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2026年1月8日

2026年、NISAはどう変わる ? 「新政権」で気になる税制大綱の行方

2026年、NISAはどう変わる ? 「新政権」で気になる税制大綱の行方
(写真=78art / stock.adobe.com)

2024年に抜本的拡充・恒久化が実現した新NISA (少額投資非課税制度) は、「貯蓄から投資へ」の流れを決定づけ、多くの個人の資産形成を後押ししている。この新NISAの導入は、政府が掲げる「資産運用立国」の実現に向けた最重要政策の一つとして位置づけられている。

毎年年末に発表される税制改正大綱は、翌年度の税制の骨格を定める文書だ。今回は「新政権」下で議論が進むことになり、その動向は日本の金融・経済政策の方向性を占う上で極めて注目される。新政権下でも「資産運用立国」の旗は揺るぎない。

この記事では、2026年度税制改正に向けた金融庁のNISA制度に関する「マイナーアップデート」の要望に焦点を当て、その具体的な内容と、それが個人の資産運用にどのようなメリットをもたらすかを解説する。

金融庁が要望するNISA制度の「マイナーアップデート」 (3つの柱)

金融庁は、新NISAの普及をさらに加速させ、あらゆる世代の長期・安定的な資産形成を支援するため、主に3つの柱からなる制度の充実を要望している。これらは、利用者目線で現行制度の「使い勝手」を大幅に向上させることを目指した重要な改正案だ。

要望の柱 概要 利用者へのメリット
つみたて投資枠の年齢制限の見直し (子ども向け支援) つみたて投資枠の対象年齢の引き下げ (未成年者への拡大) 。 ゼロ歳から非課税で長期投資を始めることが可能となり、複利効果を最大限に享受できる環境が整う。
NISA対象商品の拡充 つみたて投資枠における債券型ファンドなどの追加。 リスク許容度の低い層や退職世代も安心してNISAを活用した資産形成を始められる。
非課税保有限度額の当年中復活 非課税保有限度額の枠の復活タイミングを翌年から当年中へ変更。 ライフイベントなどによる売却・再投資が機動的に行え、運用の柔軟性が格段に向上する。

1. つみたて投資枠の年齢制限の見直し (子ども向け支援)

新NISAでは、未成年者を対象とした「ジュニアNISA」が2023年末で廃止され、未成年層の非課税投資に空白が生じた。この空白を埋めるべく要望されているのが、「こども向け支援」の一環としてのつみたて投資枠における対象年齢等の見直しである。

これは、具体的にはつみたて投資枠の対象年齢を現行の18歳から引き下げることを目的としている。これが実現すれば、より早期、例えば0歳からでも、家族の資産形成の一環として、非課税での長期投資を始めることが可能となる。長期間の複利効果を最大限に享受できる環境が整うことで、教育資金など、将来を見据えた計画的な資産形成に大きく貢献すると期待される。

2. NISA対象商品の拡充

現行の新NISAでは、つみたて投資枠の対象商品は、長期の積立・分散投資に適した要件を満たした投資信託に限定されている。

今回の要望は、「様々な資産運用ニーズに応えるための、対象商品の拡充」を掲げている。有識者会議の議論などを参照すると、よりリスクを抑えた債券型ファンドなどのつみたて投資枠への追加が想定される。これが実現すれば、リスク許容度が低い方や、退職を控えた世代など、リスクを避けたい層も安心してNISAを活用した資産形成を始められるようになり、投資家層のさらなる拡大に繋がる。商品の多様化は、一人ひとりのリスク許容度とライフプランに合わせた、よりきめ細やかな運用を可能にする。

3. 非課税保有限度額の当年中復活

現行のNISA制度では、生涯非課税限度額 (1,800万円) 内で商品を売却した場合、その売却した分の非課税枠が翌年の1月1日に復活する仕組みとなっている。今回の要望は、「非課税枠を売却した場合、その枠を売却した当年中に復活させる」とするものだ。

これは、投資家にとって極めて大きな利便性の向上を意味する。例えば、結婚や住宅購入、子どもの進学といったライフイベントで資金が必要となり一部売却した場合でも、非課税保有限度額の枠が当年中に復活する。これにより、市場環境の変化を見ながら、非課税の恩恵を維持したまま、機動的に投資商品の入れ替え (スイッチング) や再投資ができるようになる。運用の柔軟性が格段に高まる、重要な改正と言える。

新政権での税制議論の展望とNISA改革の意義

1. 「資産運用立国」推進の不変性

政権運営は常に政治情勢の影響を受けるが、「資産運用立国」の推進、ひいてはNISAの拡充は、もはや単一政党の政策ではなく、日本経済の持続的な成長を実現するための国家戦略として位置づけられている。少子高齢化が進む中で、公的年金制度を補完し、国民一人ひとりの自助努力による資産形成を促すことは、喫緊の課題だ。

この基盤となる政策の方向性は、新政権下でも維持される可能性が高そうだ。「マイナーアップデート」の要望は、制度の裾野を広げ、より多くの国民が安心して長期投資に取り組める環境整備を目的としており、この国家戦略と完全に合致している。

2. 「マイナーアップデート」の実現がもたらす長期的な効果

一見すると細かな制度変更に見える今回の要望だが、その実現は極めて長期的な効果をもたらす。特に「当年中復活」は、投資家が非課税枠を最大限に活用しやすくなるだけでなく、「ライフイベントによって売却しても、また非課税枠に戻せる」という安心感を与える。この安心感が、投資を躊躇していた層の参入を促し、制度全体への信頼と継続的な利用を支える土台となるのだ。

マイナーアップデートがもたらす運用戦略上のメリット

今回の要望が実現した場合、個人の資産運用戦略にどのような実質的なメリットが生じるのかを具体的に見ていこう。

1. ライフプランに合わせた資金の再配置

非課税枠の「当年中復活」は、出口戦略の選択肢を大きく広げる。

例えば、子どもの大学入学時に教育資金として一部を売却したとする。現行制度では、枠の復活は翌年まで待つ必要があるが、「当年中復活」が実現すれば、その売却した資金をすぐに枠として再利用できる。市場の調整局面で再度低価格で購入したり、より成長性の見込める別の商品に乗り換えたりといった、機動的で効率的な資金管理が可能になる。これにより、NISA枠を「人生の様々なイベントで活用できる柔軟な資産プール」として位置づけることができる。

2. 低リスク商品を活用した「全世代型」資産形成

つみたて投資枠の対象商品に低リスクの債券型ファンドなどが加われば、より多くの方が自身のリスク許容度に合った運用が可能になる。

例えば、退職を控えた世代は、元本変動リスクを抑えつつ非課税の恩恵を受けられる商品で、退職金の受け皿としてNISAを活用しやすくなる。また、投資経験の浅い若年層も、まずは比較的低リスクの商品からスタートし、徐々にリスク資産の割合を増やしていくといった、段階的な資産形成戦略を描きやすくなる。NISAが真の意味で「全世代型」の資産形成ツールへと進化するとも言えそうだ。

3. 制度の一貫性と継続性

制度の細かな改善は、利用者にとっての利便性向上だけでなく、制度全体への信頼と安心感を高める。政府が継続的に制度を磨き上げる姿勢を示すことで、「NISAは長期的に安心して利用できる制度である」という認識が定着し、より多くの国民が長期的な視点を持って資産形成に取り組めるようになるだろう。この制度の一貫性と継続性の担保こそが、「資産運用立国」の実現に向けた最も重要な要素となる。

NISA制度を最大限に活用するために

制度がさらに進化するからこそ、利用者側もその進化を見据えた戦略的な行動が求められる。

1. 長期・積立・分散の基本を再徹底

NISAの進化にかかわらず、資産形成の成功の鍵は、「長期・積立・分散」という投資の王道を愚直に守ることだ。制度がより柔軟になったとしても、短期的な売買を繰り返すのではなく、非課税メリットを最大限に享受するためには、長期運用によって複利の効果を味方につけることが重要になる。

2. 制度改正を見据えた非課税枠の戦略的利用

将来「当年中復活」が実現することを前提に、現在の非課税枠の利用計画を見直してみよう。教育資金や住宅購入資金など、近い将来に使う予定のある資金についても、「売却しても、すぐに枠が復活する可能性がある」という前提で、より大胆にNISA枠を活用し、投資効率を高める戦略を検討できる。

特に「こども支援」の拡充が見込まれる場合は、現行のNISA枠とは別に、未成年者向けの非課税枠の利用を想定した家族全体の資産配分計画を早めに立てることが賢明だ。

今後の税制大綱の動向に注目を

新政権下で議論が進む2026年税制大綱は、新NISA制度をさらに利用者にとって使いやすく、強力な資産形成ツールへと進化させる可能性を秘めている。

金融庁が要望する3つの柱は、利便性と柔軟性を飛躍的に高めるものだ。私たちはこの制度の議論を注視し、自身のライフプランと照らし合わせながら、非課税メリットを最大限に活かせるよう、運用の戦略を練り続ける必要がある。今後の税制大綱の動向に引き続き注目したい。

(提供:株式会社ZUU)

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