2018年7月11日
世界で最も取引に利用され、各国通貨の価値の基準として用いられる通貨といえば「米ドル」だ。米ドルは基軸通貨とも呼ばれ、世界中の輸出入取引で利用されている。それでは、世界における主要通貨というとどれをさすのだろうか ? また、どこまでを主要通貨と呼んでいるのだろうか。
そして、世界各国の通貨はJPYやUSDというような表記が行われることが多い。なぜこのような表記を行うのだろうか。分かっているようで実は知らない主要通貨や通貨の記載方法について解説していこう。
世界の主要通貨と聞けば、どのような通貨を思い浮かべるだろうか。米ドル、ユーロ、日本円、豪ドル、英ポンド、NZドルなどを思い浮かべる人もいることだろう。しかし、果たして、これらの通貨は主要通貨といえるのだろうか。
どの通貨までを主要通貨というかは、どう定義するかでも異なってくる。例えば国内総生産 (GDP) を基準にするのか、外貨準備として採用する国が多いかどうか、貿易に使われるケースが多いのかなど、様々な基準があるだろう。
そこで、1つの見方として、国際通貨基金 (以下、IMF) のSDR (特別引出権) で採用されている通貨を主要通貨として考えたい。SDRとは、IMFが1969年に創設した国際準備資産のことであり、融資を行う時の単位である。IMF加盟国は出資割合に応じて融資を受ける権利が割り当てられており、国際収支が悪化した場合には自国が持つSDRを他の加盟国に渡すことで外貨を手に入れることができる仕組みだ。
このSDRには、5つの通貨が採用されている。米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドである。人民元は2016年10月から加わった。
IMFでは、金融危機などにより加盟国が資金不足に陥った場合に、このSDRをもとに加盟国間の資金のやりとりに活用できる体制を敷いている。いわばSDRは万が一の時の対策方法として用いられており、そのための通貨として米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドが活用されているのだ。まさに世界における主要通貨で構成されているといってよいだろう。こう考えると、5つの通貨、米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英ポンドが主要通貨といえる。
これら主要通貨は、世界各国における取引でも利用されており、利用され信頼されるほど国としての存在感も増すことになる。特に、2016年10月から人民元が採用されたことにより、今後人民元による取引が増加する可能性がある。ドイツ連邦銀行では外貨準備に人民元を加えるなど、足下でも人民元に対する注目度が高まってきている。
これに対して、日本円や英ポンドのSDRにおける比率が低下している。将来的な話となるが、今後人民元の存在感が強まり、日本円や英ポンドの存在感が相対的に低下する恐れも捨てきれない。また、世界における基軸通貨は今のところ米ドルが地位を守っているが、今後の経済動向次第では、米ドルに並ぶ通貨として人民元が台頭してくる可能性もある。
さて、話は変わってこうした外貨表記を行う時に、日本円はJPYと表記されている様子を見たことがある人もいることだろう。これはなぜだろうか。実はISO4217により、各国における通貨を3文字で記述するための国際規格が設けられているのが前提としてある。これにより、どこの国の通貨か一目でわかるようにしている。
たとえば、JPYを例にとって考えてみよう。
3桁の英文字コードの最初の2文字は国のコードを表している。JP=日本 (JP) だと言う意味だ。そして、最後の1文字は通貨の名称の最初の1文字目になる。Y=円 (Yen) ということになる。これに沿って考えるとUSDはUS (米国) のD (dollor) ということが分かるだろう。ただし、EUR (ユーロ) のようにこの構造とは異なる場合もある。
日本にいる限り、外貨を利用する機会はなかなかないかもしれないが、世界を見渡せば様々なところで米ドルは利用されている。将来的には、米ドル、ユーロ、人民元の地位が今よりも大きなものとなる可能性がある。戦前には英ポンドが基軸通貨であったが、今やその地位は大きく低下しているといえるだろう。今後も各通貨の地位・シェアは十分変動する可能性がある。どの国の経済力が強くなりそうかという観点は外貨投資にも十分に役立てられるのではないだろうか。
(提供:株式会社ZUU)