大和総研コラム

男性育休取得率の向上は「ゴール」にあらず

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2022年7月4日
  • 大和総研経済調査部 研究員 矢澤朋子

2021年6月に育児・介護休業法が改正され、その第一段階として22年4月より「雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務付け」及び「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」が施行された (※1) 。政府目標である男性の育児休業 (以下、育休) 取得率30% (25年まで) に向け、社会の機運が高まってきている。

ただし、ここで改めて認識しておきたいことは、男性の育休取得は「ゴール」ではなく、その後の長い仕事と育児の両立生活の「スタート」にすぎないということである。

「令和2年度雇用均等基本調査」 (厚生労働省) によると、20年度の育休取得率は女性の81.6%に対し、男性が12.65%と男女の格差が非常に大きい。21年公表の「第9回21世紀成年者縦断調査 (平成24年成年者) の概況」 (厚生労働省) (※2) から、育休制度の有無は出産後の妻の就業継続にプラスの効果を及ぼすことが示されている。出産後の妻の離職率は、妻の就業形態で利用可能な育休制度がある場合で9.0%、ない場合で77.6%と大きな差が生じた。また、育休以外では、夫の家事・育児時間が長くなるほど、出産後の妻の離職率が低下する傾向があることも示されている (下図) 。特に平日における夫の家事・育児時間が及ぼす影響は大きく、育児時間が「なし」から「2時間未満」、そして「2時間以上4時間未満」から「4時間以上」に変化した時の妻の離職率低下が著しい。このことから、男性の育休取得やその後の継続的な育児参加が女性の就業継続を促すと考えられる。

政府や企業は男性の育休取得率向上を目指すのみならず、長い育児期間中、仕事や育児が男女いずれかに偏らず双方が社会で活躍できるよう、保育園・託児所の整備、育休制度の拡充、労働時間短縮や働き方改革を含む労働環境整備などの施策を講じるべきであろう。

[図表] 夫の家事・育児時間別にみた出産後の妻の離職率

他方、育休取得に際し、復帰後のキャリア (業務内容、昇進、配置転換等) への負の影響に対する不安を抱いている男性が少なくない (※3) 。しかし、このような不安を抱くのは女性も男性も同じである。育休取得による仕事上のブランクを抱えつつ、復職後に (特に時間的な) 制約がある中で働くことは (※4) 、女性の就業継続の大きな障害と考えられる。上述した政府及び企業の施策も重要ではあるものの、やはり目の前にある日々の育児を担うのはもう一方の親である配偶者・パートナーの役割であろう。

改正育児・介護休業法の施行が男性の育休取得を推進するだけでなく、男性が仕事と育児にどう向き合うのか、その選択をすることで配偶者・パートナー (のキャリア) にどのような影響があるのか、親として仕事と育児 (家庭) をどう運営していきたいのかなどを改めて考えるきっかけとなることを願う。


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