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2021年12月7日

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年金運用、コロナで暴落した2020年相場はどうだったのか ?

年金運用、コロナで暴落した2020年相場はどうだったのか ?
(写真=pomupomu / stock.adobe.com)

2020年は、新型コロナウイルスの影響で一時的に株価が大きく下落する局面があった。肝を冷やした投資家も多かったのではないだろうか。

その後株価は回復しているが、私たちの年金を運用しているGPIFはどうだったのだろうか。 今回は2020年のGPIFの運用結果について解説しよう。

GPIFとは何か

GPIFは年金積立金管理運用独立行政法人の略称 (Government Pension Investment Fund) で、厚生年金保険事業及び国民年金事業の安定に資することを目的としている組織だ。

具体的には、厚生労働大臣から寄託された年金積立金の管理及び運用を行うとともに、その収益を年金特別会計に納付することにより、厚生年金保険事業及び国民年金事業の運営の安定に資することを目的としている。平たく言えば、私たちの年金を運用して増やしてくれている組織である。

運用資産額は2020年度第3四半期末時点で177兆7,030億円と非常に大きな金額を運用しており、「世界最大級の機関投資家」と呼ばれることもある。

GPIFの運用目標は、「長期的に積立金の実質的な運用利回り (積立金の運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの) 1.7%を最低限のリスクで確保すること」だ。つまり、GPIFの長期的な運用目標は「賃金上昇率+1.7%」である。

GPIFの運用状況

それでは、2020年のGPIFの運用状況を確認していこう。GPIFは年度単位で活動しているため、2019年度第4四半期 (2020年1~3月) と2020年度第1~3四半期 (2020年4~12月) を見ていく。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって国内外の株式市場が大幅に下落した2019年度第4四半期の運用結果は、期間収益率が−10.71%、期間収益額は−17兆7,072億円だった。一方、各国中央銀行の金融緩和や各国政府による財政出動もあり、株式相場が持ち直した2020年4~12月の運用結果は、期間収益率が+18.49%、期間収益額は+27兆7,634億円となった。

2019年末 (2019年第3四半期末) 時点で168兆9,897億円だった運用資産が、2020年末 (2020年度第3四半期末) 時点で177兆7,030億円まで増えているので、2020年の1年間で8兆7,133億円の収益を上げたことになる。年間収益率は単純計算でおよそ+5.16%だ。

この数字をどう思うかは人によるだろうが、GPIFの運用目標が「最低限のリスクで運用する」こと、2001年度から2020年度第3四半期までの収益率 (年率) が+3.37%であることを考えると、比較的良いパフォーマンスだったと言えるのではないだろうか。

2020年度第4四半期の結果はまだ発表されていないが、2020年4~12月の期間収益率が+18.49%、期間収益額が+27兆7,634億円であったこと、2021年1~3月が世界的に株高基調であったことを考えると、2020年度通年のパフォーマンスは極めて高くなるだろう。

良好な運用結果の要因

GPIFは、なぜこのようなパフォーマンスを出すことができたのだろうか。3つの視点から考察してみる。

まず挙げられるのが、世界的な株高だ。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、2020年2~3月は各国の株価が大きく下落したが、各国中央銀行の金融緩和や各国政府による財政出動に支えられ、日米の株価はコロナ前の水準を大きく上回っている。
しかし、いくら株高になっても株式を保有していなければ恩恵を受けることはできない。

2つ目の理由は、基本ポートフォリオ (基本となる資産構成割合) において株式の割合が高かったことだ。

2020年は年間を通じて、基本ポートフォリオの半分 (50%) が株式 (国内株式25%・外国株式25%) だった。実は2014年10月まで、基本ポートフォリオにおける株式の割合は24% (国内株式12%・外国株式12%) だった。なお、基本ポートフォリオはあくまで「基本」であり、実際の保有割合とは若干異なる。

3つ目の理由として挙げられるのが、株安のときに焦って売却せず、長期投資を貫いたことだ。株式の割合が高いと株高のときは良いが、2020年2~3月のような急落があると大きな損失を抱えてしまう。

ここで怖くなったり、焦ったりして株式資産を売却してしまうと、その後の反発局面で利益を得られない。一度現金化して、タイミングを見て買い戻すとしても、反発局面でうまく買い戻すのは簡単ではない。「手数料や税金を考えると、売却せずに保有し続けたほうが成績は良かった」となりかねない。

個人投資家でも真似しやすい資産割合

現在のGPIFの基本ポートフォリオは「国内債券25%・外国債券25%・国内株式25%・外国株式25%」とわかりやすく、個人投資家でも真似しやすい。

リスクをできる限り抑えて、長期投資に徹する姿勢にも学ぶべき点が多い。GPIFがいつでも正しいわけでないが、資産運用においては参考にすると良いだろう。

(提供:株式会社ZUU)

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