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2017年6月6日

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人口ボーナス期と人口オーナス期 労働人口増加で成長する新興国とは

人口ボーナス期と人口オーナス期
(写真=Naresuan261/Shutterstock.com)

高度経済成長を遂げ、世界有数の経済国となった日本だが、1990年代から高齢化が進み、団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者となる「2025年問題」を間近に控えている。

一方、世界を見渡すと、新興国中心に地球全体の人口は増加傾向にある。今回は人口の観点から投資について考えてみよう。

人口ボーナス期と人口オーナス期とは

人口動態を考えるうえで「人口ボーナス期」と「人口オーナス期」という言葉を押さえておきたい。

人口ボーナス期とは、総人口に占める「生産年齢人口 (15歳~64歳の人口) 」が増え続ける、もしくは「従属人口 (14歳以下と65歳以上を合わせた人口) 」に対しての比率が圧倒的に多い状態を指す。安価で豊富な労働力があり、従属人口が少ないため、教育費や社会保障費の負担が少ない状態といえる。そのため、国家予算を経済政策に振り向けやすく、また他国からの投資を呼び込めるので、経済が活性化するのだ。

一方、人口オーナス期は、人口ボーナス期の逆を意味する。一般的に、人口ボーナス期で経済発展に成功した後、医療や年金制度が充実して高齢化が進み人口オーナス期に突入する。オーナスとは、「重荷・負担」という意味だ。「支えられる人」が「支える人」を上回り、社会保障費などが重い負担となるため、消費や貯蓄、投資が停滞する。

人口オーナス期に苦しむ日本

日本はすでに、主要国で最も早く1990年代から人口オーナス期に突入しており、以下のような困難に直面している。

まず、労働人口の減少が挙げられる。これにより、更なる経済成長を実現しづらく、所得が増えにくい状況になることが予測される。次に、日本全体の金融資産が減少することが挙げられるだろう。増加する高齢者が貯蓄を取り崩して生活するため、貿易赤字や経常収支赤字への圧力が増す。加えて、少子高齢化が進むため、社会保障制度の破綻にもつながる。

日本の社会保障は、働く人が自分の老後のためにお金を積み立てる「積立方式」ではなく、働く人がお金を出して高齢者に給付する「賦課 (ふか) 方式」を採用している。労働人口が減少しているなか、現状の社会保険制度では働く人の負担が大きくなるなど、すでにさまざまな問題が発生している。

人口ボーナス期の主役は新興国

これから人口ボーナス期を迎える国の多くは新興国だ。かつての日本のように、人口ボーナス期を高度経済成長につなげることが期待されている新興国をいくつか紹介しよう。

● トルコ
2009年以降、人口ボーナス期に突入しているのがトルコだ。総人口約7,800万人、平均年齢は約30歳といわれており、若い世代が充実している。国内外の治安悪化による景気後退には注意が必要だが、ヨーロッパ、中東、中央アジア、ロシアなどの巨大な経済圏と隣接し、歴史的にも貿易・金融の中継地としての役割を担ってきた。

● 南アフリカ共和国
56ヵ国・地域で構成されるアフリカの中で、北部アフリカを除いた49ヵ国・地域で構成されるサハラ以南アフリカは、2010年に0歳~14歳の人口構成比が42.4%、15歳~64歳の人口構成比が54.5%となっていた。それが2050年には0歳~14歳の人口構成比28.4%、15歳~64歳の人口構成比が65.7%になると予想されており、21世紀後半は人口ボーナス期の最盛期となるとみられている。

南アフリカ共和国は世界有数の資源国でもある。ただし、アフリカではアジア諸国と違って労働生産性が低く、人口ボーナス期を十分に活かせる経済基盤がないことが課題と言われている。

● メキシコ
メキシコは、総人口約1億2,000万人に対し、生産年齢人口は63.6%、平均年齢は約28歳といわれており、2020年代に人口ボーナス期のピークを迎える予定だ。世界最大の経済大国アメリカに地理的に近く、アメリカより労働力が安価なことから、近年、米国輸出向け産業の拠点として発達してきた。しかしトランプ大統領就任後は、メキシコへの風当たりが強まることも予想され注意が必要だ。

人口ボーナス期のピークに社会・経済基盤の整備が追いつくかがカギ

日本だけでなく、中国も人口オーナス期に突入している一方で、新興国の人口増加は著しく、インドは2020年代前半に中国の人口を上回り、2050年には世界の人口上位10ヵ国のうち3ヵ国をアフリカが占めると予測されている。

こうした新興国への投資は、人口ボーナス期がいつかということを確認すると同時に、その人口増加をフルに享受するための社会・経済基盤の整備状況を注視していくことが大切となるだろう。

(提供:株式会社ZUU)

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