2020年2月21日
ドル円相場 (為替相場) の先行きを占う上で知っておきたいのが、過去のドル円相場の「心理的節目」だ。ここ数年のドル円相場はボックス圏内で推移している。年間の変動幅は年々縮小しており、2019年の年間変動幅は過去最低となった。それだけに、過去の節目を突破すると相場が大きく変動する可能性も指摘されている。ドル円相場を見る上で重要な節目をチェックしておきたい。
ドル円相場は、2012年末に誕生した第2次安倍内閣において掲げられた通称「アベノミクス」の経済政策をきっかけに円安に振れることになった。バブル崩壊後から長く続くディスインフレを打開することを目的として、2013年4月には日銀の異次元金融緩和による量的・質的金融緩和が始まったことも円安進行を後押しした。ドル円相場は、2012年9月の安値「77.13円」から2015年6月には高値「125円86銭」をつけた。2年7ヵ月で「48円72銭」もの円安に振れたことになる。
ただ、それ以降の5年間は膠着状態が続いている。2015年6月につけた高値「125円86銭」と2016年6月につけた安値「99円12銭」のボックス圏内の動きを続けており、年間の変動幅が年々縮小しつつある。そして、2019年は年間の変動幅が「7円96銭」と変動相場制以降で過去最低を記録した。
ドル円の年間変動幅
安値 | 高値 | 年間値幅 | |
---|---|---|---|
2015年 | 115円83銭 | 125円86銭 | 10円3銭 |
2016年 | 99円12銭 | 121円70銭 | 22円58銭 |
2017年 | 107円33銭 | 118円61銭 | 11円28銭 |
2018年 | 104円56銭 | 114円55銭 | 9円99銭 |
2019年 | 104円45銭 | 112円41銭 | 7円96銭 |
ドル円は大きく見て100円と125円のレンジ内の動きで推移しておりこの5年間においては年々変動幅が縮小して、いわゆる三角持ち合い (株価の上昇・下落の値幅が徐々に狭まっていき、チャートの形が三角形のようになる状態) に入っている。チャート的には、長い三角持ち合いからどちらかに抜けると、その方向にレンジが大きくシフトするというのが経験則だ。なぜ三角持ち合いが続いているのだろう。三角持ち合い放れとなる重要な節目について見ていく。
ドル円の変動幅が縮小している背景には以下の3ポイントが指摘されている。
1) 米ドルは基軸通貨であり、日本 (円) は世界一の対外純債権国であるため、市場が何らかの危機に見舞われた際、安全資産として米ドルも円もリスクオフで買われることが多く、同方向に動く傾向が強まっている。特にBREXITなどの材料によって対欧州通貨で米ドルと円が同方向に動く傾向が強まった。
2) 日本の産業構造が変化し、輸出企業の海外拠点での生産比重が上がり輸出が減少している。国内企業による実需のドル売り・円買い取引が減り、そのヘッジ取引の需要も減っているというわけだ。結果として相場を大きく動かす要因である実需の減少による変動率の低下で投機筋のドル円比率が低下した。
3) 教科書的には金利の高い国の通貨が買われ、低い国は売られる。ただ、世界的に超低金利が継続しており、金利が為替に与える影響が弱まっているという指摘もある。特に日銀は政策変更の手段が限定的であり、円に日銀の金融政策に関連した動きが少ない。
こうしたことから、ドル円は今年も105円から110円の狭いレンジ内での動きが本命視されている。
ただ、三角持ち合いはいつか放れるのが相場の常だ。放れる可能性のある重要な節目をチェックしておきたい。
●円高方向では「104円」が重要な節目
リスクオフによる急激な円高は、以下のようにいずれも104円台で止まっている。
仮に104円の節目を抜く円高が進行した場合、次の心理的節目は「100円」、さらに抜けると2016年6月の「99円12銭」まで大きな節目はない。
●円安方向では「115円手前」が重要な節目
円安の節目は以下のようにいずれも115円手前で切り返している。
もし115円の節目を抜く円安が進行する場合、次は2016年12月のトランプラリー時につけた118円69銭が大きな節目となる可能性がある。
円高のトリガーとなりうるのは、世界景気下落、米中貿易摩擦の激化、日米貿易摩擦、米大統領選でのトランプ大統領落選、FRBの利下げ、地政学リスクなど。円安のトリガーとなるのは、世界景気回復、世界株高、FRBの利上げが考えられよう。これらのイベントによってドル円相場がどの節目まで進行するのか参考にしていただきたい。
(提供:株式会社ZUU)
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