2016年11月29日
投資においては、専門知識と同じくらいに、「メンタル」のコンディショニングが重要というのはご存知だろうか。いくら投資についての知識が豊富で、経験も十分に積んでいる人でも、相場が荒れたときに冷静な判断ができずに失敗してしまうことは往々にしてあり得る。ここでは、投資で失敗しないために知っておきたい4つの「投資心理学」を紹介しよう。
「プロスペクト理論」は、行動経済学でノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授らによって提唱された理論で、不確実性下の意思決定において人間の心理がどのように働くのかを論じたものだ。
この理論を投資に当てはめてみると、儲けたときの満足感と、損をしたときの不快感を比較した場合、同じ金額であっても、儲けたときの喜びよりも損をしたときの不快感のほうが大きく感じられるということになる。
例えば、利益を得たい心理がはたらく一方で、損失を招くリスクを避ける心理がはたらき、それがかえって大きなリスクを背負うことに繋がる現象が起こる。具体的に言うと、株価が下落したときに、反発する客観的な根拠もないのに、損失が確定してしまうことへの抵抗感からその株を塩漬けにしたり、ほんの少し株価が上がっただけで、下落による利益の目減りを恐れてすぐに利益確定売りしてしまう、といったようなケースがそれに該当する。
「認知バイアス」は、現実を直視できなくなる心の動きのことだ。そのなかでも、常に正常な判断が求められる投資に悪影響を及ぼすのが、「正常性バイアス」と「自信過剰バイアス」と呼ばれる2つの心の動きだ。
正常性バイアスとは、現実を過小評価し、自分の認めたくない情報を無視することによって、「まだまだ大丈夫」とか「自分だけは大丈夫」などと考えること。投資の場でそれがはたらくと、損切りのタイミングを失うことに繋がり兼ねない。
自信過剰バイアスは、具体的な根拠もないのに自分の能力や判断に自信を持ってしまうことだ。投資の場面では、収益を上げたときの成功体験ばかりが記憶に残り、「自分には特別な能力がある。」などと思い込んでいるような状態が、これに該当するだろう。
認知バイアスの一種だが、「アンカリング」は項目を分けて紹介したい。「アンカー」とは、船の漂流を防止する「いかり」を意味する。このことから想像がつくように、判断の際に自分が知っている物事や数字にこだわってしまう傾向を指している。
投資の際には、最初に経験した売買がハイリスクだった場合、その後の売買のリスクが相対的に低く見えてしまって、リスクを正しく判断できない場合などがその例だ。株式投資においては過去の高値を意識しすぎるあまり、さらに値上がりをすると思ってしまう「高値覚え」や、さらに値下がりをすると思ってしまう「安値覚え」なども、アンカリングが作用した結果だと言える。
人の記憶には、好みとは関係なく、印象深いものや目立つものが残りやすいという現象が起こる。これを、最初の発見者である心理学者で小児科医のヘドウィク・フォン・レストルフにちなんで「フォン・レストルフ効果」と呼んでいる。
株式投資では、新規のIPO銘柄や最近大きな値動きを見せている銘柄など、大きな話題となった銘柄が記憶に残りやすい。そうした記憶が、銘柄の正しい選択判断を誤らせてしまっていないかどうか、十分な注意を払っておく必要がある。
今回紹介した4つの「投資心理学」以外にも、人の心にはさまざまな「心理的な罠」が潜んでいる。人間の心の動きにはクセがあり、それらを把握しておくことで、投資の際に冷静な判断ができるよう自身をコントロールしていただきたい。
(提供:株式会社ZUU)