大和総研コラム

東京オリンピック・パラリンピックをスポーツ産業活性化の契機に

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年7月12日
  • 大和総研経済調査部 エコノミスト 鈴木雄大郎

いよいよ1年越しの東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会 (以下、東京オリ・パラ) の開幕が近づいてきた。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが収束せず、外国からの観客受け入れの見送りや、1都3県に加え、北海道、福島県での無観客実施といった観客数の制限など異例の形で開催されるが、これ以上感染状況が深刻化せずに閉会を迎えられることを願うばかりである。

観客数の制限などから、大会期間中の経済効果は当初期待されていたほどは発現しないとみられるものの、国民の東京オリ・パラに対するマインドが改善し、大会が盛り上がれば、今後のスポーツ産業に好影響をもたらす可能性がある。例えば開催を契機に国民のスポーツへの関心が高まり、スポーツ観戦者が増加したり運動する機会が増えたりすることが期待される。

単純な比較はできないが、大会後に人気が高まったスポーツの例として、2019年秋に日本でワールドカップが開催されたラグビーが挙げられる。日本チームの快進撃もあって、国民のラグビーに対する関心が一気に高まり、開催後のラグビートップリーグ (2019-2020シーズン) の1試合当たりの平均入場者数はそれ以前と比べて倍増し、全国各地の試合会場は軒並み満席となった。

笹川スポーツ財団の「中央競技団体ファイナンシャルレポート」によれば、2016年度におけるオリンピック競技団体 (夏季競技29団体) の経常収益の平均値は18億円に対し、中央値は7億円と開きがある。サッカーなどの一部のメジャースポーツが平均値を大きく押し上げていたためだ。

さらに経常収益の構造を規模別に見ると、収益が10億円以上の団体はチケット代などの事業収益が全体の74%を占めているのに対し、収益が1億円未満の団体では29%にすぎず、受取補助金等が34%を占めた。多くのマイナースポーツでは3割程度しか自力で稼ぐことができず、補助金や助成金などに頼らざるを得ないのが現状だ。

ラグビーワールドカップと同様に自国で開催される東京オリ・パラを契機に世間の関心が高まれば、マイナースポーツにおいてチケット収入や放映権料の増加、スポンサーの獲得などによる収入が増加し、事業環境が改善する可能性がある。従前より日本のスポーツ産業は米国などと比べ収益化が遅れていると指摘されてきた。この産業が活性化するためにも、現状ではやや楽観的かもしれないが、日本中が“One Team”となって東京オリ・パラが盛り上がることを期待したい。


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