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2016年8月23日

訪日外国人2,000万人時代 話題の民泊は救世主となるのか ?

民泊
(写真=PIXTA)

急増する訪日外国人数、民泊全面解禁か ?

日本政府観光局が4月20日に発表した「訪日外国人観光客数」の推計によると、2015年度は前年度比45.6%増の2,135万9,000人となり、初めて2,000万人の大台を突破したもようだ。

年度ベースではない2015年の訪日外国人数でも1,973万7,400人となり、3年連続で過去最高を記録している。出国日本人数を45年ぶりに上回るなど、観光立国日本が現実味を帯びてきた。5月18日に発表された2016年4月の訪日外国人数でも、前年同月比18.0%増の208万2,000人と過去最高に達している。

政府は、2020年までに訪日外国人数4,000万人、2030年には6,000万人を目標とすると宣言した。

そんな中で、注目されているのが「民泊」だ。一般住宅に旅行客を有料で宿泊させられるビジネスで、急増する観光客数に対応できない宿泊施設をカバーする存在として注目を集めている。そんな民泊に対して政府は、簡単な手続きを済ませれば誰でも旅館業法上の許可なしで住宅 (戸建住宅、共同住宅等) の全部又は一部を活用して宿泊サービスを提供できる規制緩和を実施する方針を打ち出している。現時点では営業日数の上限を180日以内にするなどの規制はあるが、実現すれば民泊営業が全面的に解禁となる。

規制緩和の一環として全面解禁される民泊ビジネス ?

民泊は、インターネットの普及によって、米民泊業界大手の「Airbnb」を中心に世界的に広がっている新しいタイプのビジネスだ。

2016年4月に旅館業法を改正して、カプセルホテルなどと同様の「簡易宿泊所」の位置づけで、それまでの違法状態から正式に営業ができるビジネス業態へと転換した。とはいえ、あくまでも旅館業法の規制下に入るため、さまざまな規制があるのが実情だ。京都新聞によれば、京都市の民泊のうち許可を得て営業しているものが7%にすぎないとする京都市の調査結果を報じており、Airbnbなどの仲介業者を通した民泊の大半は現在でも実質的に違法状態だとみられている。

そんな状況のなかで、政府が進める規制緩和の一環として民泊営業の全面解禁が浮上してきたわけだが、具体的には政府の「規制改革会議」がまとめた規制緩和策80項目の中のひとつに過ぎない。規制改革会議は、日本の岩盤規制突破のドリル役を担ってさまざまな方面の規制緩和を検討してきたわけだが、民泊解禁は確かに大きなインパクトをもたらしそうだ。

同会議が発表した民泊解禁の概要は今後、各省庁と細部の詰め合わせ作業が残っているものの、2017年度の通常国会に法案が提出される予定になっている。マンションや戸建て住宅の所有者に関する規定を緩めて、インターネットを使って所轄の都道府県に必要情報を届け出れば、誰でも民泊に参入できるようにする予定だ。

本来、旅行業法では帳場の設置をはじめとして細かな規制が数多く設定されている。規制緩和によって、仲介業者名やマイナンバーなどの情報を提出するだけで、民泊ビジネスが可能になる予定だ。さらに、旅館業法では顧客が伝染病などに感染しているといった特殊な事情がない限りは宿泊を断れないが、規制改革後の民泊では宿泊を拒否することもできる。

その反面、民泊ビジネスで営業できる日数に制限を課すなど、一定の規制も予定されている。具体的には、英国の年間90日以内、オランダの同60日以内など、海外のケースを参考に調整することになりそうだが、いまのところ年間180日以下になる予定だ。

もっとも、日数制限に対しては投資の回収が困難になるなどとして、反対する声も多い。今後の調整によっては、日数制限そのものがなくなる可能性もある。いずれにしても、訪日旅行者2020年には年間4,000万人、2030年には年間6,000万人を目指す日本政府にとって、民泊ビジネスの全面解禁は宿泊施設の不足を解消するものとして大きな効果が期待できる。加えて、経済全体でも「構造改革」の目玉として大きな経済効果が期待できる。

実際、すでに大手企業数社が民泊ビジネス業界への参加を決めている。たとえば、Tポイントで知られるTSUTAYAの運営主体カルチュア・コンビニエンス・クラブ (CCC) は、米民泊大手のAirbnbとの提携を発表している。警備大手の綜合警備保障 (ALSOK) も、民泊運営を支援するサービスを始めている。近隣からの苦情対応や不審者の出入り監視といったセキュリティー対策や清掃業務など、警備会社が持つノウハウをベースに民泊業者のさまざまなニーズに対応する。

不動産投資や関連銘柄投資など新たなビジネスチャンスに

規制緩和による構造改革は、アベノミクスに残った第3の矢として注目されるが、民泊ビジネスの全面解禁は、不動産市場や株式市場など多方面に大きな影響をもたらしそうだ。

たとえば、CCCが提携した米国のAirbnbは、登録物件が世界で200万件を超えており、日本でもすでに3万5,000件に達している。2015年の利用者は13万人を超えており、民泊全面解禁は大きなビジネスチャンスになることが予想される。

かつて、CCCの祖業となったレンタルレコード業界も、1983年の創業当時は先行きが心配されていたビジネスだったが、法整備されて大きな産業へと成長した。民泊ビジネスも同様のプロセスを辿る可能性も否定できなくないだろう。

(提供:株式会社ZUU)

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