大和総研コラム

誰が所得を増やし、誰が消費を減らしているのか

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年6月17日
  • 大和総研執行役員 リサーチ本部リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木準

総務省の家計調査によると、2020年の勤労者世帯の可処分所得は43.2万円で (総世帯ベースの1世帯当たり月額、以下同じ) 、2019年の41.7万円から1.5万円、3.6%増えた。だが消費支出は26.2万円で、前年の28.1万円から1.8万円、6.5%も減った (計算が合わないのは四捨五入の関係) 。所得と消費の動きがこれほどずれたのは異例で、もちろん新型コロナウイルス感染症の流行や特別定額給付金の支給などが影響している。

所得が増えたのに消費を減らしたということは、貯蓄を増やしたということだが、事情は家計によって様々だろう。支出を減らした / 減らせたということは、我慢をして生活を切り詰めたり何かを諦めたりしたのかもしれないし、不安を強めて防衛的になったのかもしれない。家計調査から、いくつかの分類や類型で可処分所得と消費の動きを見てみよう。

まず、収入5分位では、所得が最も低い第Ⅰ分位で可処分所得が0.9万円増え、消費を0.9万円減らした。所得が最も高い第Ⅴ分位は可処分所得が2.9万円増えたが、消費を3.0万円減らしている。これに対し、ちょうど真ん中の第Ⅲ分位は1.0万円の可処分所得の増加に対し、消費を1.7万円減らしている。似たような所得の変動である第Ⅰ分位との対比で見ると、中間所得層が限界的な消費性向を大きく低下させている可能性がある。

コロナ対策として政府は低所得者を重視しているが、全体にバランスがとれているか検証が必要かもしれない。興味深いことに世帯の人員数別では、世帯所得が小さくない6人以上の世帯で可処分所得が6.1万円も増えており、消費を3.3万円増やしている。他に消費を増やしている例外的な類型は世帯主が70歳以上の勤労者世帯で、可処分所得の増加幅が3.8万円と大きく、1.1万円の消費増を見せている。コロナ禍の中でも元気に稼ぎ、生活を楽しんでいる高齢者家計はあるということだろう。

世帯主の就業する産業別で唯一、可処分所得を減らしたのは「運輸業,郵便業」だ (可処分所得2.0万円減、消費3.5万円減) 。休業の影響が大きいとされる「宿泊業,飲食サービス業」は可処分所得が2.7万円増えており、消費は0.1万円の減少にとどまっている。また、代表的なエッセンシャルワーカーである「医療,福祉」は可処分所得が3.3万円増で、消費の減少は0.8万円とさほど大きくない。「金融業,保険業」が4.8万円、「建設業」が4.7万円も消費を減らしたのとは対照的だ。

世帯主の職業別では、労務作業者の可処分所得が0.2万円増、消費が1.6万円減であるのに対し、民間職員は可処分所得が1.7万円増、消費が2.4万円減である。平均消費性向の高さや可処分所得の伸びから見て労務作業者は厳しく、コロナ禍の中で現業的な仕事は大きな影響を受けていることがうかがわれる。官公職員は極めて安定しており、可処分所得が3.8万円増、消費支出が0.2万円減だった。

家計調査は世帯主を中心にした調査である点や、その標本誤差やサンプルセレクションバイアスに注意が必要だが、コロナ禍が長引く中で次に必要な政策を検討する上では、この間の施策が何をもたらしているか把握する必要があるだろう。また、公平・公正な行政サービスを効率的に提供できるようにするには、国と自治体のデジタル改革を加速させることも不可欠だ。


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