大和総研コラム

「多様性」の持つ意味を考えてみよう

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年8月2日
  • 大和総研金融調査部 研究員 藤野大輝

先日、私は東京オリンピックの開会式を観るために久しぶりにテレビをつけていた。日々の報道やSNSにおいては様々な意見が見られる開会式であったようだが、今回の開会式の大きなテーマが「多様性と調和」であったことはご存じだろうか。

なぜ多様性にここまで焦点があてられるのか。2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コード (CGコード) においても、多様性について、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等の自主的な目標、方針、状況などを開示すべきとされた。多くの上場会社はこれに対応して企業内の中核人材の多様性の目標を設定することを検討している。

考えるべきなのは、なぜ多様性に焦点をあてるのか、何のために多様性を重視するのかという、先ほどの疑問である。今回のCGコード改訂で企業の多様性について内容が拡充されたのは、女性の活躍促進にとどまらず、女性・外国人・中途採用者などの多様な視点や価値観が企業の持続的な成長に資すると考えられるためである。

上場会社が、ただ改訂されたCGコードで求められているからコンプライするためだけにそれらしい目標を設定するとすれば、望ましいとはいえない。例えば、多様な人材が、その有する能力を活かして活躍できる、安心してモチベーションを持って働くことができる環境を作り優秀な人材を確保すること。また、ガバナンスに多様な視点が存在することでパンデミックやDXなどのような大きな環境変化にも対応できる体制を構築できること。あるいは、顧客や地域住民、投資家などの様々なステークホルダーに対して企業としての社会的な責任を果たしていくための一つの方向として多様性を推進していくこと。このような多様性を確保することによる自社にとっての意味や目的をしっかりと検討し、方針を立てた上でそれに見合った目標を設定することが何より重要であろう。

これは上場会社に限った話ではなく、それ以外の企業や従業員、個人についても同様である。性別、国籍、年齢、働き方、価値観など、様々な観点からの多様性が認められない社会と認められる社会にどのような違いがあり、どちらがより望ましいのか。もちろん0か1かという話ではなく、各観点について、それこそ多様な考え方のグラデーションがあり得るだろう。最終的な意見や結論が各企業・個人によって異なることは当然であり、私自身も過程を飛ばして多様性の確保だけが自己目的となったような、行き過ぎた考えには疑問を感じることもある。だが、まずはオリンピックを見ながらでも、多様性ということの意味について考慮してみる時間を持ってみることが大切ではないだろうか。


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