2023年7月13日
ロボットに使われる技術が高度化し、価格も以前と比べて低廉になったことで用途が拡大している。特に高齢社会を迎えた日本国内では、介護人材の不足が深刻な問題になっており、その解決策として「介護ロボット」への期待は高い。本記事では、介護ロボットの実際の使用事例やこれから活用され得る用途を紹介する。
公益財団法人介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護事業所の聞き取り調査では、人手不足感を抱いている事業所が63%あった。訪問介護員に限ると80.6%が人手不足を感じている。この比率は、コロナ禍で失業者・求職者が増えたピーク時から見ると数ポイント低下したものの、依然として高い水準にあるのは明らかだ。
同調査では、人手が集まらない理由として過半数が他の産業と比べて労働条件が良くないことを挙げており、構造的に人手が不足しやすい状況がうかがえる。
このような背景があるなか、なるべく少ないスタッフ数で業務を進めるために注目されているのが介護ロボットだ。介護業界は、労働集約的な産業で現場ではマンパワー (人間の物理的な力) に頼るところが大きい。
また、介護の必要な度合いは人によって異なることから、ロボットによる完全自動化は難しいだろう。ただし、一部を自動化して現場の負担感を減らすことはできる。そのツールの一つとして先進テクノロジーが持ち込まれているのだ。
例えば「歩行車」なら今の角度を感知して上り坂ならモーター、下り坂なら自動ブレーキによってアシストする機能がある。
また介護する側、介護される側が腰に着けて立ったり座ったりする動作を支援する「装着型サイボーグ」にも注目したい。他にもベッドに配置するセンサーや、カメラで要介護者を見守るシステムは多くの会社がさまざまなアプローチで開発している。
上記の事例を見て「なんだか『ロボット』という響きから連想するものと違う」と感じた人もいるかもしれない。ロボットとは、情報を感知して判断を行い動作する技術を有す、知能化した機械システムのことだ。
このうち、利用者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器を介護ロボットと呼ぶ。ドラえもんやガンダムなどと比べれば近未来感は感じられないかもしれないが、上記事例も立派なロボットなのだ。
もっとも、これでもまだまだ販売価格は高く普及が進まない現状がある。今後さらに技術が進歩し、安価で開発・製造できるようになれば製品が浸透しさらに価格を押し下げる流れも期待できる。以降では、将来的に活躍が期待される介護ロボットの例を5つ紹介する。
自動運転車イス・歩行アシスト系
スマートフォンの操作に基づき利用者を目的地まで自動運転で連れて行くほか、無人状態でも移動でき現場の生産性を向上させる「ロボット車イス」が発売された。有人で運転する場合も、安全運転をサポートする機能が付いている。
装着型パワーアシスト
基本的には、腰の負担を和らげるため、空気の力などを活用して動作を助ける機能を持つ。以前は、重い人間を持つために重い介護機器を装着する状況になっていた。しかし近年は、軽量化が進み1キログラム前後の製品も出てきている。
また、腰の負担を和らげるための機器を装着することで今度は肩に負担がかかるケースもあったが、そうした負担にも配慮した製品もあり、さらなる技術進歩に期待が高まる。
自動排せつ処理装置
自動排せつ処理装置とは、排便・排尿を自動で感知し吸引、洗浄、乾燥までを行ってくれる機器のことだ。レシーバーをあてがって排せつすると自動的に尿を吸引する機器もあり、要介護者が自力でトイレに移動できないケースに有効となる。
排せつは1日に何度もあるため、この作業が自動化されたり要介護者によって行われたりするようになると介護現場の負担は大きく軽減されるだろう。
見守りセンサー
要介護者と離れていても状態を把握できる見守りセンサーの開発にも期待したい。例えば、要介護者がベッドの上でどのような位置や姿勢にあるかなど、要介護者の24時間の状態を把握するベッドが販売されている。
また、他社の類似製品では、要介護者がベッドを離れる動きを検知してナースコールに接続するシステムも用意されている。
配膳ロボット
配膳ロボットは、近年ファミリーレストランや居酒屋、ショッピングモールなどで稼働しており介護の現場でも重宝され始めた。省人化はもちろん、長引くコロナ禍では非接触で業務を進める方法の一つとしても注目されている。今では、中国製の配膳ロボットも日本で出回っており、たくさんの製品が登場することで機能面の向上が期待できそうだ。
介護業界の人手不足は、いつまで続くのだろうか。日本は、国内人口が減少するだけでなく労働力人口も徐々に減っており、介護業界のみならず働き手の確保は大きな課題となっている。介護業界は、冒頭の調査にあったように労働時間や待遇などの面で他の産業よりも条件が良いとは言い切れず、人手が充足される状況はにわかに想像しにくい。
そうであれば介護事業者は、長期的な視野を持って介護ロボットの導入を検討すべきだろう。もっとも現状は、機器一つあたりの価格が高く、ジャンルによっては技術開発がまだまだ本格化していないこともある。
しかし、いずれは一般家庭で活躍できる価格帯・性能のロボットが登場するかもしれない。その可能性も踏まえたうえで、今後の介護ロボットの推移を見守りたいところだ。
(提供:株式会社ZUU)