2025年5月15日
為替や株式相場に大きな影響を与える要素の一つに「経済指標」がある。代表的なものとして、米国のCPI (消費者物価指数) や雇用統計が挙げられる。これらの速報値は投資アプリやニュースサイトで簡単に確認できるが、表面的な数値だけを見ていると重要なチャンスを見逃す可能性がある。発表されたデータを深掘りすることで、新たなヒントが得られることもあるため、本記事で詳しく解説していく。
冒頭でも触れたように、米CPIは為替や株式相場に大きな影響を与える指標の一つだ。CPIからはインフレ傾向を読み取ることができる。例えば、市場予想を上回る物価上昇が確認されると、米国の利上げ観測が強まり、利下げ観測が後退する。その結果、日米の金利差が意識され、円安に振れやすくなる。
アプリで確認できる数字
CPIの結果は、投資アプリやニュースでほぼリアルタイムで確認できる。人気のアプリでは、発表後わずか数秒でデータが更新されるケースが多く、市場予測とともに前月比や前年比の変動率がすぐにわかる。ただし、多くのアプリでは総合的なCPIの数値のみが表示され、細かなカテゴリごとの物価指数までは把握できない場合が多い。
もう一掘りすると ?
BLS (米国労働省労働統計局) が発表する米CPIの中身を見てみると、項目は以下のように細かく分かれている。
<Food (食料) >
・Food at home (家庭用食料)
・Food away from home (外食用食料)
<Energy (エネルギー) >
・Energy commodities (エネルギー商品)
・Gasoline (all types) (ガソリン (全種類))
・Fuel oil (燃料油)
・Energy services (エネルギーサービス)
・Electricity (電気)
・Utility (piped) gas service (公共 (パイプライン) ガスサービス)
<Commodities less food and energy commodities (食料およびエネルギー商品を除く商品) >
・New vehicles (新車)
・Used cars and trucks (中古車およびトラック)
・Apparel (衣料)
・Medical care commodities (医療用品)
<Services less energy services (エネルギーサービスを除くサービス) >
・Shelter (住居)
・Transportation services (交通サービス)
・Medical care services (医療サービス)
例えば、「Shelter (住居) 」は住居費の物価動向を示す指標であり、一般的に賃料はほかの物価よりも遅れて変動する「遅行性」があるとされている。一方、食料品は物価の影響を受けやすいとされ、その価格上昇が落ち着けば、物価全体の動向を先読みする手がかりとなる。こうしたカテゴリごとの物価の動きを把握することで、全体の変化をより深く捉えることができる。
同じように、米国の雇用統計も深掘りしてみよう。
アプリで確認できる数字
雇用統計もCPIと同様にBLSが発表機関であり、雇用者数や失業率、平均時給の最新データが公表される。投資アプリでは、これらのデータが発表後すぐに表示されるが、その数字だけでは労働市場全体のマクロ的な動きしかわからない。
もう一掘りすると ?
例えば、失業率 (unemployment rate) は、さまざまな属性ごとに分類されており、各層の失業率や雇用状況がどのように動いたのかを細かく知ることができる。主な分類には、以下のようなものがある。
例えば、学歴が低い層の失業率が特に上昇している場合、低賃金の労働者が雇用環境の変化による影響を受けやすくなっている可能性がある。このようにデータを深掘りすることで、雇用市場の構造変化や特定の層への影響を読み解くことができ、それをもとに今後の雇用動向を予測しやすくなる。
ちなみにCPIも雇用統計もBLSの公式サイトから確認できる。公式サイトを開き、「LATEST NUMBERS」という欄をチェックしてほしい。各項目をクリックすると、最新のより詳細なデータが掲載されたページに移動できる。
投資の世界には「人の行く裏に道あり花の山」という格言がある。これは、「多くの人が選ぶ道とは逆の行動にこそ、利益のチャンスが潜んでいる」という意味だ。
市場全体がトータルの数字に注目しているときこそ、データを深掘りすることで、多くの人が気づかない小さな予兆を見つけることができれば、大きなリターンを得られるきっかけになるかもしれない。市場に資金が流れ込む前にその投資対象を保有しておけば、後から参入する投資家の影響で価格が上昇した際に、いち早くその恩恵を受けることができる。
積極的にデータを深掘りすれば、投資チャンスをつかめるだけでなく、米国や日本、さらには世界経済の動きをより立体的に捉えられるようになる。数値の表面的な変化だけでなく、その背景にある要因を探ることで、経済の構造や市場の本質を見極める力が養われるだろう。データを「もう一掘り」する習慣を身につけ、投資を単なる利益追求の手段とするのではなく、市場を深く理解する機会にもしていこう。
(提供:株式会社ZUU)