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2025年10月17日

円は危険資産 ? GPIFに学ぶ「守り」の海外投資術

円は危険資産 ? GPIFに学ぶ「守り」の海外投資術
(写真=Shuttarou / stock.adobe.com)

「海外の資産を持つのはリスクが高そうで不安」。そう考える人も多いかもしれない。しかし、私たちの年金を運用するプロ集団であるGPIF (年金積立金管理運用独立行政法人) は、資産の約半分を「円以外の資産」に分散することで、巨大な資産を守りながら安定的に増やしている。これは、円資産のみで資産を持つこと自体がリスクになるという新しい時代の常識を示しているとも言える。本記事では、なぜ外貨建て資産を保有する必要があるのか、その根拠とGPIFが実践する資産運用の方法について詳しく解説する。

「円だけ」で資産を持つことのリスクとは ?

円だけで資産を保有することには、さまざまなリスクがある。

1. 物価上昇 (インフレ) のリスク

近年、日本でも物価が上昇傾向にある。物価が上がると、同じ金額の円で購入できる商品やサービスの量が減り、実質的な資産価値が目減りする。

2. 為替変動 (円安) のリスク

円安が進むと、海外からの輸入品価格が高騰し、円の購買力が低下する。特にエネルギーや食料など輸入依存度が高い品目では、家計への影響も大きくなる。

3. 日本経済固有のリスク

人口減少や少子高齢化による経済成長の鈍化は、長期的に円資産の価値低下につながる可能性がある。

リスク要因 内容 影響例
物価上昇
(インフレ)
インフレによる購買力低下 預金の実質価値が減少
為替変動
(円安)
円安で輸入品価格が上昇 生活費や企業コストの増加
経済構造 人口減少・高齢化 円資産の価値下落リスク

注:実際の影響は金利水準、為替ヘッジ、制作対応等により変動します。

答えはGPIFに。プロが実践する「守りの資産配分」

GPIFは資産の半分近くを外国の資産で保有し、通貨分散によってリスクを軽減している。2020年4月からは、以下の基本ポートフォリオ (政策ポートフォリオ) を採用している。

GPIFの基本ポートフォリオ (参考値)
資産クラス 比率 (目安)
国内債券 約25%
国内株式 約25%
外国債券 約25%
外国株式 約25%

出典:GPIF公式資料「Adoption of New Policy Portfolio

この配分は、GPIFが目標とする実質運用利回り (賃金上昇率控除後) 1.7%を、最小のリスクで達成する設計になっている。国内債券の比率は金利低下・利回り低下に伴い減少し、相対的に利回りの高い外国債券の比率が増加するといった具合だ。

さらに、各資産クラスの「許容乖離幅」に加えて、債券全体・株式全体の新たな許容乖離幅も設定されている。許容乖離幅とは「実際の資産配分が基本ポートフォリオの目標比率からどの程度上下に振れてよいか」を示す範囲のことだ。

これにより、運用現場は市場変動に柔軟に対応しつつも、全体のリスクが過度に偏らないよう管理できる。新制度では、債券全体は50%+13%、株式全体は50%+11%の範囲内に抑えることが義務づけられているのだ。

守りの資産形成、まず始めるべき具体的な選択肢

選択肢1:外貨預金

外貨預金は、最も身近で取り組みやすい選択肢の一つだ。米ドルやユーロなどの為替変動が比較的安定した通貨であれば、為替変動のリスクも低減できる。シンプルな仕組みで初心者にも理解しやすく、銀行のオンラインバンキングを通じて手軽に取引が可能だ。

また、円安が進行すると外貨建ての資産価値が円換算で増加するため、為替相場の動向次第では差益を得られる可能性がある。ただし、為替差損のリスクや為替手数料の負担は常に意識する必要があるので注意したい。安定運用のカギとなるのは、短期的な売買を繰り返すよりも、一定の期間保有して中長期的な視点で運用することにある。

選択肢2:外貨建て金融商品

外貨建て保険 (貯蓄型) や外貨建てMMFなど、外貨預金よりも高い利回りを狙える商品もある。外貨建て保険は長期契約を前提にしており、積立期間中の為替変動や運用成果によって将来の受取額が変動する。為替リスクに加えて途中解約時の元本割れリスクもあるため、契約内容や解約条件の確認が重要だ。

一方、外貨建てMMFは市場金利に応じた分配金が期待でき、流動性が高いため必要な時に換金しやすいのが特徴だ。ただし、こちらも元本保証はなく、為替や市場金利の変動による価格変動リスクを伴う。これらの商品は利回り追求とリスク許容度のバランスを考え、ポートフォリオ全体の一部として活用すると効果的だろう。

今日から始める ! 「外貨預金」活用のポイント

外貨預金は、為替差益のチャンスと円資産の価値低下に備える手段として有効だ。ただし、為替損失や手数料負担といったデメリットも存在するため、正しい知識と計画的な運用が欠かせない。

ステップ 内容 詳細説明
1. メリットと注意点の理解 ●メリット:為替差益、円価値下落のヘッジ
●注意点:為替損失、手数料負担
外貨預金の利点とリスクを事前に理解し、想定外の損失を避ける準備を整える
2. 少額からのスタート 初めは数万円程度から始める 為替の動きを学びながら、少額で経験を積み、徐々に金額を増やしていく
3. リバランスの実施 年1回程度、資産配分を見直す 過剰なリスク偏重を防ぎ、資産の安定性を維持する

外貨を持つことは「守り」でもある

円資産だけでは、インフレ・円安・経済構造変化といった複数のリスクにさらされる。GPIFのように通貨分散を取り入れ、資産の一部を外貨で持つことは、今や「守りの資産運用」の必須条件と言っていい。外貨預金など身近な手段から始めることで、初心者でも無理なく資産防衛を実現できるだろう。

(提供:株式会社ZUU)

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