2024年11月21日
物価や賃金の上昇にともない、2024年4月から公的年金の支給額は前年比2.7%、引き上げられることになりました。引き上げは2年連続で、伸び率はバブル期以来、最高を記録しました。にもかかわらず、年金の受給額は実質的に目減りしています。これはなぜなのでしょうか ? 老後資金についての漠然とした不安を払拭し、効率的に準備する方法についてもあわせて解説します。
まずは、知っているようで知らない年金の基礎知識を再確認しておきましょう。
そもそも公的年金とはどのような制度なのでしょうか ?
公的年金の種類 | 月額 |
---|---|
国民年金 (老齢基礎年金、満額) | 6万8,000円 |
厚生年金 (夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) | 23万483円 |
公的年金の受給は保険料を支払った期間などによって異なります。また、社会情勢などに応じて受給額が増減することもあります。詳しくは日本年金機構のホームページなどで確認しましょう。
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2024/202404/0401.html
多くの人が老後の生活の頼りにしている公的年金ですが、その支給額は物価と賃金の変動に応じて毎年度、改定されます。
日本では1990年代後半から約25年間にわたって長くデフレ (物価が持続的に下落していく経済現象) が続いていましたが、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻などのため、2021年ごろから物価上昇が続くインフレ傾向に転じています。物価が上がると、同じ金額で購入できる物品やサービスの量や数が減るので、収入が増えないと生活は苦しくなってしまいます。物価が上がると理論的には企業の業績が上がり、結果として賃金が上昇しますが、2023年の日本の物価上昇率は3.2%、名目賃金上昇率は3.1%となりました。
これを受けて国では、2024年4月から公的年金の支給額を2.7%引き上げました。引き上げは2年連続で、引き上げ率はバブル期以降では最大です。
しかし、「マクロ経済スライド」と呼ばれる仕組みにより、引き上げ率は賃金の伸びより0.4% (=名目賃金上昇率3.1%-引き上げ率2.7%) 低く抑えられ、実質的に年金の支給額は目減りすることになります。
(図) 賃金・物価の上昇率が大きい場合
マクロ経済スライドによる調整が行われ、年金額の上昇については、調整率の分だけ抑制されます。
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/kaitei/20150401-02.html
なお、賃金・物価の上昇率が小さく、マクロ経済スライドによる調整を適用すると年金額がマイナスになってしまう場合は、年金額の改定は行われません。
また、賃金・物価が下落した場合、マクロ経済スライドによる調整は行われません。結果として、年金額は賃金・物価の下落分のみ引き下げられます。
マクロ経済スライドの採用で、年金支給額がインフレによる物価高に追いつけないのであれば、将来に備えて、不足分を補う老後資金を自分で準備しなければなりません。
では、具体的にどのくらいの老後資金を準備すればよいのでしょうか ?
数年前に「老後2,000万円問題」が話題を集めましたが、老後に必要な資金は人によって異なり、万人に共通する「正解」はありません。まず、自分にとって必要な金額を確認して、受給予定の年金との差額を出してみることが大切です。
国民年金を満額受給できる見込みがあり、「毎月20万円あれば余裕をもって暮らせる」という場合を例に試算してみましょう。
国民年金の受給額は月額6万8,000円 (令和6年現在) です。したがって、20万円の生活費を確保するには年金以外に、少なくとも月に13万2,000円、年額にすると158万4,000円が必要になります。仮に老後が20年あるとすると、単純計算で3,168万円 (158万4,000円×20年) が必要ということになります。
このほか家族の介護や自分自身の病気やケガで思いがけない支出が発生することも十分考えられます。余裕のある老後を過ごすためには、まずは自分に必要な生活費を「見える化」して、準備を始める必要があります。
では、具体的にどうすれば老後に必要な資金を確保することができるのでしょうか。一般的には以下のような方法が考えられます。
・全額を投資しないこと
退職金の全額を投資すると、万が一の場合、資産が大きく毀損してしまうリスクがあります。投資は退職金のうちの余裕資金で行うようにします。
・分散投資する
投資対象をできるだけ分散することで、リスクも分散することができます。投資先を1つに絞らず、投資する国やタイミング、商品などをバランスよく分散させましょう。
・ハイリスク商品は避ける
退職金による投資は、ハイリターンを目的にすべきではありません。「殖やす」のではなく、ハイリスクな金融商品は避けて、「減らさない」ことを意識した投資を行いましょう。
老後の資産形成は大切ですが、検討の対象となる商品は多く、何を基準に選べばいいのかといった情報収集は簡単ではありません。まわりの方に相談するのもよいのですが、経験豊富な金融機関に相談することを考えてみてはいかがでしょうか。
金融機関では老後のための資産形成をサポートするための、様々なサービスを提供しています。まず金融機関のホームページなどでサービス内容を確認し、気になるものがあれば気軽に問い合わせをしてみましょう。
店頭の窓口で、対面による説明が受けられるところがある一方で、一連の手続きをすべてオンラインで終えられる金融機関もあります。
ただし、オンラインで完結するネット銀行の中には対面サポートがないところもあるので、注意が必要です。金融機関は長い人生を安心して送るためのパートナーです。必要なサポートがいつでも安心して受けられる金融機関であるかどうかを確かめた上で、選ぶようにしましょう。
ネット銀行でありながら、対面サポートが受けられる金融機関としては大和ネクスト銀行があります。
大和ネクスト銀行では円建ての積立よりも好金利、かつリスク分散やインフレ対策にも有効な「外貨積立」を取り扱っています。貯めた外貨は海外旅行で使うこともできます。
また、NISAやiDeCoなど老後の資産形成に適した金融商品も利用することが可能です。
対面や電話で無料相談ができ、各種セミナーも無料で受けることができます。まずは、気軽に相談してみてはいかがでしょうか。
年金は、老後の生活を支える重要なものですが、インフレによる物価の上昇に十分に対応することはできません。老後の生活を安心して送るためには、老後にいくら必要なのかを認識し、対応をしていくことが必要です。何から始めてよいかわからないという人は、まずは金融機関に相談し、プロの客観的なアドバイスを受けてみることをおすすめします。