2024年4月8日
2022年における65歳以上の無職夫婦の月間支出は、平均26万8,000円ほどだ。仮に30年間この支出を維持した場合、1億円近くの金額が必要になる。こうした規模の支出に備えるためには、どのように資産を築いていけばいいのだろうか。本記事では、必ず知っておきたい資産運用の基本を解説する。
総務省統計局が公表している2022年の「家計調査年報 (家計収支編) 」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯 (夫婦高齢者無職世帯) の支出 (消費支出+非消費支出) は月平均で26万8,508円となっている。年間支出にすると322万2,096円だ。
冒頭で触れたように、この支出が30年間続くと総支出は9,666万2,880円となり、1億円規模の金額となる。また、老後に他の人よりも豊かな暮らしをしようとすれば、さらに多くの金額が必要だ。
支出の内訳は ?
支出のイメージを持ちやすいように内訳も確認しておこう。支出は「消費支出」と「非消費支出」に分かれ、消費支出は平均23万6,696円、非消費支出は平均3万1,812円となっている。このうち、消費支出の細かな内訳は以下の通りだ。
ちなみに、非消費支出の内訳は紹介されていないが、税金や社会保険料など、世帯の自由にならない支出が該当する。
項目 | 内訳 |
---|---|
食料 | 28.6% |
住居 | 6.6% |
光熱・水道 | 9.6% |
家具・家事用品 | 4.4% |
被服および履物 | 2.1% |
保健医療 | 6.6% |
交通・通信 | 12.2% |
教育 | 0.0% |
教養娯楽 | 9.0% |
その他の消費支出 (交際費含む) | 20.9% |
もちろん30年で1億円にもなる支出を、すべて貯蓄でまかなう必要はない。年金を受給する場合、その収入で少なからず支出をカバーできる。
厚生労働省が発表している「令和4年度 (2022年度) 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると老齢基礎年金の平均年金月額は5万6,428円、老齢厚生年金と合算した平均年金月額は14万4,982円となっている。
仮に14万4,982円を30年間受給し続けた場合、総受給額は5,219万3,520円だ。しかし前述のケースで30年間の総支出が1億円近くになる場合、年金では半分程度しかカバーできないことになる。
リタイア後に平均的な生活以上の暮らしを求める場合、総支出はさらに増える。例えば食にこだわろうと思えば平均の2倍以上の支出になってもおかしくない。また、国内・海外旅行を頻繁にしようと思えば、交通費や娯楽費の支出も大きく増えるだろう。
そのため、豊かな老後を過ごしたいと考えているならば、早いうちからしっかりと資産運用を行い、老後のための資金を十分に確保しておくことが重要となる。
資産運用を行う際は、次に挙げる基本的なポイントをしっかり押さえておきたい。
リターンとリスクの両方を考える
まずリターンとリスクの両方を考えよう。これらは表裏一体で、大きなリターンが期待できる金融商品ほどリスクも高くなる。欲張って高リターンを狙い過ぎると、多額の損失を出してしまう可能性もあるため、十分に注意したい。
年齢が上がると許容できるリスクは減る
年齢が上がるとリスクを許容しにくくなる。若ければ資産運用で損失を出しても労働による収入でカバーしやすいが、リタイア後は現役時代よりも収入が減るケースが多いため、損失の穴埋めがしにくい。金融商品を選ぶ際は、このことを忘れないようにしよう。
流動性の高さに注目する
資産運用を行う際は、できるだけ流動性が高い金融商品を選ぶことも心がけたい。「流動性が高い」ということは「現金化がしやすい」ということだ。いざとなったらすぐに現金に戻せる資産を保有しておくことで、万が一の際も焦らず対応できる。
分散投資を心がける
投資対象を分散して、自己資産が一気に減るリスクを抑えることも重要だ。分散投資の手法の一つとして「コア・サテライト戦略」がある。リスクが低い投資対象をコアに据え、有望性は高いがリスクもやや高い投資対象には、サテライトとして資金の一部だけを充てる戦略だ。
ここでは、ポートフォリオに含めたい流動性が高い資産を2つ紹介しよう。
インデックス型の投資信託
さまざまな銘柄で構成され、特定の株価指数のパフォーマンスと連動するように設計されたインデックス型の投資信託は、1本購入するだけで分散投資効果を得られることから個人投資家に人気だ。シンプルで分かりやすい仕組みのため初心者にも向いており、基本的に換金も自由に行える。
外貨預金
日本円を米ドルやユーロ、豪ドルなどの外貨に換えて預金を行うと、日本円で預金しておくよりも高い金利収入を得られる。基本的に預金した外貨はすぐに日本円に戻せる仕組みになっているうえ、購入時よりも為替レートが円安に傾けば、為替差益を得ることも可能だ。
老後は現役時代よりも収入が減ってしまうケースが多いため、より豊かな老後を過ごしたい場合は早いうちから資産運用を始めることが大切だ。
資産運用で得た利益を再投資すれば資産の成長を加速させることができ、さらに早めに資産運用を始めることで将来への不安も軽減することができるだろう。
自分が理想とする老後にはどれくらいの費用が必要なのかをシミュレーションし、今できることから始めてみてはいかがだろうか。
(提供:株式会社ZUU)