2024年10月17日
年金制度に無関心な人はほとんどいないだろう。しかし、シニア期に入っていざ老齢年金を受給するとなると、それは誰にとっても初めての経験となるため、申請方法などの情報を調べる必要が出てくる。その際、信頼すべき情報源はどこだろうか。
本記事では、厚生労働省の世論調査を基に、公的年金に関する信頼性の高い情報源を紹介する。また、公的年金だけではなく個人で自由に組み立てる年金的資産運用の視点も提供する。
厚生労働省は、2023年11~12月にかけて、18歳以上の5,000人を対象に「生活設計と年金に関する世論調査」を実施した。この調査のなかで「あなたは、公的年金制度について、どこからの情報を信頼していますか」 (複数回答可) という質問があり、その結果は以下のようになっている。
順位 | 回答 | 割合 |
---|---|---|
1位 | 厚生労働省や日本年金機構の広報やセミナー | 43.1% |
2位 | テレビやラジオで放送されている情報 | 41.9% |
3位 | 新聞・ニュースサイトの記事や雑誌 | 40.0% |
4位 | 都道府県や市区町村の広報やセミナー | 19.8% |
5位 | 友人や家族からの口コミ | 17.8% |
1位は「厚生労働省や日本年金機構の広報やセミナー」で43.1%だった。公的年金の運用主体である国・機関の情報に対する信頼度は、やはり高いことがうかがえる。2位は「テレビやラジオで放送されている情報」で41.9%、3位は「新聞・ニュースサイトの記事や雑誌」で40.0%だった。
各金融機関のアドバイザーも強い味方
これらの情報源に加え、年金や資産形成に関しては金融に関するアドバイザーの活用も有効だ。各金融機関の担当者やFP (ファイナンシャル・プランナー) やCFP (サーティファイド・ファイナンシャル・プランナー) の資格保持者は、年金についての相談だけでなく、資産運用全般にわたって強い味方になってくれる。
専門知識を持つ彼らは、相談者の資産状況や将来の希望に合わせて資産形成プランを一緒に考えてくれるため、信頼できる存在である。
ここまで「公的年金の情報はどこを信頼すべきか」という点に着目してきた。しかし、ここで一度立ち止まり、「シニア期は公的年金だけで本当に十分なのか」ということを考えてみたい。
「インフレが続けば、貯蓄と年金だけでは生活資金が不足するのではないか」と不安を感じている人も少なくないだろう。実際、インフレにより物価が上昇すれば、現在の貨幣価値は下がる (例:今1万円で買えるものが将来は同じ金額で買えなくなる) ため、貯蓄と年金だけでシニア期を乗り切れるか不安になるのは当然だ。
この不安を軽減するためには、「公的年金+α」の視点を持つことが必要である。
「+α」には私的年金などが含まれるが、日本人のどれほどが私的年金に加入しているのだろうか。前述の世論調査では、「加入している、またはしていた私的年金」 (複数回答可) についてのデータが示されている。その結果は、以下の通りだ。
回答 | 割合 |
---|---|
厚生年金基金 | 35.7% |
国民年金基金 | 18.6% |
企業型DCとも呼ばれる企業型確定拠出年金 | 12.0% |
iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金 | 6.7% |
DBとも呼ばれる確定給付企業年金 | 5.3% |
いずれにも加入していない、または加入していなかった | 41.4% |
私的年金の加入状況にはばらつきが見られるが、41.4%の人は私的年金に加入していない。多くの人が公的年金に依存している現状が浮き彫りとなっている。
前述の調査における「私的年金」には、厚生年金基金や国民年金基金、企業型DC、iDeCo、DBなどが含まれるが、これらは投資対象や投資額に一定の制約がある。そのため、より自由度の高い金融アセットを組み合わせて、自分で年金的資産運用を行うことも一つの選択肢である。
例えば、公的・私的年金のポートフォリオには含まれない「外貨預金」などが挙げられる。外貨預金を活用して年金的資産運用を行う場合、「利息受け取り重視型」や「一定額・一定率ずつ引き出し型」での運用が主な選択肢となる。
外貨預金の「利息受け取り重視型」
利息受け取り重視型は、外貨を保有し、その利息を年金のように定期的に受け取る方法である。特に、日本円よりも金利が高い外貨で預金を行うことで、円預金を上回る利息を安定的に得られるのが特徴だ。
外貨預金の「一定額・一定率ずつ引き出し型」
一方で、外貨預金の利息を再投資し、長期間保有することで資産を増やし、一定の年齢に達した後に定額もしくは定率で引き出す方法もある。この方法は、再投資によって得たリターンがさらにリターンを生む「複利効果」により、資産を効率的に増やしやすい。
公的年金に関心を持つことは良いことだが、信頼できる情報源から正確な情報を得ることが重要である。
ただし、昨今の公的年金に対する不安を踏まえ、公的年金だけに頼るのではなく、私的年金や自分で設計できる年金的資産運用にも目を向けたい。
こうした選択肢を早めに検討し、積極的に取り組むことで、シニア期の生活に対する不安を減らし、より安心して暮らせるようになるだろう。
(提供:株式会社ZUU)