2023年4月21日
2022年は、世界的にインフレが進行し中央銀行による金利の引き上げが相次いだ。これに伴い金融緩和政策を継続している日本円は、主要な外国通貨に対して軒並み下落し、歴史的な円安に見舞われた。日々変動する外為市場 (外国為替市場) は、どのような仕組みで動いているのだろうか。
本記事では、外為市場の仕組みや相場が動く理由などについて解説していく。
円や米ドルなど異なる国の通貨を売買する市場を外為市場 (外国為替市場) と呼ぶ。しかし外為市場に株式を売買する東京証券取引所のような特定の建物や場所があるわけではない。実際の為替取引の多くは、電話や電子機器を通じて行われている。
外為市場は、大別するとインターバンク市場と対顧客市場の2つだ。一般的にニュースなどで「〇日の外国為替市場」と報道される際は、インターバンク市場を指す。
インターバンク市場
インターバンク市場は、銀行や証券会社といった金融機関同士が直接、あるいは外為ブローカーを介して外国通貨を売買する市場のことだ。インターバンク市場では、100万通貨単位 (100万米ドル単位) で外国通貨が売買されている。為替レート (インターバンクレート) は、日々刻々と変化しているのが特徴だ。インターバンク市場に個人や輸出入業者は、参加できない。
対顧客市場
対顧客市場は、金融機関が個人や輸出入業者などを相手に外国通貨を売買する市場だ。イメージしやすい例でいえば、海外旅行の際に日本円を旅行先の国の通貨に両替する場面がこれにあたる。そのほかにも輸出入業者による貿易取引決済のための外貨調達や、日本円を外国通貨に換えて預金する個人の外貨預金なども対顧客市場の取引だ。
対顧客市場で用いられる為替レートは、刻々と変動するインターバンクレートとは異なり、原則1日1回、各金融機関が公表している。
外為市場は「24時間動き続けている市場」ともいわれるが、どういう意味なのだろうか。外為市場の世界では、東京、ニューヨーク、ロンドンの各外為市場が3大市場とされている。もっとも、それぞれの都市に東京外国為替市場、ニューヨーク外国為替市場、ロンドン外国為替市場という特定の売買の場があるわけではない。
一般的に東京時間の9~17時まで行われている外為取引の総称を東京外国為替市場と呼んでいる。日本時間を基準に考えると世界で一番早く動き出す外為市場は、日付変更線に近いニュージーランドのウェリントンだ。外為市場は、時間の経過とともに西へ動いていく。
都市名 | 主な取引時間の目安 |
---|---|
ウェリントン | 5~13時 |
シドニー | 7~15時 |
東京 | 9~17時 |
シンガポール | 10~18時 |
ドバイ | 15~23時 |
ロンドン | 18~翌2時 |
ニューヨーク | 21~翌6時 |
※標準時間 (冬時間)
ウェリントンからニューヨークまでを考えると、まさに為替相場は24時間動き続けているといえる。
為替相場は、何が要因で変動するのだろうか。
通貨の魅力
一般的に為替レートは、長期的に通貨を発行している国の国力を反映すると考えられている。そのため将来性が見込め、国力が強い国の通貨はそうではない国の通貨に対して価値が上昇する傾向だ。これは、通貨の魅力と言い換えてもいい。通貨の魅力を示す指標の一つが金利だ。資金は、金利の低い先から高い先へ移動する傾向があり、2022年の円安米ドル高は日米の金利差拡大が影響している。
一方、金利の水準は通貨を発行している国の信用度とも関係している。財政状況が悪化し信用度が下がっている国の金利は、上昇しやすい。
需給バランス
為替相場の変動は、需給バランスも大きく影響している。例えば日本から米国への輸出が増加し、日本企業が代金として受け取った米ドルが増え、日本円への換金需要が高まった場合は、米ドル売り円買いが進んで円高要因となるだろう。あるいは、日本への観光需要の高まりも円買いが進む要因となりえる。
さらにヘッジファンドといった投機筋が巨額の売買を仕掛け、為替相場が大きく変動するケースも少なくない。
ドルペッグ制・バスケット制についても知っておこう
自国の通貨の為替レートを特定の水準に固定する固定相場制 (ペッグ制) を導入している国もある。世界の基軸通貨と位置付けられる米ドルとのレートを一定水準に保つことを「ドルペッグ」と呼ぶ。
また、固定相場制 (ペッグ制) には、為替レートを複数の国の通貨と連動させる「通貨バスケット」という制度もある。通貨バスケットのメリットは、一つの国の通貨が急激に変動しても他の通貨で影響を緩和し為替相場を安定させやすい点だ。
2022年に入ってからの急激な円安の進行で、外貨預金を始める動きが増えている。外貨預金は、預けてから円安に振れた場合の為替差益や円預金より高い金利が期待できる点などがメリットだ。
これを機に外貨預金の前提となる外為市場の構造や仕組みについて理解を深め、基礎知識を身につけてみてはいかがだろうか。
(提供:株式会社ZUU)