通貨の特徴と選び方

通貨の特徴と選び方

トルコリラ:最新金利と通貨の特性

外貨預金のお預入れに当たっては、各通貨の特徴や傾向を理解することが大切です。
通貨選択の際の参考にしてください。

トルコリラ

  • 投資家から人気の高金利通貨
  • 国民の平均年齢が低く、潜在成長力は高水準
  • 内政リスクや中東方面の動向に注意が必要

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こんなお客さまにおすすめ
高いリスクを許容しつつ、高金利で運用収益を得たい方におすすめ。
中東問題に影響を受けやすいため、ニュースはこまめにチェックしましょう。

情報の豊富さ
5つ星のうち 3
通貨の安定性
5つ星のうち 2
金利
5つ星のうち 5

欧州、中東、アジアの文化の交差点

トルコは地理的に欧州とアジアをつなぐ位置にあり、中東にも隣接する貿易の要衝で、文化の交差点でもあります。15世紀にこの地にあったのはオスマン帝国。最大の都市イスタンブールは、古くはシルクロードの中継地点として栄えました。
現代も結節点ならではの外交を行っています。北大西洋条約機構 (NATO) 加盟国でありながら、非欧米軍事同盟である上海協力機構の対話パートナーであり、中露との軍事協力も行い、2022年ロシアによるウクライナ軍事侵攻では仲介役に乗り出しました。2023年にはイスラエルとハマスの衝突においても仲介に意欲を見せています。
一方で、地政学上のリスクを抱えることにもなっていましたが、サウジアラビアとの関係は改善の兆しが見られ、エジプトにはエルドアン大統領が2024年2月、12年ぶりに訪問を果たし、隣国ギリシャとは2023年12月に関係改善で合意しています。長らく対立していたシリアとも隣接していますが、ロシアの仲介で関係再構築に動いているようです。
産業面では地理的特性を生かし欧州向けの自動車など工業製品の輸出拠点となっています。
トルコはNATO加盟国ですが、政府がテロ組織に指定しているトルコ分離主義勢力のクルド人のクルディスタン労働者党 (PKK) などを擁護しているとして反対してきたフィンランドとスウェーデンのNATO加盟を認めました。一方、自らはEU (欧州連合) 加盟を目指しています。

2023年の実質GDPはトルコ統計機構 (TUIK) によると前年比4.5%の成長となり、政府目標の4.4%をわずかながら上回りました。個人消費が伸びを牽引、設備投資も好調でした。国民の平均年齢が低く、潜在成長力は比較的高い水準にあります。
産業は毛織物など軽工業が中心で、地理的優位性から自動車工場が日本からも進出しています。イスタンブールや奇観で有名なカッパドキアを抱える観光立国でもあります。ただし、慢性的な貿易赤字国で、海外からの資金に依存しています。高いインフレ率にも悩まされてきました。その裏返しで、政策金利の高いことがトルコリラの魅力にもなっています。

様々な文化の交差点であったことで、多様性に寛容です。なかでも日本には友好的な感情を持っていると言われ、関係は良好です。ボスポラス海峡の海底トンネルの建設には、日本企業も参加して注目されました。

内政面では、宗教を政治に持ち込まない世俗主義の政党と、宗教主導の政党との間で争いが起きることが多く、軍が政治介入することもありました。2016年には軍部のクーデターが失敗に終わっています。
政治面では、エルドアン氏が2003年に首相就任、2014年から大統領を務めていて、2023年5月の選挙にも決選投票の末に勝利し続投が決まりました。ロシア・ウクライナの仲介役を買って出たり、黒海経由の穀物輸送協定の締結を主導したりするなど外交面でも力を発揮しています。金融当局に強い圧力をかけていたことで知られます。

通貨の特性

トルコリラの最大の特徴はその金利の高さです。南アフリカランド、ブラジルレアルなどと並ぶ高金利通貨のひとつとして知られ、より大きなインカムゲインを求める投資家から人気の高い通貨です。
金利の高さは、一方でインフレ率が高いということでもあります。2022 年末、消費者物価指数 (CPI) は食料やエネルギー価格の上昇を背景に前年比+80%超という歴史的な高さを記録しました。30%台まで低下したあと再び上昇しておりインフレ圧力の高さには注意が必要です。また、通常であれば中央銀行は高いインフレを抑えるためには金利を上げる政策を導入するのですが、「イスラム金融」の考え方を持つエルドアン大統領が強硬に反対して2021年には逆に利下げを行い、中央銀行の独立性という意味で他国からの信用を失いました。エルドアン大統領による中央銀行総裁の解任でトルコリラが急落したこともありますが、2023年からは経済政策の転換が見られています。通貨当局がトルコリラ防衛策を打ち出したこともありましたが、資本統制につながるとの懸念や取引量の低下などの副作用もありました。通貨防衛、為替相場への介入もあり、外貨準備高は2024年2月まで減少基調でした。その後持ち直していますが、外貨準備高の推移にも注意を払いたいところです。
トルコはエネルギーの純輸入国であり、慢性的な貿易赤字・経常赤字になっていることも通貨安圧力になっています。
他の新興国通貨と同様、短期的に相場が急激に変動することもあります。
貿易赤字国で、国内の資金需要を満たすために海外資金の流入に依存しています。そのため、グローバルな資金の流れの変化には敏感に反応します。世界景気の悪化や金融不安の兆しなどには気を付けたいところです。
また、内政リスクや中東方面の混乱がトルコリラ相場に大きな影響を与えることもありますので、中東問題に関するニュースを注意深くウォッチしましょう。

トルコ政策金利の推移

過去10年間のトルコリラの値動き (チャート)

長期にわたって下落傾向が続いてきたトルコリラ / 円ですが、足元で環境に改善がみられます。2023年の大統領選挙と総選挙後の内閣改造を経て経済チームが一新され、教科書的な政策運営に舵を切りました。トルコ中銀は2023年6月に利上げに転じ、8会合連続で政策金利を引き上げインフレの抑制に努めました。2024年2月に据え置き、3月に再利上げを行ったのち、4月・5月と政策金 (1週間物レポ金利) を50%に据え置いています。声明文では、インフレの基調的な低下が顕著かつ持続的に観察され、インフレ期待が予想レンジに収束するまで引き締めスタンスを維持し、インフレ悪化が予想される場合には利上げを辞さない構えを見せています。政策効果によりやや内需の減速がみられるほか、インフレ期待が低下してきました。年後半には実際のインフレ率も鈍化を予想する声もあります。
また、政府も緊縮財政に転換。フィッチ・レーティングスが3月に長期外貨建て発行体デフォルト格付けを「B」から「B+」に、5月にはS&Pグローバルも「B」から「B+」への引き上げを実施するなど、国際金融市場における評価が高まったことがわかります。これを受けて海外投資家によるトルコ国債への投資も増えています。2024年3月末の地方選挙では与党が惨敗しましたが、地方選を通過したことで2028年の大統領選挙まで大きな選挙の予定がなく、長い目でインフレの抑制を行っていけるという安心感につながったことから、トルコリラ / 円相場は底打ちの兆しを見せ、2024年6月現在1トルコリラ=4円台後半となっています。
ただ、3月末の地方選挙にかけて一段と安値を切り下げていたことでわかるように、長期にわたるリラ安で国民の通貨リラに対する信認が失墜していることや、インフレによる国民生活の疲弊など問題は多く残されており、一段の上昇には時間がかかりそうです。インフレ率も2024年5月には75.5%と高水準で、ここから利上げの効果が出て順調に低下するのかはまだわかりません。最低賃金の大幅な引き上げやエネルギー価格の高止まりなどからインフレの収束が遅れるリスクは考えておくべきです。また、政策運営やパレスチナ問題を巡るエルドアン大統領の発言には引き続き注意が必要でしょう。
過去の動きを振り返ってみますと、2008年9月のリーマンショックを受けて、トルコリラの対円相場は90円台から50円台に急落。その後もじりじりと値を下げ、2016年ごろからは対米関係の悪化が目立つようになり、2018年8月には米国人牧師の拘束問題で米国からトルコに対する制裁が発動されたことから、トルコリラ / 円は15円台まで急落しました。エルドアン大統領が中央銀行総裁と副総裁を指名する権限を自身に与えたことなどから、金融政策への介入強化が不安視されたことも理由のひとつです。その後利上げや介入でいったん戻す場面もありましたが、コロナ禍で観光収入が途絶え経済が悪化したこともあって2021年末にかけては6円割れ手前まで大幅に下落しました。
エルドアン大統領の独特の考えにより、高インフレの中で中央銀行に利下げを迫るという状況で、2022年8月には、前年比+80%を超える厳しいインフレ状態の中で利下げが再開されました。2023年2月には大きな地震に見舞われ、国内経済下支えのためさらなる利下げが行われました。
急激なインフレにより家計が疲弊する中で、2000年代高成長の立役者だったエルドアン大統領の人気にも陰りが見られ、2023年5月の大統領選挙ではエルドアン氏が勝利したものの初めて決選投票に持ち込まれました。議会選挙でも与党が議席を減らし、経済政策の変更を余儀なくされました。金融引き締め容認派のシムシェキ財務相が任命され、その財務相推薦によると言われる新中銀総裁にエルカン氏も就任し、市場の期待感は高まりましたが、シムシェキ財務相の要請でリラ買い介入が停止されたことでリラが急落、6月にはトルコ中銀が政策金利を8.5%から15%に引き上げましたが、引き上げ幅が市場の期待を大幅に下回ったことでトルコリラ / 円は5円台半ばと安値を更新しました。
その後、連続して大幅利上げが行われるとリラ相場はそのたびに反発、やや落ち着きを取り戻すものの、なかなか低下しないインフレや為替介入のための外貨準備の枯渇などの不安が残ったことで、リラ安傾向は止まりませんでした。2024年3月に地方選挙を控えて、利上げに伴って政権の支持率が低下した場合には、エルドアン大統領が再び金融政策への介入を強めるリスクも意識されました。構造的な貿易赤字がリラの下押し圧力となる一方で、大統領選挙前のバラマキ政策や大地震の復興に伴って拡大した財政赤字の抑制は容易ではなく、インフレ抑制のためにさらに追加利上げを行えば庶民の生活への圧迫は強まるという難しい状況の中、2024年3月にトルコリラ / 円は史上最安値4円50銭台を記録。対ドルでは4月に最安値を更新していました。

トルコリラ/円チャート (10年)

金利情報

トルコリラ (TRY)

普通預金 定期預金
お預入期間
1ヶ月 3ヶ月 6ヶ月 1年 2年 3年
3.00 % から 25.00 % 14.00 % 14.00 % 14.00 %
外貨から 14.00 % 14.00 % 14.00 % 14.00 % - -

※個人のお客さま向け  2024年10月23日現在

普通預金 3.00 %
定期預金
お預入期間 円から 外貨から
1ヶ月 25.00 % 14.00 %
3ヶ月 14.00 % 14.00 %
6ヶ月 14.00 % 14.00 %
1年 14.00 % 14.00 %
2年 -
3年 -

※個人のお客さま向け  2024年10月23日現在

注目指標はこれ !

消費者物価指数 (CPI)
ここ数年2ケタ台の高いインフレが続いています。2024年5月の消費者物価指数は前年比+75.5%と7ヶ月連続で加速しました。いったん減速したのち再拡大し2022年11月以来の高水準となりました。その分、金利が高く設定されているわけですが、高水準のインフレが長引くと経済が疲弊する可能性もあります。
<発表時期>
毎月上旬の日本時間16:00ごろ
貿易収支
貿易収支はトルコ経済の動向を見るうえで重要な指標です。エネルギー輸入コストの増加を背景に赤字額が増加傾向にあり、構造的なトルコリラ売り要因となっています。
<発表時期>
毎月下旬の日本時間16:00ごろ
失業率
トルコリラは雇用統計の影響を強く受けやすく、失業率が大幅に上がるとトルコリラ相場も大きく下がることがあります。
<発表時期>
毎月中旬の日本時間17:00ごろ
外貨準備高
外貨準備の減少はトルコリラ売りを防衛する能力の低下とみなされます。
<発表時期>
毎週木曜日
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