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2020年10月9日

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2020年10月1日から変更になった酒税、今までと何が違う ?

2020年10月1日から変更になった酒税、今までと何が違う ?
(写真=New Africa / stock.adobe.com)

税制改正により2020年10月からお酒の税金のルールが変わりました。どのように変わっていくのか、今後の業界の動向も含め、変更点や背景を一緒に見ていきましょう。

2020年10月からお酒にかかる税金のルールが変更に

2017年度の税制改正で酒税法の一部が変わり、2020年10月以降、お酒のルールは次のようになります。

●3段階の変更を経て税率を一本化

現在、ビールなどの発泡系のお酒 (発泡性酒類) はビール・発泡酒・新ジャンル・チューハイ等に分かれおり、それぞれ税率が異なります。

2020年10月以降はビールの税率が下がり、新ジャンルの税率が上がります。350mlあたりで比較すると、ビールは77円から70円に、新ジャンルは28円から37.8円になります。

なお、この税率変更は今回限りではなく、今後2023年10月、2026年10月にも再び税率が変わります。最終的に2026年10月にはビール・発泡酒・新ジャンルは同一の税率になるのです。

●発泡酒と新ジャンルのビール系飲料は発泡酒に統合

これまで発泡性酒類はビール・発泡酒・その他の発泡酒類 (新ジャンル、チューハイ等) の3つに分かれていました。これが2023年10月以降、発泡酒と新ジャンルが統一され、ビール・発泡酒・その他の発泡酒類 (チューハイ等) の3つとなります。

なお、前述のとおり2026年10月にはビールと発泡酒は「発泡性酒類」に一本化されます。つまり、炭酸が出るタイプのお酒は「発泡性酒類」か「チューハイ等」になるわけです。

●清酒・果実酒にも同様の変更

変更になるのは発泡系のお酒だけではありません。日本酒などの清酒やワインなどの果実酒のルールも改正されます。こちらは2020年10月と2023年10月に税率変更が行われ、清酒はより安く、果実酒はより高くなります。なお、この2つも最終的には同じ税率が適用されます。

また、2023年には清酒・果実酒いずれも「醸造酒類」という定義で統一されます。つまり、日本酒もワインも同じ「醸造酒類」の区分になるわけです。

「第三のビール」に割高感 ? お酒の税金はどう変わるのか ?

ではここから具体的にお酒の税金がどう変わっていくのかを見ていきましょう。さきほど3段階で税率が変更されるとお伝えしました。2020年9月30日以前のお酒の税金から見ると、次のように変動していきます。

●税金が安くなるお酒

税金が安くなるお酒はビールと清酒です。350mlあたりの税金は、ビールが「77円→70円→63.5円→54.25円」に、清酒が「42円→38.5円→35円」と、いずれも段階的に減税されます。

●税金が高くなるお酒

税金が高くなるお酒は発泡酒・新ジャンル、果実酒です。350mlあたりの税金は、発泡酒が2026年10月に「46.99円→54.25円」になりますが、それ以外は段階的に増税されます。新ジャンルの発泡性酒類は「28円→37.8円→46.99円→54.25円」、果実酒は「28円→31.5円→35円」となります。

●「第三のビール」は一気に割高に

第三のビールとは、原料に麦芽を使わないものや発泡酒に別途アルコール飲料を混ぜたもので、ビール・発泡酒のどちらにも分類されないものをいいます。「ビールは高い、でもビールみたいなお酒が飲みたい」という消費者の要望に応えるべく、企業が努力して開発した安価なお酒でしたが、今回の税制改正で第三のビールは割高になります。この種のお酒の愛好家には痛手となるかもしれません。

ビールと税金は時代によって変わってきた

お酒は税金と切っても切り離せない関係です。「嗜好性の高いお酒を買って消費するだけのお金があるなら、税金も払えるだろう」という観点から、お酒は課税の対象とされてきました。特にビールは酒税の主軸となっています。

札幌国税局が2019年12月に発表したデータによれば、2017年における全国の成人1人あたりのお酒の消費量はビールが最も高く、24.4リットルです。

●ビールの税金はどれくらいかかっていたのか

1901年、戦費の財源確保を理由に麦酒税 (ビールの税金) が始まったことにより、酒税は地租 (土地への課税) を抜いてもっとも大きな国税となりました。

当時「舶来からの高級酒」だったビールは消費量の増加に伴い、徐々に庶民の酒になりましたが、ビールの税率はその流れに反するかのように昭和から平成にかけ段階的に引き上げられました。1965年、ビール1キロリットル当たりの税金は9万5000円でしたが、2020年8月現在では22万円と高い税率になっています。

この高税率も影響し、ビールの税金は酒税の収入で大きな割合を占めています。2014年の酒税課税額を見ると、ビールの税収は5,957億円と全体の44.9%もあります。こうしたこともあり、ビールをはじめとするお酒の税金は「財政の玉手箱」と呼ばれてきたのです。

●なぜお酒の税金が変わるのか

ではなぜ今回、ビールにかかる税金は下がるのでしょうか。理由の一つは税収の確保です。ビールよりも税率が低いお酒は小売価格も安く、消費者にはビールよりも好まれる傾向にあります。税率の低いお酒の消費量が増えれば酒税の収入も減るため、これを防ぐ狙いです。

今回の改正で発泡酒や新ジャンルの消費量は減ることが予想される一方、これまで敬遠されていたビールの消費量が増えることが期待されています。実際、今年に入ってから大手ビールメーカー各社は既存の商品である自社ビールや小さな醸造所で開発するクラフトビールの販売を強化するようになりました。

酒税の改正やビール業界の動向を踏まえながらお酒を楽しむと、いつもと違った味わい方ができるかもしれません。

(提供:株式会社ZUU)

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