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2024年2月5日

「最低賃金」が上がると「老後不安」が高まる ? その理由と知っておきたい対処法

「最低賃金」が上がると「老後不安」が高まる ? その理由と知っておきたい対処法
(写真=Hyejin Kang / stock.adobe.com)

政府は最低賃金を上げる政策を掲げ続け、実際に底上げが年々進んでいる。このまま進めば将来的に「最低賃金2,000円時代」が到来する日が来るかもしれない。誰にとってもいい話のように聞こえるが、リタイア世代にとってはマイナス面もある。その理由を解説し、対処法も紹介する。

最低賃金はどう変化してきた ?

独立行政法人「労働政策研究・研修機構」のデータによれば、日本の最低時給 (全国加重平均) は以下のように推移してきた。また、2022年度は961円だったが、2023年の改定では40円以上アップの1004円となっている。

年度 最低賃金
2022年度 961円
2021年度 930円
2020年度 902円
2019年度 901円
2018年度 874円
2017年度 848円
2016年度 823円
2015年度 798円
2014年度 780円
2013年度 764円
2012年度 749円
2011年度 737円
2010年度 730円
2009年度 713円
2008年度 703円
2007年度 687円
2006年度 673円
2005年度 668円
2004年度 665円
2003年度 664円

出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「表 最低賃金」

政府はどのような方針を掲げている ?

最低賃金は制度化されており、国が最低額を定め、企業はその金額以上を労働者に支払わなければならない。

政府は近年、働き方改革の一環として、最低賃金を引き上げていく方針を掲げてきた。例えば2017年に決定された「働き方改革実行計画」においては、引き上げ水準について「年率3%を目途」としている。

最低賃金引き上げとインフレの関係

前述のことから、最低賃金が今後も上がり続けることはほぼ確実だ。しかし冒頭で触れた通り、このことはリタイア世代にはマイナスの影響が出る。その理由を説明していこう。

従業員への給与の支払いのために価格転嫁が必要となる

民間企業の立場になって考えてみると、最低賃金が上がるということは、従業員に支払う給与が増えることにつながる。こうした状況でも利益を確保するためには、販売している商品・サービスの価格を値上げする必要が出てくる。

現役世代の場合は給料も上がっていくため、価格上昇 (インフレ) の影響は相殺されやすいが、リタイア世代の場合、蓄えていた現預金の購買力が低下することになる。この点については後ほど改めて触れる。

インフレ目標を達成するための引き上げという側面も

物価上昇は最低賃金引き上げの副作用のようにも感じるが、そもそも政府は経済成長に向けて適度なインフレを定着させることを目指しており、その目標を出発点に最低賃金を引き上げているという側面もある。

日本は近年、安定的なインフレを達成できないことに苦しんできた。こうした背景もあり、最低賃金の引き上げに政府は今後も取り組んでいくものとみられる。

インフレになると現預金の価値はどうなる ?

今後もインフレが続いたとき、リタイア世代の現預金の実質購買力はどう変化するのだろうか。日銀がインフレ目標に据えている「2%」の物価上昇が続いたとき、現時点から100万円の実質購買力は以下のように低下していく。

経過年数 実質購買力
現時点 100.00万円
1年後 98.04万円
2年後 96.12万円
3年後 94.23万円
4年後 92.38万円
5年後 90.57万円
6年後 88.80万円
7年後 87.06万円
8年後 85.35万円
9年後 83.68万円
10年後 82.03万円

現時点の100万円の実質購買力は、10年後には約82万円に低下する。要は現時点の100万円は、10年後には約82万円の価値しか持たなくなるわけだ。公的年金の支給額はインフレ分が考慮されるが、個人が貯めた資産に関してはそうはいかず、マイナスの影響が出る。

インフレ対策としての資産運用

こうしたインフレに対処するためには、資産運用が推奨される。自分が貯めたお金がお金を生み出してくれれば、実質購買力の低下に備えることができる。ここでは、インフレ対策に向いていると言われる資産運用の方法を3つ紹介しよう。

不動産投資

不動産の価値はインフレとともに上がる傾向がある。そのため、不動産を購入しておくと資産価値の目減りを避けやすい。しかし、不動産にはすぐに売却して現金化するのは難しいといったデメリットもある。

金 (ゴールド) 投資

金 (ゴールド) もインフレが進むと価値が上昇しやすい。そのため、金に投資するのも一案と言えそうだが、他の要因によってインフレなのに価格が上がらない場合もあるため注意が必要だ。また、利子や配当がつかない点もデメリットと言える。

外貨預金

現金を円預金で保有していても、金利はほとんどつかない。一方、金利が高めの外貨を保有しておくと、安定的に金利収入を得られる。この堅実に得られる金利収入は、インフレによる実質購買力低下の対策として非常に効果的だ。

堅実なインフレ対策として外貨預金を始めよう

最低賃金の上昇は一見喜ばしいことのように思えるが、リタイア後のことを考えると簡単には喜べない。そのため、今のうちからしっかりとインフレ対策をしておくことが大切だ。

先述したインフレ対策向けの資産運用法の中で、特に外貨預金は初心者や忙しくて時間が取れない人でも取り組みやすいため、今から始めることを検討してみよう。

(提供:株式会社ZUU)

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