ここは“第二の我が家”
もみじの家から始まる
家族の時間

小児・周産期医療を担う日本で最大規模の医療研究拠点である「国立成育医療研究センター」。併設された「もみじの家」は、治療が終了した後も医療的ケアを必要とする子どもと、その家族を支援する医療型短期入所施設です。

生後まもなく娘さんが心肺停止状態となり、脳に大きなダメージを受けてしまった細川さんご家族。人工呼吸器を付けた娘さんを在宅でケアする細川さんにとって、もみじの家で過ごすひとときは、大切な「家族の時間」でした。

我が子の命を家族が預かる「いつも張り詰めた緊張感」

お子さまの医療的ケアをご家族が担っている現状について伺えますか。

細川さん(母):

普通の生活との一番の違いは、「気の休まる暇がない」ことだと思います。

うちの子は自分で呼吸をすることが出来ず、常に人工呼吸器を使っています。もし呼吸器が外れるなどのトラブルがあると、そのままの状態でいれば数分で命に関わります。そのため機械のアラームが鳴れば夜中寝ている時でもすぐに反応しなければなりませんし、必要な場合には救急車を呼ぶなど、家族だけで迅速に対処しなければいけません。私たち「医療者ではない家族」が、沢山の医療的ケアを必要とする子どもの命を預からなければいけない。それが24時間365日ずっと続いている状態ですから、精神的にも肉体的にも大きな負担になっているのが正直なところです。

個室には家族も一緒に泊まれて、自宅のように過ごすことができます

行動範囲も限られてしまいますね。

細川さん(母):

外出時にも人工呼吸器のほかに栄養を入れるための機械、痰をとるための機械など様々なものが必要になるので、外に連れ出すのも大変です。私ひとりでは車椅子に乗せるのが難しく、ずっと自宅で過ごすことが日常になってしまいがちです。

妹のこの子もまだ小さくてひとりで外出はできませんから、外に連れていってあげたいのですが、このような状況だと外出する時間をつくることも難しいです。

子どもの嬉しそうな笑顔があるから家族の時間が過ごせる

もみじの家をご利用になって、どんな感想をお持ちですか?

細川さん(父):
もみじの家では、「家族が一緒にいなければいけない」わけでもなく、ケアを任せながら普通の家族として過ごせるところが嬉しいです。看護師さん達が常に子どもの状態を見ていてくださいますから、部屋を借りている期間は、私たち家族も安心して“普通の暮らし”ができます。

他の施設の場合、預けている間は日常的な時間を一緒に過ごすのが難しく「ご家族は帰ってください」と言われることもあります。

もみじの家は入所と在宅の中間のような施設で、私たちもケアラーとして付き添うのではなく、「家族として一緒に居る時間」を過ごすことができます。

日々在宅医療を続けている私たちのような家族にとっては、本当に心の支えになる施設なんです。

光の変化や動きなどで五感を刺激し、楽しむ「センサリー・ルーム」

もみじの家は、最大で9泊までできるそうですね。

細川さん(父):

家族みんなで泊まれる「家族室」が使えるときは、私もここから出勤して、ここに帰ってくるんです。「ただいま」って(笑)。

看護師さんたちがいるので娘のケアは安心して任せられますし、家族が心の底からリラックスできる。こういう場所って、本当に他にはないんです。

もみじの家は、私たち家族にとって「第二の我が家」ですね。

——ケアを受けているお子さんの様子はいかがですか?

細川さん(母):

普段は同年代の子どもと一緒に過ごす時間が本当に少ないので、初めてもみじの家に連れてきたときの反応にはびっくりしました。他のお子さんの声が聞こえたら、家とは違うとてもいい表情を見せてくれたんです。あらためて、「子ども同士の刺激が重要なんだな」とわかった瞬間でした。

入院中や在宅生活では、どうしても関わる人が大人ばかりになってしまって子ども同士で関わりを持つ機会は少なくなります。もみじの家では同年代の子どもたちと過ごす時間もたくさんありますし、保育士さんが病気を持った子に合わせた保育を工夫してくださるのでので、本当にありがたいです。

娘もここにいると、すごくリラックスしているのがわかります。

特別じゃなくていい。こんな家族がいることを知ってほしい

在宅で医療的ケアをされているご家族にとって、もみじの家がいかに大切な場所かということがわかりました。

細川さん(母):
私たちが「特別な存在」なのではなく、たまたま生まれた子が病気なだけなんです。妹のこの子も、病気のお姉ちゃんがいるけれど、普通の子です。でも現実には、普通に外で遊ぶことも、家族で旅行に行くことも、たまにはのんびり過ごすこともできない毎日が続いています。

——社会もこのような現状に目を向ける必要がありますね。

細川さん(父):

特別視をしてほしいということではありません。ただ、「こういう子がいる家族がいるんだ」「それも普通なんだ」と思ってもらえたらありがたいです。

人工呼吸器を付けて外出すると、周りにいる方が「ギョッとする」という体験をよくします。こんな風に生きている子どもを見る機会がないですから、それは仕方のないことなんですよね。

でも、小さいころから医療的ケア児と一緒に過ごす時間があったり、教育でもそういう場があれば、「社会の感覚」は変わってくるのではないかと思います。

もみじの家があることで、私たちも少しだけ「普通の生活」ができるようになりました。重い病気を持った子どもが生まれても、家族が一緒に幸せに暮らせるもみじの家のような居場所が、ここから全国に広がっていけばうれしいですね。

「もみじの家」は、小児・周産期医療の分野では日本で最大規模の「国立成育医療研究センター」の敷地内にあります。自宅で医療的ケアを受けている子どもと家族を数日間受け入れ、ひとり一人が子どもらしい生活、くつろいだひと時を過ごせるよう、さまざまなケアを提供しています。

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