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2017年2月28日

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米国がデフォルト危機 ? 米連邦債務引き上げ問題とは

米連邦債務引き上げ問題
(写真=PIXTA)

2013年10月、債務上限に対する暫定予算案が、期限である9月30日までに成立しなかったため、約18年ぶりに米国の連邦政府機関が一部閉鎖 (シャットダウン) された。これにより、国立公園やリンカーン記念堂も閉鎖され、80万人以上の政府職員が自宅待機となった。このシャットダウンに対応するため、当時のオバマ大統領は、2013年10月に予定していた東南アジア歴訪を中止している。

政府機関の閉鎖にまで発展する債務引き上げ問題は、数年おきに話題になっている。日本でも同じような事態が起きれば、その影響は計り知れないが、政治・経済の大国である米国でなぜこのようなことが起こるのだろうか。米連邦の債務引き上げ問題について解説する。

米連邦債務引き上げ問題とは

米国では、国の借金である米国債の発行額枠に上限 (法定債務上限) が設けられており、その上限を超えることはできない。しかし、債務上限を引き上げなければ、資金繰りが行き詰まり、公的年金や国債利回りの支払いができないという事態に追い込まれてしまう。

毎回、与野党の攻防が繰り広げられながら、瀬戸際で合意し、債務上限が引き上げられている。しかし、もし合意形成ができなければ次年度の予算や議会運営に影響が出てしまうばかりか、金融市場が大きく混乱する可能性がある。これが米連邦債務引き上げ問題である。

国債発行枠の上限は、議会の承認を得れば引き上げることが可能だが、議会が「ねじれ状態」になっているときは、議会の承認がスムーズに進まないことが多い。米国の上下両院は対等の立場であるためだ。

なお、日本では予算案の議決において、衆議院の優越が認められている。衆議院が先議し、衆議院と参議院が異なる議決をした場合、両院協議会を開く。両院協議会で意見が一致しない場合は、衆議院の議決が国会の議決となる。米国と異なり、野党がいくら反対しても衆議院の予算が通る仕組みなのだ。

2013年の流れ

2013年の債務引き上げ問題が具体的にどのような推移であったか見てみよう。

2013年5月、米国の債務残高は法定債務上限に達した。前述の通り、議会の承認がおりなければ、これ以上の国債発行はできない。与党の民主党は、国庫の手元資金で何とか資金繰りをしつつ、暫定予算案の編成を進めた。

しかし野党の共和党は、反対する医療保険制度改革 (オバマケア) の変更を盾に、民主党の暫定予算案に反発する。議論は平行線を辿り、そのまま新年度予算の期限である9月30日を迎えてしまい、10月1日から一部の政府機関が閉鎖した。

さらに米財務省が警告する債務上限の引き上げ期限が10月17日に迫っていた。この日までに債務上限の引き上げ法案が成立しないと、数週間後、米国債の利払いができない事態 (デフォルト) となる可能性が濃厚という警告だ。

結局、米国のデフォルトは世界中に大きな影響を与えることもあり、双方が歩み寄りを見せ、債務上限引き上げ法案が可決され、米国のデフォルトは回避された。

2017年3月に債務上限の適用が再開

2015年も同様の問題で、米国議会や金融市場が混乱する場面があった。2015年10月に、連邦債務の借入権限を2017年3月まで延長することでデフォルトを回避したわけだが、言い換えれば、2017年3月 (3月16日の予定) から債務上限の適用が再開される。

トランプ大統領が掲げる大型減税や大規模インフラ投資は、財源が必要な政策であり、これらの政策が動き出せば、財政赤字の拡大や、更なる米国債の発行の必要性が予想される。少なくとも向こう5年間はトランプ政権が続くことを鑑みると、2017年を含め、今後も、債務上限問題が懸念材料として燻り続けるだろう。

テールリスクであるものの注視が必要

前述の通り、米国議会の対立は予算の議決に大きな影響を及ぼす。日本とは違い、民主党と共和党のという二大政党を確立している米国では、予算案の否決を対抗手段にできるためだ。ただ、民主党であれ共和党であれ「米国のデフォルト」の影響力の大きさを認識しており、デフォルトは避けなければならないという認識で一致している。そのため、最終的に米国がデフォルトには陥ることはないという、楽観的な見方も可能だ。

しかし、万が一、米国がデフォルトするような事態があれば、日本を含めた世界経済への影響は計り知れない。現実に起こる可能性は低いテールリスクではあるものの、注視すべき問題であることは間違いない。

(提供:株式会社ZUU)

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