大和総研コラム

「マンボウ」は女性の敵 ? コロナショックの女性労働者への影響

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年7月14日
  • 大和総研金融調査部 研究員 中村文香

知人が「マンボウのせいで友人とお酒を飲みにいけない」とこぼしていた。新型コロナウイルス感染症に対する「まん延防止等重点措置」を略して「マンボウ」と呼ぶことがあるようだ。まん延防止は切実な課題であるが、略語にすると、楕円形の大きな体と丸い目、水中をゆらゆらと漂う愛嬌ある姿のマンボウが思い浮かび、とてもユーモラスだ。水槽にぶつかるだけで弱ってしまうようなマンボウが、人間の活動を抑制する壁になっているという点も面白い。公式には使うことが控えられる略語だが、ネット上などで使用されているようだ。

リーマン・ショックをはじめとする金融危機は、銀行等のバランスシートを痛め、金融仲介機能を弱めることで、経済に対して負の影響を与えた。家計が耐久財消費や住宅購入を手控えることで、製造業や建設業が打撃を受ける傾向にあり、男性労働者への影響が強かったといえよう。相対的にサービス業の落ち込みは小さく、サービス業に従事する割合が高い女性労働者への悪影響は限定的だった。危機の際、女性が非正規雇用でサービス業に就き、家計を支えるといったケースもあっただろう。

新型コロナウイルス感染症による経済ショック (コロナショック) は、感染を防ぐために、人の移動や接触を制限したことにより起きている。そのため、打撃を受ける産業もこれまでの金融危機とは異なり、飲食をはじめとするサービス業が中心だ。男女別で見るとサービス業に従事するのは女性が多いため、女性に対する影響が大きいといえそうだ。経済的な観点からは、「マンボウ」が女性の敵になっているのだ。

影響を受けた産業が異なることにより、景気回復の際にも違いが表れてくると考えられる。過去の金融危機からの回復の際には、先送りされていた耐久財消費が行われることで、景気を押し上げる効果があった。一方、サービス消費は、先延ばしにされていた需要が現れてきたとしても、コロナショックがなかった場合に実現していたであろう消費が全て行われるとは考えにくい。結果的に、押し上げ効果も限定的になるだろう。

コロナショックはサービス業への悪影響を通じて、男女格差を拡大させたと考えられる。そしてその悪影響はショック後も尾を引きかねない。打撃の大きかった産業への支援を行うだけでなく、リカレント教育を推進し、労働者のスキルや柔軟性を高めることが必要だ。


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