2021年10月5日
堅実な資産形成の第一歩は、最適なポートフォリオを見極めることだろう。しかし初心者は、つい「利回り (リターン) 」に目を奪われてしまう。
利回りが重要であることは言うまでもないが、「そのリターンを得るために、自分はどれだけのリスクを取っているのだろうか」「それは得られるリターンに見合うリスクなのだろうか」という視点も重要だ。
それらを定量的に把握できるのが「シャープレシオ」という指標だ。今回は、シャープレシオの概要や活用方法について見ていこう。
金融商品には「リスク」と「リターン」が存在する。リスクとリターンは表裏一体であり、基本的にはリスクが大きいほどリターンは大きく (ハイリスク・ハイリターン) 、リスクが小さいほどリターンは小さい (ローリスク・ローリターン) 。
例えば、とある株式に投資した場合に大きく元本割れする可能性があるが、逆に大きな利益を得られる可能性もある。一方、銀行預金で元本割れをすることはほとんどないが、現在は低金利なので利息はほとんど付かない。
「リスクとは損失が発生する可能性があること」と思われがちだが、資産運用においてリスクは「リターンの振れ幅」を意味する。つまり「リスクが大きい」は、「大きなリターンを得るかもしれないし、大きな損失が出るかもしれない」という意味だ。
リスクを怖がって何も投資を行わない状態では、リターンを得ることはできない。かといって、深い考察なしに過度なリスクを取った運用をしていると、何かの拍子で大きく資産を減らしてしまい、挽回が難しい状況に陥りかねない。資産運用においては、リスクとリターンのバランスをうまく取ることが重要だ。
では、どうすればリスクとリターンのバランスをうまく取れるのだろうか。その答えのひとつが「シャープレシオ」だ。
シャープレシオは株式や債券、投資信託といった資産クラスが同じ商品の運用成績を比較するための指標で、リターンだけに着目するのではなく、「そのリターンを得るために、どのくらいのリスクを取っているか」を計測するために用いる。シャープレシオは、以下の計算式で求められる。
シャープレシオ= (ポートフォリオのリターン−無リスク資産の収益率) / ポートフォリオの標準偏差
「無リスク資産」とはリスクをゼロと仮定した資産のことで、日本では国債や無担保コールレートなどを用いることが多い。「ポートフォリオのリターン」から「無リスク資産の収益率」を引く理由は、無リスク資産から得られるリターンよりも高いリターンを得られなければ、リスクを取って運用する意味がないからだ。
●どのようにシャープレシオを見ればよいか
シャープレシオの数値が大きいほど、「リスクの割にリターンが大きい」ということなので、効率よくリターンを上げている (=運用成績が優れている) といえる。例を挙げて考えてみよう。
無リスク資産 (国債・無担保コールレート) :0.1%
投資信託A:リターン12.1%、リスク15%
投資信託B:リターン6.1%、リスク5%
リターンだけを比較すると投資信託AはBの約2倍なので、Aのほうが優れていると感じるかもしれない。しかし、計算結果は以下のとおりだ。
<投資信託Aのシャープレシオ>
(12.1%−0.1%) / 15%=0.8
<投資信託Bのシャープレシオ>
(6.1%−0.1%) / 5%=1.2
「取っているリスクに対して、いかに効率的にリターンを上げているか」という観点では、実は投資信託Bのほうが優れているのだ。
●シャープレシオの注意点
シャープレシオを活用する際は、同様の資産に投資する商品同士を比較しよう。投資信託を比べても、そもそも投資先のリターンやリスクが異なるため、適切な比較にはならない。比較する期間や時期を揃えることもポイントだ。
運用成績がマイナスの場合は、リスクが大きいほどシャープレシオが大きくなることに注意しよう。また、シャープレシオは過去の運用成績に基づく指標なので、シャープレシオが高いからといって、今後も運用がうまくいくとは限らない。
「概念は理解したが、標準偏差のことはよくわからないし、自分で計算するのは難しい」と思った人もいるかもしれない。しかし、近年は投資信託検索サイトや金融機関サイトの詳細検索条件にシャープレシオが組み込まれているので、そのようなサイトを活用するとよいだろう。
ここまで、シャープレシオについて解説してきた。運用先を選ぶ際は「取っているリスクに対して、いかに効率的にリターンを稼いでいるか」という視点も取り入れて最適なポートフォリオを構築し、堅実に資産を形成していこう。
(提供:株式会社ZUU)