2023年6月23日
米国のFOMCを巡って、「ハト派からタカ派に転向」「タカ派色が強まる」といったニュースがたびたび流れる。
日本でも大きく報じられることが多い「タカ派」と「ハト派」とは、どういう意味なのだろうか。FOMCの概要と併せて整理してみよう。
FOMCは「Federal Open Market Committee」の略称で、米連邦公開市場委員会と訳される。FRB (米連邦準備制度理事会) が行う主な金融政策を決める組織だ。日本にあてはめると、FRB=日本銀行、FOMC=金融政策決定会合といったところだ。
FOMCに出席するのはFRBの議長、副議長を含む理事7人に、12地区の連邦準備銀行の総裁を加えた計19人。年に8回開かれ、金融政策を決めたり、その時々の景況感を発表したりする。
政策金利が為替変動のカギを握る
FOMCが決める金融政策の一つに、政策金利の上げ下げがある。政策金利とは、中央銀行が、物価水準や景気動向を調整するために設定する金利の基準のことだ。金利の引き上げは物価上昇を抑制する効果、引き下げは景気を上向かせる効果があるとされている。
では、なぜ金利が為替に影響するのだろうか。単純化すると、以下のようになる。
・金利が上がる
有利な金利を求めて米国ドルの資産を増やす動きが加速することでドルが買われる
・金利が下がる
米国ドル以外の資産を増やす動きが加速することでドルが売られる
米国の金利が為替に大きく影響するからこそ、世界の市場関係者はFOMCの動向から目を離せないのだ。
FOMCは、多数決で金融政策を決める。出席者は前述の19人だが、このうちFRBの理事7人と連邦準備銀行総裁5人の計12人に政策決定の投票権が与えられている。
金融政策が多数決で決まるということは、投票権を持つメンバーの考えが大きく反映されるということだ。そのため、どのようなスタンスの人が投票権を持っているのかが注目される。
投票権を持つメンバーは「タカ派」または「ハト派」に色分けされて論じられる。もともとは政治用語で、攻撃的な「鷹」、平和的な「鳩」をイメージするとわかりやすいだろう。
タカ派は物価の安定を重視し、金融引き締めに積極的で利上げを好む傾向がある。一方のハト派は、雇用の安定を重視する立場から金融緩和を指向し、利上げには消極的だ。
投票権を持つ人の色分けは ?
明確に色分けすることは難しいが、FRBの理事ではウォーラー理事がタカ派で、パウエル議長やボウマン理事は中立派だがタカ派寄りと見られている。一方、ブレイナード副議長はハト派の代表格で、ジェファーソン理事もややハト派と目されている。
投票権を持つ連邦銀行総裁がタカ派寄りだったこともあり、2022年はタカ派が優位だったと見なす金融関係者が多いが、2023年は様相が変化しそうだ。
FRB理事は引き続き投票権を持つが、連邦銀行総裁の4人が入れ替わる。これによって、ハト派に傾斜するのではないかというのが、もっぱらの見方だ。
タカ派は物価の安定を優先し、利上げによって投資や消費の熱を冷まし、インフレを抑えようとする。「物価を抑えるために高金利を続けるべきだ」といった直接的な発言の他、以下のような内容のことを口にする傾向がある。
・「これまでの利上げはインフレに限定的な効果しかもたらしていない」
・「インフレ率はあまりに高すぎる」
・「物価目標に寄せるべきだ」
こうした発言のとおり、利上げペースを上げたり、利上げを継続したりすると、ますます日本円の資産を減らしてドルが買われることになる。円安ドル高の傾向が強まるはずだ。
ハト派は、雇用の最大化を優先する。利下げによって企業が資金を借りやすくして経済活動を活発化させ、景気を上向かせることで雇用を確保することを目指す。
・「高金利が経済に悪影響を及ぼす」
・「失業率の増加は避けるべきだ」
・「利上げは効果が出るまでタイムラグがある。利上げを抑えるべきだ」
これらの発言の意図どおりに金利が下がれば、ドルが売られることになり、円高ドル安に向かうだろう。
米国の中央銀行のトップであるFRBの議長は、FOMCで投票権を持ち、金利の上げ下げにも大きく関与する立場にある。FRB議長が記者会見や講演で語った内容を受けて、すぐに為替が変動することも珍しくない。
それほどマーケットに大きな影響力を持つFRB議長が、利上げに前向きなタカ派なのか、消極的なハト派なのかを把握しておくことは、これからの金利の動向を見通す上で重要だ。FRB議長の発言を継続的にチェックしておきたい。
(提供:株式会社ZUU)