2020年10月30日
相場の将来を正確に言い当てることは難しい。その一方で、相場には4つのサイクルが存在し、その循環を想定することで大きなロスを回避できる可能性は大いにある。今回は、「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」のサイクルとそれを利用した投資手法について解説する。
株式相場は、景気や企業業績に連動しているため実際の景気動向よりも3~6ヵ月程度先行して動くことが多い。だからこそ「不景気の株高」が起こりがちだ。たとえば、新型コロナウイルスで世界景気は過去最大級に落ちこんだ。
それにもかかわらず、株価の戻りが早かったのは、世界の金融当局が景気の落ち込みを防ぐために過去最大級の金融緩和と資金供給を行ったことが要因の一つといえよう。これにより、市場は想定よりも経済の回復が早くなると判断し、資金供給の余剰分が株式市場に流れ込んだことで株価を押し上げたと考えられる。
株式市場はサイクルによって、注目される要因や、注目されるセクターも変わってくる。だからこそ、相場のサイクルを知り、次の相場の準備しておくことで状況に応じた投資先の選択やポジションの決定が容易となる。その結果、思わぬ失敗を回避できる可能性は高まるだろう。
前述のとおり、相場には4つのサイクルがある。「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」だ。このサイクルは繰り返されており、株式相場の動向を確認する上でも役に立つ。ここでは、それぞれの特徴と注目されるセクターについて解説する。
●金融相場
金余りを背景に上げる相場が「金融相場」である。不景気で企業業績が悪化すると株価は下がるため、政府は景気と株価を刺激するために景気対策等を講じ、中央銀行は政策金利を下げるなどの金融緩和を行う。そうすることで、市中に流通する資金量を増やして金余り状態を作る。金余りの資金は、貸し出しとなって設備投資に回るか、余剰資金として株式市場に流れ込むことにより「不景気の株高」を生み出すことになる。
金融相場では、金利、為替などのマクロ要因がミクロ要因よりも重視され、企業業績回復期待で先行して株価が上がる。業績の回復は株価に対して遅れるため、株価指標であるPERやPBRが割高であっても買われることが多い。
買われるセクターは、景気敏感セクターや不動産など金利低下メリットを享受する企業が挙げられる。また、業績が伴わない相場のためバイオセクターなども人気になりやすい傾向がある。
●業績相場
景気や企業業績の上昇によって買われる相場のことを「業績相場」とよぶ。「金融相場」の次のサイクルでは、金融緩和の効果で企業業績が回復しはじめる。「業績相場」では、マクロ要因よりも個別銘柄の業績等のミクロ要因を背景に株価が上昇することが多い。
「金融相場」で割高だった株価指標も企業業績の回復によって割高感が薄れていく。買われるセクターや銘柄は、業績が景気拡大でメリットを受ける企業などが中心となる。
●逆金融相場
「業績相場」が拡大しすぎると、金融引き締めのサイクルが来る。これを「逆金融相場」という。政府や中央銀行の大事な役割の一つは、景気が拡大しすぎてインフレになることを抑制し、物価を安定させることだ。そのため、景気拡大時は金融引き締めによって金利が高めに設定される。
金利が上昇すると、投資家の資金は株式市場から債券など固定金利の金融商品に流れるのが一般的だ。「逆金融相場」では、株価は下降方向に調整をしはじめる。注目されるセクターは、金利上昇でも業績に影響の出にくい無借金企業などバランスシートが健全な企業等が挙げられるだろう。
●逆業績相場
金融引き締めにより景気が下降し、企業業績が悪化して株価が下がるサイクルの後半を「逆業績相場」という。注目されるセクターは、景気と業績の連動性が低い医薬品やインフラ、生活必需品といったディフェンシブセクターだ。また、金融セクターのように高金利が収益増に繋がるセクターも注目される。
相場は景気と金利のサイクルで4つの相場で循環することが多いが、波の大きさやサイクルの長さは様々だ。たとえば、米国では2009年に始まった景気拡大局面は2020年まで続き過去最長となった。その間、低金利・低インフレで、企業業績が安定的に拡大するゴルディロックス (適温) 相場とよばれる業績相場で上昇局面が長く続いた。
相場のサイクルが変わるきっかけになるのは、中央銀行の金融政策だ。だからこそ、金融政策決定会合や金融政策に大きな影響を与える雇用統計などの重要経済指標が重視される。注目する経済指標やセクターは、今の相場がどの局面にあるのかを意識することによって変わってくる。相場によっては通用する投資手法、通用しない投資手法があるため、活用する際には注意が必要だ。
(提供:株式会社ZUU)