2025年8月1日
2025年4月、米トランプ大統領の関税政策、いわゆる「トランプ関税」に世界の関心が集まった。これにより、「貿易摩擦」が世界経済や金融市場にとって大きな不確実性であることが、改めて意識された。このような先行きが読みにくい局面における資産運用では、「キャピタルゲイン」 (値上がり益) を狙う投資よりも、保有しているだけで収益を得られる「インカムゲイン」 (利子・配当収入など) に目を向けたいところだ。
本記事では、インカムゲイン狙いの投資スタイルについて解説する。
不確実性は、さまざまな不安を感じさせ、投資家心理を著しく悪化させる。不安は投資家に大きなリスクを意識させ、いわゆる「リスク資産」 (※相場変動によって大きなリターンを得ることもあるが、逆に大きな損失を出すリスクも含む資産のこと) から資金を引き揚げようとする動きを促す。代表的なリスク資産の一つとして株式が挙げられ、不確実性が高まると株式相場が荒れやすくなる。
ちなみに、投資家がこのようにリスク資産から資金を引き揚げる動きを「リスクオフ」、逆の現象を「リスクオン」と呼ぶ。
不確実性が高まる要因としては、例えば次のようなものがある。
貿易摩擦
冒頭に触れたトランプ関税などによる貿易摩擦は、不確実性が高まる要因の一つだ。貿易摩擦は、複数国間の経済にさまざまな影響を与え、それによって各国企業の事業の先行きが、企業側にとっても投資家側にとっても見通しにくくなる。これまで好決算を発表していた企業の業績が悪化するリスクも意識され、不確実性を感じる投資家が増える。
感染症の拡大
新型コロナウイルスのような感染症の拡大も、不確実性が高まる要因の代表例だ。感染症で特にワクチンが開発されていない時期は、いつ感染拡大が止まるのか見通しにくい。逆に、ワクチンの開発や量産の目処がつけば、不確実性は低くなっていき、相場も落ち着きを取り戻しやすい。
止まらないインフレ
2025年4月時点では、「2%程度のインフレ (物価上昇) は経済成長にとって必要なもの」というのが、主な先進国の金融当局のコンセンサスになっている。
しかし過度なインフレは、国民生活を不安定化させ、インフレ抑制のための中央銀行による金利引き上げは企業経営にダメージを与える。そのため、想定以上のインフレは投資家心理を悪化させかねない。例えば、2021~2022年にかけての米国におけるインフレは、株式相場の下落を引き起こす要因の一つとなった。
不確実性が高まって先行きが読みにくい局面では、資産価値の上昇を狙ってリターンを得ようとするキャピタルゲイン狙いの投資は、なかなかハードルが高い。一方で、保有を続けることで配当や利子といった収益を得るインカムゲイン重視の投資は、再評価されやすい。
株式などを通じてキャピタルゲインを目指す場合は、荒れた相場の先行きを見極めるために、日々さまざまなニュースに目を通す必要がある。しかし、インカムゲインを重視する投資では、基本的に長期保有が前提となるため、足下の経済指標や相場の変動に過度に敏感になる必要はない。
インカムゲインに着目した投資方法にはさまざまな種類があるが、ここでは代表的な方法として3つを紹介する。それぞれリターンの仕組みやリスクの性質が異なるため、自身の目的や資産状況に応じた選択が求められる。
不動産投資
不動産投資におけるインカムゲインは、物件を保有することで得られる「家賃収入」が該当する。長期的に安定した収益が見込める点が魅力だ。ただし、売却までに時間がかかりやすいなど流動性に課題があるほか、立地や物件の選定において一定の目利きも求められる。賃貸管理などにかかる手間も考慮したうえで、長期的な資産形成を目指す人に向いた手法といえる。
債券投資
債券投資は、保有期間中に利子を受け取ることができ、償還期限まで保有すれば元本が戻ってくる仕組みになっている。比較的安定した収益が見込める一方、発行体に信用リスクがある点には注意が必要だ。また、途中で売却する場合は市場での価格が適用されるため、タイミングによっては投資元本を下回る価格での売却となることもある。とはいえ、リスクを抑えた運用を目指す人にとっては、資産の一部として有効に機能する。
外貨預金
外貨預金は、円預金よりも高い金利を期待できる点が魅力であり、米ドルやユーロなどの主要通貨を選べば、比較的安定した運用が可能だ。不動産投資などと比べて利回りは控えめな場合もあるが、仕組みが分かりやすく、初心者でも取り組みやすい。また、預金形式であるため流動性に優れており、急な資金ニーズにも対応しやすいという利点もある。
ただし、為替の変動によっては円に戻す際に元本割れとなるリスクもある。そのため、資金を引き出す時期や運用目的を踏まえたうえで、活用を検討したい。
貿易摩擦などで不確実性が高まっている環境下では、資産価値の上昇に頼ることなく収益を得られるインカムゲイン型の投資が一つの選択肢となる。もっとも、収益の安定性やリスクの特性は投資手法によって異なるため、それぞれの目的や資産状況に応じて慎重に選ぶ必要がある。
資産運用は、複数の金融商品を組み合わせることで、リスクを分散する効果も期待できる。だからこそ、相場が不透明な今は、インカムゲインを生む資産も含めて、自分に合った資産の「組み合わせ方」や「配分比率」を見直しておきたいところだ。
(提供:株式会社ZUU)