予定されている政治イベントあるいは指標が今後為替をどう動かしていくかという視点から考え、目先に迎合することなく、一歩先の明確な方向感を出して行くのが私のスタンスなので、貿易収支、経常収支といった日本の需給とアメリカの動向からレートを予想しています。
私自身は、国内でも少数派の円安論者なのです。アメリカ経済を悪化させる大統領に2期目はないので、さすがのトランプ大統領も今までのような好き勝手なことはできなくなる可能性が高いでしょう。票を読みながらの政策に変わってくるはずなので、方向感としての円安見通しは変わらないだろうと考えています。

日本サイドの話はほとんど影響なく、やはりアメリカの指標ですね。雇用や金融政策に対する悪い噂とか、出てきた指標に対して市場売買に利用される人工知能が最初にどう反応するかということが大きいと思います。たとえば、金融政策決定会合において、市場が年内3回の利下げを織り込んだとしても、利下げが0.25％しかなかった場合、期待ほどの利下げになっていないという理由から、織り込みの反動で相場が動いてしまいます。自分の予想と織り込み度合いを比較しながらレートを絞り込むようにしています。

まず前提にしておいていただきたいのは、「予想が100％当たる人はいない」ということ。ニュース等に登場するコメンテーターには円高論者が多いため、円高見通しの材料ばかり提示されがちですが、必ず複数の人たちの見方を参考にして、最後は必ず自分で総合的に判断してほしいと思います。

米中が通商合意に至るという前提で予想を立てていました。方向感で言えば、2019年2月～4月にかけての予想はいい感じでした。でも、5月にトランプ大統領の“ちゃぶ台返し（米中通商決裂）”が起こり、それ以降、私の思っている方向にはなかなか動いてくれない（苦笑）。常に真剣に予想しているものの、今は「ごめんなさい」、といったところです。でも、見通しになんら変更はありません。

為替の場合、判断材料が毎日変わるため、継続的に情報を入手することが必要で、そのためには人と人とのつながりが何より大事だろうと考えています。最近は、証券会社の営業担当者の情報や相場観よりも、手数料を優先してネット取引をする方もいらっしゃいますが、お客さまにきちんとコンタクトを取り、情報提供してくれる営業担当者を大事にしていただきたいし、逆に、コンタクトしてこない営業担当者には厳しく対応し、踏み込んだ質問を投げかけて担当者を育てていただければと思っています。私自身、お客さまに厳しく育てていただいたおかげで、好きな仕事を続けてこられたと思っています。