2017年10月6日
日本の株式市場の主役は日本の投資家ではない――。こう聞けば、驚く人も憤る人もいるかもしれない。しかし歴史や各種データをみても、日本の株式市場では、国内投資家より外国人投資家の方が、存在感が大きいのだ。
実際、日本株売買の6~7割を外国人投資家が占めている。外国人の売買動向は日経平均株価に大きな影響を与えている。日経平均が今後どうなるかを考えるには、外国人投資家の売買動向が重要なポイントとなる。
日経平均株価の動向に大きく影響する外国人投資家とは、そもそもどういう人 (存在) なのだろうか。これは、海外から日本に流入する投資マネーの総称だ。詳しくみると、中には年金基金、投資信託、政府系ファンドのように中長期運用を基本とする投資マネーもあれば、富裕層の資産運用で比較的短期間での売買益を狙うヘッジファンドのような投資マネーもある。
その外国人投資家の売買動向を知るにはどうすればいいのだろうか。まず日本取引所グループ(JPX)のウェブサイトにあるマーケット情報 (http://www.jpx.co.jp/markets/index.html) の中から、統計情報 (株式関連) の「投資部門別売買状況」および先物・オプション関連の「投資部門別取引状況」を見るといいだろう。これは毎週第4営業日 (通常は木曜日) 午後3時頃に前週分の株数と金額が発表されている。
買い越しが続き、さらに買い越し金額が増えていれば外国人投資家が日本株の先行きに対して「強気」と見ていると判断できる。逆に売り越しが続いていれば「弱気」の相場シナリオを描いている可能性がある。買い越しから売り越しに、あるいは売り越しから買い越しに転じれば、相場の転換点の可能性と考えることができる。
少なくともアベノミクス相場と言われるここ5年ほどの外国人投資家の動向を分析すると、基本的に外国人投資家が買い越したときに日経平均株価は上昇し、外国人投資家が売り越しているときに日経平均株価は下落している。いわば、外国人投資家の動向が日経平均株価の騰落と連動しているという状況だ。
例えば2012年12月に投開票された衆院解散総選挙で生まれた第二次安倍政権は「アベノミクス」を掲げて経済・金融政策に注力した。この時期の日経平均株価を振り返ってみると、2012年12月末は10,395円だったが、1年後の2013年12月末には16,291円まで上昇している。この期間、海外投資家はほぼ一貫して買い越しており、2013年の買越額は約15兆円にのぼっている。
次に2016年を見てみよう。2015年12月末の株価は19,033円、2016年12月末の株価は19,114円とほぼ横ばいにとどまっている。2016年を通じた海外投資家の動向を確認してみると、年間合計では約3.6兆円の売り越しだった。このように、現状の日経平均株価は、外国人投資家の大幅な買い越しがないと本格上昇は難しいと考えられる。
ただ、「外国人投資家が日本株を買い越しているから目先、日本株は上がる」と考えるのは早計だ。もちろん、そうなる場合もあるだろうが、その金額の伸び方 (減り方) にも注目したい。いくら買い越しているとはいえ、段々と買越額が減っていたら、それは外国人投資家の「日本株を買う意欲」が減退しつつあると言える。
例えば、2ヶ月前に5,000億円買い越し、先月は3,000億円買い越し、今月は700億円買い越しだったとしよう。買い越しか売り越しかという視点で見ると、今月で3ヶ月連続の買い越しであるが、買越額は段々とシュリンクしており、海外投資家は既に「お腹いっぱい」になっている可能性が高い。前述のように、ヘッジファンドなどは比較的、短期目線で売買を行うため、日本株を大幅に買い越し後は、むしろ売却 (日本株の売り越し) を警戒したい。
また「投資部門別売買状況」および先物・オプション関連の「投資部門別取引状況」は、1週間毎の集計データであるので、実際の売買より約1週間タイムラグがあることには注意が必要だ。
日経平均株価が今後どうなるのか。その方向性を考える上で、外国人投資家の存在が大きいことは分かっていただけただろう。公表されているデータからでも分かることは決して少なくない。
日本の株式市場や各企業について研究し、多額のマネーを投じている外国人投資家。実際、売買の6~7割を占めるほどの影響がある以上、その動向、売買金額の規模の変化などをチェックし参考にすることは、株式投資をする個人投資家にとって、日本経済や投資対象企業そのものを研究するのと同じくらい重要といえるだろう。
(提供:株式会社ZUU)
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