2019年11月28日
世界有数のリサーチ&アドバイザリ企業・米ガートナーが発表する「ハイプ・サイクル」は世界のビジネスリーダーたちが直面する課題の解決を目指すとともに、ビジネスの先行きを見通すのにも参考にしているレポートである。2019年版の内容と投資への活用方法について考えていく。
ハイプ・サイクルは評価の対象としたテクノロジを「黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「生産の安定期」の5段階に分けて分析している。この中で特に「黎明期」にリストアップされたテクノロジには、ポテンシャルが秘められており、特に注目が集まる傾向がある。
技術革新のスピードとともにトレンドの移り変わりも激しく、2018年版のハイプ・サイクルと比較することで新たなトレンドが読み取れる。
2019年版には、軽貨物配送ドローン、自律型航空機、拡張インテリジェンス、バイオテクノロジ (培養組織や人工組織) 、ナノスケール3Dプリンティングなどが黎明期のテクノロジとしてリストアップされている。新たにピックアップされた黎明期のテクノロジをトレンド別に整理すると次のようになる。
●センシングとモビリティ
軽貨物配送ドローンと自律型航空機は、「センシングとモビリティ」の分野に分類される。センシングテクノロジはIoTの中心を担う要素であり、さらにAIとの融合により、マシンが周辺環境を認識する能力も向上し、モノの移動と操作を可能にし、ドローンで軽貨物を配送するといったサービスの実現に繋がっている。
●オーグメンテッド・ヒューマン
オーグメンテッド・ヒューマンは人間拡張工学とも呼ばれ、人間がもともと持っている認識能力や身体能力を拡張させるテクノロジを開拓していくことを意味する。例えば、人工装具を身につけることによって超人的な力が発揮できる、腕が伸びる、空が飛べるなど、SF映画やマンガのような世界が将来的に実現するのかもしれない。
人間の直観力の増幅により、分析能力や意思決定能力を強化する拡張インテリジェンスに加え、バイオテクノロジの培養組織や人工組織もこの部類に属する。
●ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション
ナノスケール3Dプリンティングは、「ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション」に分けられ、先進テクノロジ・トレンドの1つに挙げられている。
これらの「センシングとモビリティ」「オーグメンテッド・ヒューマン」「ポストクラシカルなコンピューティングとコミュニケーション」のテクノロジは、2019年のハイプ・サイクルでトレンドとしても注目を集めている。
ハイプ・サイクルで取り上げられたテクノロジは、次世代のビジネスにとって欠かせない存在となる可能性があり、その動向は金融機関のアナリストも注目している。従って、ハイプ・サイクルで紹介された技術を提供するメーカーや企業の株が、将来的に上昇する可能性もある。
しかし、黎明期で紹介されたからといって、必ずしもそのテクノロジが順風満帆に浸透していくというわけではない。ハイプ・サイクルでは、黎明期の後に「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓蒙活動期」「生産性の安定期」といったステージが設定されており、潜在性を秘めていても、最終段階となる生産性の安定期までの道のりは決して容易ではない。
さらに、技術開発が進んで実用化され、主流となるまでに要する時間にも注意が必要である。テクノロジによってはその期間が10年以上にも及ぶこともあり、関連する企業の株式を保有するのであれば、長期投資のスタンスが求められるだろう。
上記で紹介したテクノロジのうち、例えば軽貨物配送ドローンは、主流の採用までに5~10年の期間を要すると見込まれている。最も短い期間が予測されているのが拡張インテリジェンスで2~5年とされている。ハイプ・サイクルで紹介されたからといって、一目散に飛びついて関連株を購入し短期的な利益を求めるのではなく、余裕資金を活用しながら長期スタンスで構えるのが賢明であろう。
(提供:株式会社ZUU)