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2025年4月30日

世界の最高学府が運用する「ハーバード大学基金」とは ? ポートフォリオを解剖 !

世界の最高学府が運用する「ハーバード大学基金」とは ? ポートフォリオを解剖 !
(写真=Via Nova / stock.adobe.com)

世界大学ランキングでは、常に上位に位置し2011年以降13年連続でトップに君臨する米国のハーバード大学。日本でもその名前は有名だが、OBなどからの寄付金で集めた資金をファンドとして運用していることはあまり知られていない。本記事では、「ハーバード大学基金」の運用方針や投資対象、近年のパフォーマンスなどについて紹介する。

「ハーバード大学基金」とは ?

1636年10月28日、ハーバード大学は、米国で初めての大学としてマサチューセッツ州に設立された。英国の名門、ケンブリッジ大学で修士号を取得したジョン・ハーバード氏は、大学の創始者ではなく、大学が設立されてからおよそ2年後の1638年にハーバード氏が自身の蔵書400冊を大学に寄贈したことから、「ハーバード大学」と名付けられた。

大学出身者には“建国の父”の1人として知られる第2代大統領のジョン・アダムズや、ジョン・F・ケネディ、バラク・オバマといった歴代大統領、ビル・ゲイツ (中退) やマーク・ザッカーバーグ (中退) といった世界に名だたる企業の創業者が名を連ねる。日本の楽天グループ会長兼社長の三木谷浩史氏もハーバード大学大学院で修士号を取得している。

ハーバード大学基金は、主にOBなどからの寄付金をもとにしたファンドだ。大学運営の長期的な資金源であり、大学の年間運営予算の3分の1以上をハーバード大学基金の収益が占める。その時価総額は、2024年度で約532億米ドル (1米ドル149円換算で約7兆9,000億円) 。日本企業のJT (日本たばこ産業) やホンダの時価総額を上回る水準だ (2025年3月4日時点) 。

米国の大学がファンドで資金を運用することは決して珍しくないが、ハーバード大学基金の規模は、スタンフォード大学やマサチューセッツ工科大学といったほかの米著名大学のなかでもトップである。

最新のポートフォリオとパフォーマンス

ハーバード大学基金の運用はHMC (Harvard Management Company) という資産運用の専門会社が担当している。1990年代以後、資産規模は急速に拡大しておりパフォーマンスは良好だ。近年、ハーバード大学基金はより高い収益を求め、株式や債券などの伝統的なアセット (資産) に加え、金・銀・プラチナといったコモディティ、未公開株、デリバティブ (金融派生商品) などに投資する「オルタナティブ投資」を増やしている。

特に2021年ごろから投資リスクを拡大させ、オルタナティブ投資の比率を引き上げた。HMCの2024年度年次報告書によると、全運用資産に対する上場株式への比率は約14%にとどまっているが、ヘッジファンドへの投資は約32%、未公開株は約39%と、7割超をオルタナティブ投資に振り向けている。一方、2018年度時はポートフォリオの約4分の1を占めていた不動産や天然資源への比率は6%まで減少した。

しかし、視点を変えてほかの米国名門大学が運用する基金を比較すると、ハーバード大学基金の運用成績は決して良好とはいえない。米ブルームバーグによると、ハーバード大学基金のこの20年間の運用益は、アイビーリーグ (ハーバードやイエール大学、プリンストン大学など米国東部の名門8校) 8校中7位と低迷。資産運用50億米ドル以上の米大学基金の約6割に後れをとっているという。ただし、2021年~2023年度の3年間は2位と、ここ数年のパフォーマンスは良好だ。2021年以降のポートフォリオの変更が、功を奏した結果とみられる。

ただ、ハーバード大学の教授を務めた経済学者のローレンス・サマーズは、同基金のパフォーマンスに対して「過去20年間、平均的な基金と同程度の成長をしていたならば、基金総額は現状より200億米ドル余り多かったはず」と同基金の運用に対して苦言を呈している。

日本でも「大学ファンド」による運用がスタート

日本でも「世界最高水準の研究大学の形成」を目的とした「大学ファンド」が設置され、2022年3月から10兆円規模のファンドとして運用を開始した。2023年度の運用実績は約9,934億円のプラス、収益率は約10%を記録している。

ただし、日本の大学ファンドは運用資産の約65.7%をグローバル債券が占め、オルタナティブ投資はわずか約2.8%にとどまる。ハーバード大学基金など米国の大学基金と比べると、その運用方針はかなり保守的といえる。

「ハーバード大学基金」の運用スタイルを参考にしてみよう

世界大学ランキングでトップに立つハーバード大学が、その地位を維持し、「世界の最高学府」であり続けられる背景には、豊富な資金を活用した多額の研究投資がある。これを支えているのが、長期的な視点で行われる資産運用だ。

ハーバード大学基金は、株式や債券だけでなく、ヘッジファンドやオルタナティブ資産にも投資するなど、投資業界のトレンドを取り入れた運用を行っている。また、その戦略は年次報告書などで公開されており、個人の資産運用にも応用できる要素がある。ぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。

(提供:株式会社ZUU)

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