2023年6月20日
メンタルヘルスは働き盛りの頃の問題と捉えられがちだが、現役を引退した後もその重要性は変わらない。むしろライフステージの変化に対応するために、より一層のケアが欠かせないだろう。
シニア世代はどのようなメンタルの病にかかるケースがあり、どのようなケアが有効なのだろうか。
シニア世代がメンタルの病にかかる要因として、次のような出来事が考えられる。
社会との隔絶 (退職などに伴うもの)
定年を迎えて第二の人生が始まることに期待を膨らませる人もいれば、心にぽっかり穴が空いたような孤独や満たされない気持ちを抱える人もいる。
「ストレスはあったが、毎日通勤する場所があり、任される仕事をこなす充実感はあった」と会社員としての日々を恋しく思い、虚無感を抱く人も少なくない。
定期的な収入がなくなることによる経済的な不安
これまで会社員として何十年も月給やボーナスなどの定期収入があったが、それがなくなることによって急に経済的不安を抱えることもある。
十分な蓄えがあったとしても、支出だけの毎日が続くと、それまでは気にならなかったような小さな出費も目につくようになり、それがストレスにつながる。
家族や友人との死別、熟年離婚
シニア世代になると、避けては通れないのが親しい人との死別だ。特に家族との死別には大きな悲しみが伴い、それが原因でうつを発症することもある。
熟年離婚の場合は、経済的な困窮や子どもとの関係の悪化、または世間体が気になるなど、悩みやストレスの原因が派生しやすい。
生活環境の変化 (施設への入所など)
住み慣れた家を離れ、施設に入所するといった住環境の変化も、心に負荷をかける。20代、30代であれば新天地で心を弾ませることもあるだろうが、シニア世代だとそうもいかない。
とりわけ施設では他人と共同生活を送ることになるため、慣れるまではストレスを抱くのが自然だろう。
健康不安 (加齢に起因するもの)
年齢を重ねると、まず身体的な変化を実感する。視力が低下して物が見えにくくなったり、聴力が低下して聞こえにくくなったりする。また、記憶力の低下から自分の考えに自信が持てなくなり、不安になりやすくなることもある。
これまでは受け流すことができていた些細なことも、シニア世代になると脳機能の低下により重く受け止めてしまいがちだ。この問題は、特にメンタルヘルスの不調を招きやすい。
配偶者の介護によるストレス
シニア世代になれば、配偶者が要介護となることも想定される。介護者は慢性的な不眠に陥ったり、強い疲労感を覚えたりする傾向がある。また、介護によって外出が減って気分が落ち込みがちになり、ストレスからうつ状態に陥るケースもある。
シニア世代のメンタルヘルス不調には、次のような対策が有効と考えられる。
適度な刺激で「ドキドキ」を得る
老年期になると脳を活性化する機会が徐々に減り、それがメンタルヘルスの不調にもつながる。旅行して景色に感動する、友人とカラオケで好きな曲を歌うといった、自分の気持ちが盛り上がるイベントを積極的に設けて、脳を刺激するのが効果的だ。
短期目標を設定する
冒険心やチャレンジ精神を持つことは、いくつになっても大切だ。小さなことでも、自分で目標を設定することで生活にメリハリが出る。
例えば週3回、1日10分散歩するといった簡単な目標でもよい。興味のあることや好きなことがあれば恐れず挑戦し、小さな達成感を得ることが重要だ。
「笑顔」の時間を増やせる工夫をする
笑いには免疫力アップやストレス解消、さらには細胞の活性化によるがん予防など、健康増進効果があると考えられている。
テレビを見てクスッと笑う、友だちと話して笑い合うことなどを意識的に取り入れよう。口角を上げて笑顔を作ることも効果があるといわれている。
ボランティアなどで社会とのつながりを持つ
数十年前と異なり、近年は社会とつながりを持つ手段は多岐にわたる。シルバー人材サポートセンターなどを通じてボランティアに参加することもできれば、ソーシャルネットワーク (Twitter、Facebook、Instagramなど) で社会とつながることもできる。
経済的な不安は、早いうちに対処する
精神的な問題は自身の工夫や周囲の助けによって解消できるが、どうにも解決が難しいのは経済的な問題だ。お金の不安は着実に心を蝕んでいく。
そのため、例えばシニア世代に適した比較的リスクの低い資産運用を始めたり、生きがいにもつながるような過去の経験やスキルを生かした仕事を探してみたりするなど、工夫をしてみたい。
シニア世代といえば「第二の人生」「ゆっくり余暇を楽しめる時間」といったポジティブなイメージを抱きがちだが、ライフステージの変化が多く、意外と心の健康を乱しやすい時期でもある。ストレスや悩みの種も、働き盛りの頃に抱えていたものとは異なるだろう。
どんな悩みを抱えやすく、どう対処すべきなのか、正しく理解しておくことが大切だ。
(提供:株式会社ZUU)