を図りたい方
資源国通貨の取引をしたい方
- 情報の豊富さ
- 通貨の安定性
- 金利


米国との経済的つながりが強い資源国
カナダはロシアに次ぐ広大な国土を持ち、自然豊かで風光明媚、そして森林資源や天然ガス・ウランなどの鉱物資源にも恵まれています。特に原油の埋蔵量・生産量が豊富でその輸出量は先進国トップクラス。電気自動車向け電池材料としても注目されるニッケルの生産でも世界有数です。そのため、原油などの資源価格が上がるとカナダドルも上がり、資源価格が下がるとカナダドルも下がりやすくなる傾向があり、「資源国通貨」のひとつと言われます。
英国連邦のひとつですが、国境を接する米国と経済的なつながりを強く持っています。1994年の北米自由貿易協定 (*NAFTA) 発効で、その関係はさらに緊密になりました。最大の貿易相手国は米国で、2023年には輸出の5分の4程度、輸入の2分の1を占めています。そのため、米国経済の影響を受けやすく、米国経済が好調であればカナダ経済も上向きやすく、米国経済が低迷すればカナダ経済も下振れリスクが高まります。カナダドル相場の行方を見るうえでは、米国経済の動向を注視することが大切です。
さらにその米国との貿易紛争が足元のカナダドル相場を大きく動かす要因となっています。米トランプ大統領の「カナダを米国51番目の州に」といった挑発的発言を受け、国民感情も悪化しています。米国の関税政策の行方に注意しなければなりません。
トランプ政権が圧力を強める中、カナダは貿易相手国の多様化を目指し中国やインドとの関係修復に向かう可能性が出てきています。
中国とは2018年にカナダ当局が華為技術 (ファーウェイ) 副会長を拘束し、2023年5月には互いに相手国の外交官を追放するなど関係が冷え込んでいましたが、2025年6月には電話会談を行うなど関係修復に動いています。
インドとは2023年6月にカナダ国内でシーク教徒の指導者が殺害された事件をめぐって対立が激化しましたが、2025年6月カナダで開催される主要7ヶ国首脳会議 (G7サミット) に印モディ首相を招待するなど関係再構築を図る方針です。
対外関係だけでなく、金融政策も重要です。カナダ中央銀行 (BOC) は2022年3月から利上げ局面に入り、2度の休止をはさみ2023年7月まで累計4.75%ポイントの利上げを行い、政策金利は22年ぶりの高水準となる5.0%となりました。6回連続で金利を据え置いた後、2024年6月、インフレの鈍化が確認されたとして政策金利を4.75%に引き下げました。この局面で利下げに転じたのは主要7カ国 (G7) の中央銀行では最初です。2025 年3月までは7会合連続で政策金利を引き下げました。累積で利下げ幅は 2.25%ポイントになります。4・6月はトランプ関税の不確実性や、インフレの高止まりへの警戒から金利を据え置きました。
産業面では、米国との国境にまたがる五大湖周辺は自動車産業の拠点です。カナダの自動車製造の歴史は100年以上におよびます。世界的に自動車産業が好調なときは、カナダ経済もその恩恵を受けやすい傾向があります。自動車の対米輸出に25%の追加関税が課せられたことで、2025年4月の輸出は急減していました。関税交渉の行方にも注意が必要です。
自動車の大変革期と言われますが、カナダ政府もEVに補助金を出したり、電池工場を誘致したりと積極的で、2035年までにすべての新車について排出ガスを一切出さないZEV (Zero Emission Vehicle) とすることを目標としています。
*なお、NAFTAは2020年7月1日、米国・メキシコ・カナダ協定 (Canada-United States-Mexico Agreement, CUSMA=カナダ名称) として新たな形で発効しました。米国名はUSMCA。
通貨の特性
カナダドルの相場は、資源価格の影響を受けやすいのが大きな特徴です。特に原油価格との連動性が非常に高くなっています。
重要な輸出品目である原油の価格が下落すると、カナダの貿易は落ち込み、景気が冷え込んで消費者物価に下落圧力がかかりやすくなります。これに対処するため中央銀行であるカナダ銀行 (BOC) が緩和的な金融政策 (利下げなど) を取ると、カナダドル相場が弱含むこともあります。
逆にOPECプラスの減産などで原油価格が上昇し物価が上昇すると利上げの思惑が高まりカナダドルにも上昇圧力がかかることがあります。
また、カナダドル相場の行方を探るうえでは、米国の金利動向や経済状況を見ておく必要もあります。
金融政策はBOCが運営。米国との経済の連動性が高いため、金融政策は米国FRB (連邦準備制度理事会、中央銀行に相当) の先手を打つかたちになることが知られています。米国の金融政策の先行指標として見ることもできます。
過去10年間のカナダドルの値動き (チャート)
原油価格の影響を受けやすいカナダドル / 円相場は、国際的な原油価格である米国のWTIに連動する傾向があります。
2008年9月のリーマンショック後、WTIが2009年初めにかけて1バレル140ドルから30ドル台まで大暴落。米国景気の冷え込み、金融不安も相まってカナダドル / 円相場も1カナダドル=120円台から半値の60円台まで急落したことがあります。
2015年以降原油価格の下落、それに伴う国内経済の停滞を受けてカナダ銀行が2015年1月に政策金利を引き下げたことで下落基調にあったカナダドルは、2016年に反転し、しばらく1カナダドル=80円から90円前後での値動きが続きました。そしてコロナパンデミック後2020年3月に1カナダドル=73円台まで下落した後は上昇基調を続けました。
インフレ対応のため2022年3月に利上げを開始、4月に0.5%の大幅利上げを行い、政府債の償還後の再投資を4月25日に停止、いわゆる量的引き締め (QT) も開始しました。これを受けてカナダドルは騰勢を強め2022年9月には、1カナダドル=110円台後半まで上昇しました。原油価格が大きく反落した場面でもカナダドルは上昇しており、金融政策との連動性がより高かったことがわかります。その後BOCが10月に利上げ幅を縮小すると2023年1月にかけて95円程度まで下落。4月にも同程度の安値を付けた後、再び上昇基調に戻り、円安の流れにも乗って2024年7月には118円台の高値をつけました。6月には4年ぶりの利下げに転じ、連続利下げとなったことで急速に値を崩し、円高が進んだ8月には一瞬101円台をつけています。その後も利下げ局面でカナダドル / 円相場は軟調に推移しましたが、利下げの打ち止めにより101円台で底打ちしています。ただ、今後の金融政策について、BOC は米関税政策の行方や物価への影響など様子見する姿勢を強めており、今後の動向には注意が必要です。

注目指標はこれ !
- 消費者物価指数 (CPI)
- インフレを判断するうえで注目される指標であり、金融政策の方向性に影響を与えます。カナダ銀行は年2%のインフレ目標を設定し、金融政策を行っています。
- <発表時期>
- 毎月20日ごろの日本時間22:30 (夏時間は21:30)
- 失業率
- 経済状態を測る重要指標で、金融政策に影響を与えます。
米ドルほど顕著ではありませんが、失業率の変動はカナダドル相場に影響することがあります。
- <発表時期>
- 毎月第1金曜日の日本時間22:30ごろ (夏時間は21:30ごろ)
- GDP (国内総生産)
- カナダのGDP統計は四半期ごとに発表されます。
- <発表時期>
- 2・5・8・11月下旬の日本時間22:30ごろ (夏時間は21:30ごろ)
- 金融政策報告書
- 指標ではありませんが、四半期に一度、金融政策の発表と同時に公表されます。
成長率やインフレの見通しが示されます。
- <発表時期>
- 1・4・7・10月下旬
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