2019年2月25日
税制は、国が置かれている状況や政府の方針により毎年見直される。2018年には配偶者控除の改正があり、2019年10月には消費税増税が予定されているなど、近年「個人の所得」に影響を及ぼす税制改正が続いている。2020年以降、個人の所得に影響を及ぼす税制改正には、どのようなものがあるのだろうか。
基礎控除は、14種類ある所得控除の1つで、誰でも適用することができる。基礎控除額は一律38万円であったが、改正後は合計所得金額が2,400万円以下である場合、10万円引き上げられて48万円となる。合計所得金額が2,400万円超になると段階的に引き下げられ、2,500万円を超えると控除額はゼロとなる。税負担は、合計所得金額が2,400万円超の場合に増えることとなる。
合計所得 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
2,400万円以下 | 38万円 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 38万円 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 38万円 | 16万円 |
2,500万円超 | 38万円 | 0円 |
給与所得は、給与等の収入から勤務に対する必要経費の概算として、給与所得控除額を差し引いて算出する。改正後、給与所得控除額は一律10万円引き下げられる。とは言え、前述のとおり基礎控除額は10万円引き上がる。よって給与収入が850万円以下の場合、課税所得金額はプラスマイナスゼロとなり改正後も税負担は変わらない。
一方、給与収入が850万円超の場合は、税負担が増えることになる。給与所得控除の上限額が適用される給与収入が1,000万円超から850万円超に引き下げられ、上限額も220万円から195万円に引き下げられるからだ。ただし、23歳未満の者を扶養する子育て世帯や、特別障害者である扶養親族等を有する介護世帯等 (以下、便宜上「介護世帯」という。) は、改正後も税負担は変わらないような調整がある。
給与収入金額 | 給与所得控除額(改正前) | 給与所得控除額(改正後) | |
---|---|---|---|
子育て・介護世帯 以外 |
子育て・介護世帯 | ||
162万5千円以下 | 65万円 | 55万円 | 55万円 |
162万5千円超180万円以下 | 収入×40% | 収入×40%-10万円 | 収入×40%-10万円 |
180万円超360万円以下 | 収入×30%+18万円 | 収入×30%+8万円 | 収入×30%+8万円 |
360万円超660万円以下 | 収入×20%+54万円 | 収入×20%+44万円 | 収入×20%+44万円 |
660万円超850万円以下 | 収入×10%+120万円 | 収入×10%+110万円 | 収入×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 | 195万円+(収入金額-850万円)×10% | |
1,000万円超 | 220万円 | 210万円 |
公的年金等 (例:老齢年金) は、雑所得として課税対象になる。雑所得は、公的年金等の場合、公的年金等の収入金額から必要経費の概算として、公的年金等控除額を差し引いて算出する。改正により、公的年金等控除額は原則として10万円引き下げられる。また、公的年金等控除額には上限がなかったが、改正後は公的年金等の収入が1,000万円超の場合、195万5千円が上限となる。
さらに現状の公的年金等控除額は、公的年金等の収入のみで判定するが、改正後はそれ以外の収入と併せて判定する。公的年金等以外の収入が1,000万円以下である場合、公的年金等控除額は10万円引き下げられる。だが、前述のとおり基礎控除額は10万円引き上がるため、公的年金等以外の収入が1,000万円以下である場合、課税所得はプラスマイナスゼロとなり改正後も税負担は変わらない。
公的年金等の収入が1,000万円超である場合や公的年金等以外の収入が1,000万円超である場合、公的年金等控除額の引下げ額は20万円または30万円となるため、税負担が増える。
個人事業や不動産事業で収入を得ている場合などは、青色申告を利用できる。青色申告を利用するための主な要件は、事前に申請書を提出することや複式簿記で記帳することなどである。
青色申告を利用すると、現状では青色申告特別控除として最大65万円を所得から控除することができる。改正後は、青色申告特別控除額が10万円引き下げられ最大55万円となる。ただしe-Taxにより電子申告をするなどの要件を満たすと現状と同じく最大65万円を控除することが可能となる。
配偶者控除や扶養控除は、所得控除の1つである。現状、配偶者控除や扶養控除を適用するためには、配偶者や被扶養者の合計所得金額が38万円以下であることなどが要件となっている。改正後は、合計所得金額の要件が48万円以下と現状より10万円引き上げられる。
2020年に予定されている「個人の所得」に影響する税制改正は、高所得者ほど税負担が増えてしまう仕組みだ。税負担が増えるとはいえ、収入そのものが増えれば当然「個人の所得」も増える。2020年以降、も現状通りに配偶者控除や扶養控除などを適用することができるのか、家庭内でそれぞれの所得の確認をして税額がどのくらい変わるのか、事前に確認しておくことで、心の準備をしておきたいものだ。
(提供:株式会社ZUU)