2025年11月11日
2026年4月から始まる「子ども・子育て支援金」が、SNSなどで「独身税」と呼ばれて話題になったことは記憶に新しい。金額は年数千円~数万円と小さいものの、これに限らず社会保障負担の増加は今後も続く見込みだ。新NISAの活用や円預金・外貨預金の組み合わせにより、可処分所得減少に備えた資産戦略を構築することがカギになる。本記事では制度の実態と、負担増時代に有効なポートフォリオ例について解説する。
2026年4月から施行される新制度「子ども・子育て支援金」が、SNSや一部報道で「独身税」と呼ばれ話題になっている。だが、制度の実態は「独身者だけに課される税」ではなく、公的医療保険料に上乗せして徴収される全世代負担の仕組みだ。
支援金は、少子化対策の財源確保を目的としており、未婚・子どもがいない層だけでなく既婚・子どもがいる家庭も含めて広く負担する。呼称としての「独身税」は、未婚層が将来の子育て支援の直接恩恵を受けにくい構造から生まれた誤解に過ぎない。
「独身税」という誤解の構造
制度が始まる前から「独身税」という言葉が広がった理由は、負担と給付の非対称性にある。特に、子育てをしていない層は、直接的な給付を受ける機会が少なく、「負担ばかり増える」という印象を持ちやすい。
さらに、海外では実際に独身者に高い税率を課す事例もあったため、名称として定着しやすかった面もある。ただし、日本の制度は所得税や住民税の上乗せではなく、あくまで社会保険方式である点が異なる。
支援金の仕組みと負担額の目安
この制度は医療保険料に上乗せされるため、被用者保険 (会社員) も国民健康保険 (自営業・無職等) も対象となる。徴収額は所得や保険料率によって変わるが、こども家庭庁による2024年時点での試算では以下の目安が示されている。少なくとも現時点で、年々支援金額が上がる見通しであることがわかっている。
| 加入者一人当たり支援金額の目安 (月額) | |||
|---|---|---|---|
| 2026年度見込み額 | 2027年度見込み額 | 2028年度見込み額 | |
| 全制度平均 | 250円 | 350円 | 450円 |
| 被用者保険 | 300円 | 400円 | 500円 |
| 協会けんぽ | 250円 | 350円 | 450円 |
| 健保組合 | 300円 | 400円 | 500円 |
| 共済組合 | 350円 | 450円 | 600円 |
| 国民健康保険 (市町村国保) | 250円 | 300円 | 400円 |
| 後期高齢者医療制度 | 200円 | 250円 | 350円 |
出典:こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室 (2025年3月)
一見小さな額に見えるが、長期的には家計のキャッシュフローに確実に影響を与える。特に高所得層ほど負担額は増えるため、資産配分の見直しが求められる。
長期視点でみる少子化対策の副次的効果
子育て世帯への経済的支援は、単なる消費補助ではない。教育投資や保育サービス拡充は人的資本の質の向上につながり、将来的な納税者や労働力の確保に寄与する。結果として、社会全体の経済基盤が安定し、インフラや社会保障制度の持続可能性も高まる。
制度への懸念:公平性と実効性のジレンマ
富裕層や未婚層からは「受益と負担のバランスが取れていない」との声もある。徴収が所得比例であるため、経済的に余裕のある層ほど負担増を実感しやすい。加えて、集めた財源の使途や効果測定が不透明であれば、制度への納得感は得にくい。
社会保障負担は今後も上昇傾向にあり、可処分所得が減少するなかで資産の守り方が問われる。2024年からスタートした新NISAは、成長投資枠・つみたて投資枠の非課税メリットを享受できる一方で、市況次第で資産価値が大きく変動するリスクも抱える。そこで、株式・投資信託の変動リスクを補う安定資産として、外貨預金・円預金を組み合わせる戦略が有効になる。
為替リスクと「円安・円高」への備え
外貨預金は円資産だけに依存しない分散効果を持ち、円安時には評価額が上昇しインフレ耐性も高まる。一方、円高局面では為替差損が生じるため、新NISA枠でのリスク資産運用と組み合わせてバランスを取ることが重要だ。
円預金の安全性と流動性の重要性
円預金は為替リスクを避けつつ、流動性も確保できる。「独身税」のような定期的な負担増や突発的な支出に即応でき、安定的なキャッシュフロー維持に役立つ。
たとえば、新NISAの非課税枠と外貨・円預金を組み合わせることで、負担増にも耐えられる堅実なポートフォリオが構築できる。
| 資産クラス | 割合の目安 | 目的 |
|---|---|---|
| 新NISA株式・投資信託 (成長投資枠) | 40% | 長期成長・インフレヘッジ |
| 新NISA投資信託 (つみたて投資枠) | 20% | 積立による分散効果 |
| 外貨預金 | 20% | 為替分散・円安時の資産防衛 |
| 円預金 | 20% | 安全資産・流動性確保 |
資産配分は年齢・収入・リスク許容度で調整が必要だが、「成長+安定+流動性」を組み合わせるのが基本。社会保障負担の増加局面でも、生活の質を落とさず長期資産形成を継続できる設計が鍵となる。
子ども・子育て支援金は「独身税」というレッテルとは異なり、将来の社会基盤への投資である。新NISA時代では、非課税枠を活用した成長投資と、外貨・円預金を組み合わせた安定運用を両立することで、負担増の時代を乗り切れる。社会制度の変化を正しく理解し、自分の資産を「守りながら増やす」戦略を今から描くことが、将来の安心につながる。
(提供:株式会社ZUU)