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2020年3月3日

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「日経平均2万4,000円」は高値圏 ? 株価水準の判断方法とは

「日経平均2万4,000円」は高値圏 ? 株価水準の判断方法とは
(写真=Rustam Shigapov / Shutterstock.com)

日経平均株価は2019年12月に、2018年10月以来となる2万4,000円台をつけた。「節目に到達したことで調整する可能性がある」「日経平均は2万4,000円を超えてさらに上昇する」など、市場には様々な見方が広まっている。ここでは「信用倍率」を使った株価水準の判断方法について紹介する。

株価水準判断の最も基本は株価収益率 (PER)

株価水準を判断する指標は多岐にわたるが、最も代表的なもののひとつが株価収益率 (PER) だ。 株価は長期的には企業業績 (利益) に連動するというのがファンダメンタルズ分析の考え方だ。市場での企業価値である時価総額が、企業が1年間で稼ぐ当期利益の何倍になっているかを示すのがPERである。

(PER) = (時価総額) ÷ (当期利益)

時価総額、最終利益をそれぞれ発行済み株式数で割り、PERをシンプルにすると以下のようになる。通常、一株当たりの当期利益 (EPS) は今期予想の当期利益を使うのが一般的だ。

(PER) = (株価) ÷ (EPS)

日経平均株価は225銘柄で構成されているため、225全銘柄の予想EPSの和が日経平均のEPSである。

(日経平均株価のPER) = (日経平均株価) ÷ (日経平均のEPS)

2018年末の日経平均株価が2万3,656円、EPSは1,647円なので、日経平均のPERは約14.4倍である。2019年中には12倍を割っていたこともあるので、決して割安ではないが、過去3年の平均である14倍台であるので割高ともいえない。前回の2万4,000円水準だった2018年10月末では日経平均のPERは約12.6倍だった。PERだけを見ると、今回は割高感が出はじめていると捉えることもできる。

EPSやPERは日本経済新聞社が運営する「投資の森」などのサイトで簡単にチェックできる。同サイトによるとNYダウの2019年末のPERは21.22倍であり、日経平均はNYダウよりPERでは割安だと捉えることもできる。

信用倍率での株価水準判断ではまだ高値追いの可能性も

PERがファンダメンタルズの株価水準判断の基本であるならば、需給関係に注目した判断方法のひとつが「信用倍率」だ。信用倍率は、個別銘柄の需給判断だけでなく市場全体の需給の判断にも使える。

信用倍率は、信用取引の市場における取り組み状況を表す指標で「買い残」と「売り残」を使って以下のように算出する。

(信用倍率) = (買い残) ÷ (売り残)

東証は毎週第2営業日 (通常火曜日) の17時頃に前週末の「個別銘柄」と「東証2市場全体」の信用買い残、信用売り残を発表する。

信用倍率が「1よりも大きい」場合、買い残が売り残よりも多いことを示し、株価が上昇した場合の潜在的な売り圧力が多いという見方をする。特に買い残が急増している場合には、新規信用買いが急増していることを示し、過熱感が出ていることもできる。

信用倍率が「1よりも小さい」場合、売り残が買い残よりも多いことを示し、株価が上昇した場合に潜在的な買い戻し需要が多いという見方をする。特に売り残が急増した場合には、踏み上げ相場による急上昇が起こることもありえる。

2019年12月に日経平均は1年2ヶ月ぶりに2万4,000円をつけた。12月20日時点では、買い残が2兆2,736億円、売り残が1兆123億円、信用倍率は2.25倍だった。前回の2万4,000円水準だった2018年10月26日時点では、買い残が3兆1,460億円、売り残が7,203億円、信用倍率は4.37倍だった。

信用倍率は今回のほうがはるかに低い。売り残のレベルが約3,000億円多く、買い残は約1兆円少ない。信用の取り組みを見る限り、今回の上昇局面では個人投資家は相場の上昇にあまり乗れておらず、むしろ割高だと感じ、空売りを仕掛けて評価損を抱えている投資家が多いと読み解く見方もできる。もし株式市場がさらに上昇するのであれば潜在的な買い戻し需要が多いということになる。

株価は長期ではファンダメンタルズであるとの考え方が主流だが、短期的には需給関係の影響を受けるケースも多い。今回の日経平均の2万4,000円水準は、信用倍率から見ると、過熱感は感じられないという分析もできるわけだ。

自分なりの投資基準を

PERでは割安感はないが、信用の取り組みは株式市場には過熱感は感じられない。あくまでもこの二つは判断材料の代表的なもののひとつではあるが、日本株式市場の強弱感がわかれる大きな要因となっている。

日経平均の予想PERについては注意が必要だ。仮に2021年3月期の企業業績見通しが大幅増益になる場合には、EPSが上昇することでPERは割高とは判断できなくなる。ファンダメンタルズ派の注目はすでに2021年3月期に移っているというわけだ。

株価水準の判断には、自分なりの投資基準をつけていくことが大切である。一つの判断材料にしばられず、常に状況をアップデートして株式市場を分析していただきたい。

(提供:株式会社ZUU)

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