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2016年7月13日

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今さら聞けない 名目GDPと実質GDPの違いとは何か

GDP
(写真=PIXTA)

2016年1〜3月期の実質GDP (国内総生産) が2016年5月18日に発表され、年率換算で前期比1.7%増となった。2四半期ぶりにプラス成長に転じたことになる。

ここではそもそもGDPとは何か、また「名目GDP」と「実質GDP」は一体何が違うのか。聞いたことはあるけれど、自信が無い方のためにGDPについて解説していこう。GDPに詳しくなることで景気の現状や先行きにも敏感になることができるはずである。

GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2種類が存在

GDPとはGross Domestic Productの略語であり、日本語では国内総生産と呼ばれるものである。これは、一定期間に国内に産み出された付加価値の合計を示す。例えば、パン屋は小麦粉を仕入れそれをもとにパンを製造しているが、この最終的にできあがった生産物 (パンの値段) をすべて金額で評価、合計し中間投入額 (原材料、光熱燃料、間接費等) を控除したものがGDPだ。なお、GDPの伸び率が「経済成長率」を示し、GDPが拡大すれば経済成長率はプラスとなる。一方、GDPが縮小すれば経済成長率はマイナスとなる。

GDPには「名目GDP」と「実質GDP」の2つがあるという点にご注意いただきたい。名目GDPとは、GDPをその時の市場価格で評価したものである。単純にパンの価格などをすべて合計したものと思えばよいだろう。物価の変動を反映した数値はこの名目GDPが該当する。

一方、実質GDPとは名目GDPから物価の変動による影響を差し引いたものである。一つの簡単な事例として、パン屋の売り上げを考えてみよう。1年目に1個200円のパンを1万個販売したとする。この場合1年目の売り上げは200万円となる。そして2年目にはパンの価格が上昇し、1個220円で販売したとしよう。お店の人気もでてきたことから、値上げしたにもかかわらず売れ行きもよく、1年間で1万2,000個販売できたとする。この場合、2年目の売上は264万円となる。

前述したパン屋の売上を例にGDPについて考えてみよう。1年目を基準にすると、1年目の名目GDP、実質GDPはいずれも200万円で変わらない。しかしながら2年目においては、名目GDPは264万円の評価となるが、実質GDPは物価変動分を取り除いて計算するため、200円×1万2,000個=240万円となる (200円は、物価上昇分の20円を除いた額)。このようにして名目GDPと実質GDPは計算される。

それではこの2つのGDPについて詳しく見ていこう。名目GDPは物価変動の影響を受けることから、物価変動の影響を取り除いた状況を確認したい場合には実質GDPを用いることになる。例えば、経済成長率を見たい時には、消費がどのぐらい増えているのかなどを確認することになるため、実質GDPで評価することになる。つまり、名目は金額ベースでの評価、実質は数量ベースによる評価となる。パン屋の事例でわかるように、売り上げた数量が増えれば実質GDPも増加することになる。

経済が実際にどのくらい成長したかが判断するために、名目GDPを実質GDPに評価しなおす「GDPデフレーター」と呼ばれる指標がある。数式で表すと「名目GDP÷実質GDP=GDPデフレーター」となる。

例えば、上記のパン屋の事例でいえば、名目GDPは264万円であり、実質GDPは240万円であった。ここからGDPデフレーターは「264万円÷240万円=1.1」と計算できる。これは物価上昇もしくは物価下落がどの程度発生したかを示している。このGDPデフレーターが1以上となっていれば、基準年と比べて物価が上昇 (インフレ) していることを示す。一方、1未満となっていれば、物価が下落 (デフレ) していることを意味する。

こうした関係は、下記のようにも捉えることができる。式を別の見方で捉えれば、

名目GDP÷GDPデフレーター=実質GDP

と変えることができる。もし物価上昇 (インフレ) となれば、名目GDP>実質GDPとなることがおわかりになるであろう。また、物価下落 (デフレ) となれば、名目GDP<実質GDPとなる。

GDPを見る際には、単純な数値の増減を見るだけでなく、物価や数量に分けて考えることで、これまでとは違ったGDPの見方ができるようになるかもしれない。

(提供:株式会社ZUU)

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