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2017年7月14日

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厚生労働省の調査では過去最大 所得格差を示す「ジニ係数」とは

ジニ係数
(写真=sibgat/Shutterstock.com)

「貧富の格差が世界的に拡大している」と指摘されてすでに久しい。

上位1%の富裕層に資産が集中しているというデータから「We are the 99%」をスローガンに始まった「ウォール街を占拠せよ (Occupy Wall Street) 」活動は、世界中に広がった。格差社会が進んでいると言われる米国では「アメリカファースト」を叫んで、米国人の豊かさを取り戻すと宣言したトランプ氏が大統領に選ばれた。

日本でも格差社会が拡大し、貧困問題は深刻と報道されている。厚生労働省による「2012年国民生活基礎調査」では、所得中央値の一定割合 (いわゆる貧困線) を下回る所得しか得ていない者の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%で、実に国民の6人に1人が「相対的貧困層」となっている計算だ。

日本の格差社会はどうなっているのか。厚生労働省のデータなどを基に考えてみよう。

格差を指数で示した「ジニ係数」

2016年9月に厚生労働省から発表されたある統計が注目を集めた。格差社会のバロメーターとも言われる「ジニ係数」が過去最悪になったと発表されたからだ。

ジニ係数とは、イタリアの統計学者ジニ氏が考案したもので、所得や保有資産の格差を示した指標の一種だ。ジニ係数は「0」から「1」の間で計算される。全員の富が同一であれば「0」となって完全平等の社会を示す。不平等の度合いが高くなり、格差が拡大することで数値は徐々に大きくなり、すべての所得や資産が1人に集中すれば、指数は「1」となる。

日本のジニ係数は、厚生労働省が概ね3年ごとに「所得再分配調査」として発表している。同調査は、年金などの社会保障制度や消費税などの租税制度によって、所得が「再分配」されているかどうかを見るもので、「再分配前」と「再分配後」の2種類のジニ係数が発表されている。2016年9月に発表された2014年調査時の指数が最新で、再分配前のジニ係数は「0.5704」である。前回の2011年の調査時よりも「0.0168」上昇して、統計を取り始めてから過去最大になった。それだけ格差が拡大していることになる。

一方、再分配後のジニ係数は「0.3759」で、3年前の前回調査よりも「0.0032」下落している。わずかだが「格差は縮小した」ことになる。高齢化社会の進展で年金を受給する高齢者が増えたために、再分配後のジニ係数が下がったのではないか、と分析する報道もあるが、少なくとも、平均所得は年々減少し続けており、高齢化社会の影響によって全世帯の所得が減少傾向にあると考えていいだろう。

一般的に、平均所得の減少はジニ係数の上昇につながるわけだが、社会保障制度や租税制度によって、所得の再分配が行われるため、両方の数字を見ないと実際の格差社会の実態は分からない。所得格差の実態をより正確に見るためには、再分配した後の数値を見る必要があるのだ。

世帯間格差と世代間格差

所得格差や貧困問題は放置したままにすると、治安が悪くなったり、政変が起こったりする可能性がある。トランプ大統領誕生に代表されるように、格差社会への不満は政治体制を変えるパワーを秘めている。

厚生労働省も、最新のジニ係数の結果を「高齢化」と「単身世帯の増加など世帯の小規模化」が影響していると、所得再分配調査で分析している。なお同調査では、格差を改善させる再分配の度合いを示した「格差改善度」も発表している。格差改善度は、最新値で過去最高の「34.1%」となった。過去最高ということは、社会保障などの所得再分配によって、所得の高い世帯から、所得の低い世帯へ富が分配されていることを示唆しており、文字通り格差が改善されていることを示している。

その反面、再分配前の当初所得と、再分配後の再分配所得を比較した「再分配係数」という数字を見ると、60歳以上は大幅なプラスになっているが、60歳未満の全世代がマイナスになっている。所得の再分配によって「世帯間」の格差は解消しつつあっても、「世代間」の格差は依然として大きいということだ。

経済成長のうえに所得再分配を

ジニ係数による日本の所得格差を見てきたが、もうひとつ重要な視点が、再分配前の経済規模だ。縮小していく経済のなかで平等が保たれたとしても、生活が豊かになったとは言えないだろう。経済成長を実現しつつ、適切な所得再分配政策を行う。国民誰にでも関係があることだからこそ、今後も格差と所得再分配に気を配りたいところだ。

(提供:株式会社ZUU)

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