通貨の特徴と選び方
通貨の特徴と選び方
中国元:最新金利と通貨の特性
外貨預金のお預入れに当たっては、各通貨の特徴や傾向を理解することが大切です。
通貨選択の際の参考にしてください。
- こんなお客さまにおすすめ
- 中国の経済成長や、中国元の“国際化”に興味関心を持っている方。短期の利益を狙うより、中長期での相場上昇を期待する投資に向いています。
- 情報の豊富さ
- 通貨の安定性
- 金利
経済成長の一方、米国との対立や労働人口の現象など懸念点も
1978年の「改革・開放政策」以来、「社会主義市場経済」と称し経済発展を推し進めてきた中国。2001年のWTO加盟から成長を加速させ、2010年には名目GDP (国内総生産) で日本を抜き、2023年は米国に次ぐ世界2位の17兆6,000億米ドル、日本の4倍超の経済規模に拡大しています。2020年以降、長期化した「ゼロコロナ政策」の影響もあり、経済成長率は一時的に鈍化しましたが、2030年ごろには米国を抜いて世界一の経済大国になるという予測もあります。
世界で3番目の広大な国土に約14億人という世界最大級の人口を抱え、世界の経済動向のカギを握っています。2023年の中国の1人当たりGDP (名目) は約1万2,514米ドルで、あとわずかで「高所得国」 (世界銀行GNI基準) の仲間入りです。中間層がさらに拡大し活発な消費が行われれば、巨大な人口に支えられ国内市場だけでも十分な成長が期待できることに加え、2013年に立ち上がった「一帯一路」構想 (現代版シルクロード経済圏と呼ばれ) に基づいて、周辺国からアフリカ、欧州に至る広い地域で大規模なインフラ開発を進めてきたことも中長期的な経済成長を促しそうです。
また中国では、電気自動車 (EV) に国が補助を出したことで普及が加速しました。AIやドローンなどの最新テクノロジーを活用したサービスも急速に普及しており、今後も新たな技術や革新的なサービスによって世界をリードしていく可能性があります。
一方で中国と米国との対立が激化しています。2018年ごろから、米国の中国に対する関税措置、米国を中心とする先進国によるハイテク中核部品・機械の輸出規制、安全保障を理由とする中国製通信機器完成品の輸入規制などが行われました。新型コロナをめぐっても衝突があり、香港・台湾や人権問題でも米国による批判は強まっています。欧州とも貿易摩擦の火種を抱えています。
米国による対中制裁もあって、G7の中で唯一「一帯一路」に参加してきたイタリアが離脱しました。他にも「一帯一路」は一部の国でいわゆる「債務のわな」への警戒感を呼び、事業がとん挫しています。
ロシアのウクライナ侵攻に関しては停戦に向けて建設的な「立場」を表明していますが、むしろロシア寄りとの批判もあります。一面では旧ソ連邦の構成国だったベラルーシや、ウズベキスタンなど中央アジア諸国で中国の影響力が増す、中国元の決済使用量が増えるという可能性もあります。
また、中国は近年、イランやロシアなどから中国元建てで石油や液化天然ガス (LNG) の購入を増やしています。習近平国家主席は2022年末にサウジアラビアおよびアラブの主要産油国で構成する湾岸協力会議 (GCC) の指導者たちと会談しました。サウジアラビアとイランの外交関係正常化合意を仲介するなど、中東において大国としての存在感を示してもいます。
国内経済の面では1979年に「一人っ子政策」が導入され2014年には終了したものの、現状では高齢化、出生数の減少が急速に進んでおり、労働人口の減少を通して成長見通しに影を落としています。
また、不動産市場の低迷が大きな問題となり、デフレに突入しているとの見方もあります。中国当局は2024年5月に総合的な不動産支援策を発表、ようやく本腰を入れ始めたように見えますが、このテコ入れ策が功を奏するかが注目されます。
通貨の特性
日本では「元」と呼ばれることが多い中国元ですが、中国では「人民幣」と表記されます。通貨バスケットに対する管理変動相場制をとっています。
中国元市場は、中国本土内で取引されるオンショア中国元市場と、香港を含む海外で取引されるオフショア中国元市場の2種類があります。香港は中国の一部ですが、本土とは通貨制度が異なり、中国元は外貨と同様であるため、オフショア中国元市場のひとつとなります。当社が取り扱う中国元はオフショア中国元です。
もともと中国元はオンショア (中国本土内) のみで取引されていましたが、中央銀行である中国人民銀行と、香港の中央銀行にあたる香港金融管理局 (HKMA) が2010年、中国元の国際化を推進するため、中国本土と香港との間で中国元の受け渡しをできるようにするという共同声明を発表しました。これによって香港に世界初のオフショア中国元市場が誕生しました。現在、オフショア中国元市場は、シンガポール、台湾、ロンドンなどにも開設されています。
オンショア中国元とオフショア中国元の値動きは、長期の方向感で見るとほぼ一致しています。しかし、それぞれの市場参加者が異なることや、オンショア中国元については中国当局が相場を一定程度コントロールしていることから、短期で見ると価格に差 (乖離) が生じることが珍しくありません。さほど規制がなく、海外の投資家が自由に売買できるオフショア中国元は、市場の思惑によって値が動きやすいからです。その分、オフショア中国元のほうがオンショアに比べて値動きはやや激しいと言えます。
また中国当局は、価格の乖離幅が大きくなり過ぎると、オフショア中国元市場に直接介入して幅を埋めようとする傾向があります。これによってオフショア中国元の価格が一時的に大きく動くこともあります。
それでも中期的にみるとほかの新興国通貨に比べ値動きは緩やかです。
中国人民銀行は日々、取引の初値となる「中間値 (基準値) 」を発表します。これを基準としてその日の値動きを上下1%以内に収めなければならないという制限をかけています。元が上昇傾向であっても、中国人民銀行が「中間値 (基準値) 」を低く設定した場合は上昇が抑えられることになります。
金融政策は、中国人民銀行が企業の借り入れコストを誘導し金利を特定のレンジ内に維持するために、中期貸出ファシリティ (MLF) や7日後の売却条件付き債券購入 (リバースレポ) など様々な手段を使って細かく行っています。
経済発展と米国との政治対立などによって、国際決済に中国元が使われることが増えています。例えば中国による中東での石油購入や、中国の対ロシア貿易、対ブラジル貿易などです。
過去10年間の中国元の値動き (チャート)
オフショア中国元の対円や対米ドル相場は、長期で見るとオンショア中国元の対円・対米ドル相場とほぼ同じ方向感で動きます。2000年代前半までのオンショア中国元相場は、ほぼ1米ドル=8.28元に固定 (ペッグ) されていました。中国人民銀行は2005年7月に通貨バスケット方式の管理変動相場制を採用すると同時に1米ドル=8.11元に切り上げました。これは市場に衝撃をもたらし「元ショック」とよばれました。その後、少しずつ元高・米ドル安に誘導、2007年には変動幅を拡大しました。しかし、2008年9月にリーマンショックが発生すると、中国は自国の産業を保護する目的から、オンショア中国元相場を1米ドル=6.285元前後で固定しました。2010年に、中国の経済の実力に対して元が安すぎるという米国の批判もあり固定をはずし「中国元レートの弾力化」を発表、2012年に再び変動幅を拡大しました。対米ドルでは緩やかな上昇傾向をたどりましたが、対円では米ドル / 円相場の影響を受けて2011年まで下落しました。その後は円安主導で元が上昇しました。
2015年8月11日には中国人民銀行がオンショア中国元の基準値の算出方法を変更すると発表し、事実上の切り下げを実施しました。これは人件費の上昇などによって低下した輸出競争力を回復することが狙いの「近隣窮乏策」と受け止められ、世界的な株安を招くなど金融市場が混乱しました。その後はさらなる元切り下げ観測などから、中国から資金流出が生じました。中国政府は通貨を支えるために介入し外貨準備を大きく取り崩す事態となりました。
米国で対中貿易赤字が大幅に拡大し、トランプ大統領 (当時) が2018年に中国への関税強化を打ち出しました。中国も報復関税をかけ、貿易戦争が激化。中国元は2019年に1元=14円台まで下落しました。
2020年以降、ゼロコロナ政策を背景に中国の経済見通しが悪化、中国の金融緩和姿勢から対米ドルでは元は大きく下落する場面がありましたが、対円では円安が勝っています。
2021年以降、中国元は米ドルとおおむね連動した値動きとなり対円では上昇しました。長期にわたるゼロコロナ政策で経済は圧迫されましたが、対ドルでの円安が影響し、2022年夏には1元=20円台をつけています。
2023年からゼロコロナ政策の解除で経済再開期待が高まりましたが、実際の回復は予想より鈍く、米金利の上昇もあり、年前半は1ドル=7元割れでの推移となりました。その後は一時持ち直しましたが、1ドル=7.3元近辺では国有銀行などが中国元買いの動きを強めたことがあります。
ただ、2024年6月には国有銀行の買いが見られなくなっているとの市場観測があり、また中国人民銀行が公表する基準値を元安方向にするなど当局が元安を容認しているとの見方も出て、中国元は対ドルでは安値圏での推移となっています。
一方対円では、ドル円相場に連動した動きで約30年ぶりの高値を再び更新。2024年6月現在1元=21円台後半となっています。
金利情報
中国元 (CNY)
普通預金 | 定期預金 | ||||||
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お預入期間 | |||||||
1ヶ月 | 3ヶ月 | 6ヶ月 | 1年 | 2年 | 3年 | ||
0.10 % | 円から | - | - | - | - | - | - |
外貨から | 0.80 % | 0.90 % | 1.00 % | 1.10 % | - | - |
※個人のお客さま向け 2024年10月15日現在
普通預金 | 0.10 % |
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定期預金 | ||
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お預入期間 | 円から | 外貨から |
1ヶ月 | - | 0.80 % |
3ヶ月 | - | 0.90 % |
6ヶ月 | - | 1.00 % |
1年 | - | 1.10 % |
2年 | - | - |
3年 | - | - |
※個人のお客さま向け 2024年10月15日現在
注目指標はこれ !
- 消費者物価指数 (CPI) ・卸売物価指数 (PPI)
- インフレが過度に高まった場合、それを抑える有効な手段のひとつは、中国元を切り上げて輸入価格を抑えることです。そのためCPI・PPIの動きは、中国元相場の行方を見るうえで重要な指標のひとつと言えます。
- <発表時期>
- 毎月10日前後
- 外貨準備
- 中国人民銀行がオフショア中国元市場でドル売り介入を積極的に行うと、外貨準備が大きく減ります。これを避けるため中国元相場を調整することもあるので、外貨準備の推移には注目しておきたいところです。
- <発表時期>
- 毎月上旬の日本時間10:30
- 米国の貿易収支
- 米国の対中貿易赤字が拡大すると、中国元高を求める圧力が高まります。米トランプ政権下では非常に注目されました。
- <発表時期>
- 毎月上旬の日本時間22:30 (夏時間は21:30)
- 中国製造業PMI (購買担当者景気指数)
- 中国の製造業の購買担当者に生産意欲などを調査して指数化した景気指標。中国国家統計局と中国物流購買連合会から発表されています。管理変動相場制のため直接の影響はありませんが、経済の実態を知る手がかりとなります。
- <発表時期>
- 毎月1日ごろ (日本時間10:30)
- 中国GDP成長率
- 中国国家統計局が四半期ごとに発表しています。政府の目標ともなっており、達成にはメンツがかかっていると言われます。管理変動相場制のため直接の影響はありませんが、重要指標です。
- <発表時期>
- 1・4・7・10月中旬 (原則として日本時間11:00ごろ、1月は変更が多い)
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