2024年10月29日
会社を退職すると自由な時間は増えるが、その反面、社会とのつながりが薄れてしまいがちだ。特に、配偶者がいない場合や近くに知人や友人が住んでいない場合、孤独感に苦しむケースも少なくない。では、年齢が上がることと孤独感が増すことは「比例」の関係にあるのだろうか。内閣府が公開している調査データを紐解いていこう。
まずは、内閣官房孤独・孤立対策担当室が2024年3月に公表した「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査 (令和5年人々のつながりに関する基礎調査) 」から、年齢階級別孤独感に関するデータを紹介しよう。はたして、年齢が上がると孤独感は上昇するのだろうか。
「年齢の上昇」と「孤独感の上昇」は比例しない
年齢層 | しばしばある 常にある |
時々ある | たまにある | ほとんどない | 決してない |
---|---|---|---|---|---|
40代 | 6.5% | 16.2% | 19.8% | 40.1% | 17.1% |
50代 | 5.7% | 17.2% | 21.6% | 38.3% | 16.6% |
60代 | 3.4% | 13.6% | 19.2% | 46.9% | 15.5% |
70代 | 2.7% | 10.3% | 17.5% | 47.9% | 18.8% |
80歳以上 | 2.8% | 13.3% | 20.5% | 43.4% | 15.6% |
出典:内閣官房孤独・孤立対策担当室「人々のつながりに関する基礎調査 (令和5年) 」
孤独感が「しばしばある・常にある」「時々ある」の割合は、年齢層が上がっていくに従ってむしろ低くなっており、「年齢の上昇=孤独感の上昇」という関係にはなっていないことが分かる。
前述のデータで「年齢の上昇」と「孤独感の上昇」は、比例関係にないことが分かった。では、どういった要素が孤独感に関わってくるのだろうか。前述の調査の別のデータでは「同居人がいるかいないかで孤独感が大きく変わる」ということが明らかになっている。
孤独感を感じることが「しばしばある・常にある」の割合を同居人がいるケースといないケースで比較すると以下のようになる。
年齢層 | 同居人がいる | 同居人がいない |
---|---|---|
40代 | 5.6% | 15.8% |
50代 | 4.2% | 14.7% |
60代 | 2.3% | 8.9% |
70代 | 1.7% | 6.2% |
80歳以上 | 2.4% | 4.3% |
出典:内閣官房孤独・孤立対策担当室「「人々のつながりに関する基礎調査 (令和5年) 」
どの世代でも同居人がいる人より同居人がいない人のほうが、孤独感が「しばしばある・常にある」という傾向だ。
資産の多寡も孤独感に影響を与える
同居人の有無だけではなく、実は資産の多寡も孤独感に影響を与えることが分かっている。世帯の年間収入別孤独感を確認したところ、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、年収が上がるにつれて緩やかな右肩下がりとなっている。
全体平均は4.8%で最も割合が高かったのは「100万円未満」で7.0%だ。ちなみにこの平均を超えるのは「100万円未満 (7.0%) 」と「100万~199万円 (5.0%) 」のみだ。
孤独感のデータは「経済的な暮らし向き別孤独感 (大変ゆとりがある・ややゆとりがある・普通・やや苦しい・大変苦しい) 」という側面から見ても上記とほぼ同じ傾向を示す。孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の全体平均は4.8%だが、暮らしが「やや苦しい」は5.6%、「大変苦しい」と回答している人では12.7%にも上る。
ここまで孤独感に関するデータを紹介してきたが、実際に孤独感を抑えるためにはどのような対策が有効であるかを考えてみよう。
定期的に家族や友人と連絡をとる
家族や友人と定期的に連絡を取り、一緒に食事をするなどの機会をつくることは、孤独感を和らげる効果的な方法である。誰かと時間を共有することで、充実感を得られ、孤独感も自然と軽減されるだろう。
地域のコミュニティ活動やクラブに参加する
家族や友人が近くにいない場合や、交友関係が薄れてしまっている場合は、地域のコミュニティ活動やクラブに参加することも一つの手段である。新たな人間関係を築くことで、社会とのつながりを感じられるようになる。
趣味や興味のある活動を見つけて続ける
孤独は、何もすることがない時間に感じやすい。要は、忙しければ孤独を感じる暇もなくなるわけだ。趣味や興味のある活動を見つけ、それに打ち込むことは、時間を有意義に使えるだけでなく、孤独を感じる隙間を減らす手段になる。
ボランティア活動に参加する
前述と同様の視点で、ボランティア活動に参加するのもよいだろう。ボランティア団体に参加すれば新たな交友関係が生まれ、自ら社会に貢献することで、生きがいや充実感を得ることもできる。
新しいスキルや知識を学ぶために講座やワークショップに参加する
新しいスキルや知識を学ぶために講座やワークショップに参加することは、シニア期における充実した時間の過ごし方にもつながる。学び続けることで孤独を感じる時間を減らし、自己成長を楽しむことができる。
孤独感は空腹感とは異なり、すぐに解消できるものではない。新たな交友関係を築いたり、ボランティア団体に馴染んだりするのには、それなりに時間がかかる。将来、孤独感に悩まないためにも、シニア期の過ごし方を早めに計画しておくことが大切だ。
さらに、資産の状況も孤独感に影響を与えることがあるため、早いうちから資産運用を始め、備えておくことが有効な対策となるだろう。
(提供:株式会社ZUU)