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2019年6月14日

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消費税増税で知っておきたい「軽減税率」の基礎知識

消費税増税で知っておきたい「軽減税率」の基礎知識
(写真=Olivier Le Moal / Shutterstock.com)

2019年10月に消費税率が現在の8%から10%に引き上げられる予定だ。2014年に5%から8%に引き上げた時に消費低迷が長引いたことから、今回は景気の減速を回避するために景気対策や所得による不公平感を減少するための「軽減税率」が導入される予定となっている。新聞や経済誌等でも報じられる機会が増え、関心が高まりつつある軽減税率の具体的な概要や適用される商品の対象などの基礎知識を紹介しよう。

軽減税率が設定される背景

現在、日本では基本的にすべての商品に一律で8%の消費税が課されている。少子化が進み、社会保障費の増大に対応するため、消費税を上げることで財源を確保せざるを得ない状況であり、1989年に初の消費税3%を導入し、1997年に5%に増税、2014年に8%に増税してきた。2019年の消費税増税にあたり、一部商品に関しては税率を8%に据え置きし、標準税率10%より低い設定とする軽減税率が初めて導入される。

所得税や贈与税といった税金は超過累進課税制度となっており、収入や贈与財産が増えれば増えるほど税率も高くなる仕組みが取られている一方、住民税や消費税は一律であり、結果として低所得者に対する消費税の比重が重くなる逆累積課税が取られていることが指摘されている。そのため、軽減税率は生活必需品などを対象にすることで、低所得者の税負担を軽減することを目的としている。

英国やフランスでは、日本の消費税に相当する付加価値税の標準税率が20%と高く設定されているが、食品などには軽減税率が適用されている。英国では一部を除いてゼロ%、フランスでは飲食物に対しては5.5%と、生活必需品への課税が低く抑えられている。現時点で考えられている日本の軽減税率はそこまでの格差をつけられていないが、新たな仕組みに向けて進み出そうとしている。

対象範囲は ? 複雑なポイントを身近な例で解説

対象品目としては、飲食料品と新聞が挙げられている。ただし、飲食料品でも「生鮮食品」と「加工食品」は対象だが、「酒類」や「外食」などは生活必需品でないとして除外されている。

対象範囲は複雑だ。例えば、同じハンバーガーショップの利用でも、店内で食べると「外食」扱いで消費税は10%、持ち帰ると「加工食品」扱いで8%になる。ほかにも、コンビニエンスストアのイートインコーナーで食べることを前提にした食品は「外食」扱いで10%、弁当や総菜をテイクアウトする場合には「加工食品」扱いで8%になる。あるいは、お蕎麦屋さんの店内で蕎麦を食べれば「外食」で10%だが、出前にすれば「加工食品」の配達なので8%となる。

新聞については、週2回以上発行され、政治、経済、社会、文化などの一般社会的事実を掲載していることと定期購読契約していることを前提条件に8%の軽減税率となる。週1回のみ発行される新聞は10%の標準税率で、駅で買う新聞は定期契約でないので10%、新聞の電子版は今のままでは「新聞」扱いされないので10%になるようだ。

コンビニでコーヒーをテイクアウトするつもりで買えば8%だが、もし買った後にイートインコーナーで座って飲むケースはどのように区別すればよいのだろうか。ビール付きランチセットをテイクアウトするとどうなるのだろう。このように本稿執筆時点の2018年12月段階では、まだまだ検討中の案件も多いようだ。導入当初は、消費者は値段が判りづらくて混乱する可能性が高いだろう。

軽減税率の導入を経済的な視点で見てみると ?

同じ飲食品でもイートインとテイクアウトの値段が異なるのであれば、税率が低いテイクアウトが主流になる可能性もあり、消費スタイルにも影響を及ぼしそうだ。

消費者以上に軽減税率の導入による影響が大きいと考えられるのが小売店や飲食店などの事業者サイドだろう。新税制対応のレジ導入は必須だろうし、レジを扱うスタッフの教育などの準備も必要だ。商品管理や売上の申告や納税も複雑化して、中小の事業者にはコスト増要因となるだろう。

増税による景気減退を避けるために、景気対策も同時に施行される。幼児教育・保育の無償化、プレミアム商品券、キャッシュレス決済のポイント還元、自動車・住宅購入の際の給付金や減税などが原案として上がっている。キャッシュレス決済と軽減税率で消費や決済の流れが大きく変わるかもしれない。

(提供:株式会社ZUU)

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