大和総研コラム

2021年株主総会の想定質問—東証再編、バーチャル総会運営方法などに注目—

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年6月2日
  • 大和総研政策調査部 主任研究員 鈴木裕

コロナ禍が続く中で、2回目の株主総会シーズンを迎える。株主総会に大人数を集めれば、感染拡大の場になりかねないため、人数制限や入場予約制など来場者数を少なくする運営上の工夫が求められる。

昨年の経験から、来場者へのお土産を取りやめることが来場抑制に効果的であることは明らかだ。また、密な時間を長くしないために、質疑は30分程度を目安とするよう来場者に協力を要請する取り組みも多くなるだろう。少人数かつ短時間の株主総会となるので、コロナ禍以前に比べれば質問数は減るはずだ。

しかし、少なからぬ株主が関心を持ちそうな今年限定のテーマがいくつかある。株主総会を開く企業としては、それへの回答を準備しておく必要がある。

(プライムかスタンダードか ? )
まず、東京証券取引所 (東証) 再編に関係する質問だ。東証は2022年4月に、プライム、スタンダード、グロースの3市場に再編される。これに先立ち東証は、移行基準日 (2021年6月30日) における新市場区分の上場維持基準への適合状況を企業ごとに試算し、上場各企業はその結果を踏まえて年内に市場選択を行うことになっている。

現状のPBR (株価÷一株当たり純資産) を見ると、東証1部が1.3倍で東証2部は0.7倍くらいで差が大きい。PER (株価÷一株当たり純利益) も東証1部が25.1倍で東証2部は16.8倍ほどだ (どちらも2021年4月末の値、東京証券取引所「統計月報」) 。再編後のプライム市場とスタンダード市場が現在の東証1部と2部と同じような関係になるか分からないが、PBRやPERから見た株価形成がこれだけ違うと、プライム市場を選択すべきという声が株主から強く上がるのではないか。市場選択に関する質問への回答を準備しておく必要性は高い。

(流通株式増加策の検討)
流通株式比率35%以上や流通株式時価総額100億円以上というプライム市場の上場維持基準を現時点で充たしていないとしても、プライム市場への上場を希望する東証1部企業はかなりある。こうした企業は、流通株式を増やすためにどのような取り組みを考えているか株主から問われよう。大株主や政策保有株主に株式売却を要請するなどの対策を講じる検討を進めておくとよいだろう。

(株主総会への参加機会)
コロナ禍の中での株主総会運営についても注目だ。昨年は、生身の人間が一堂に会する従来型のリアル株主総会と並行して、インターネット等を介するオンライン株主総会を開催するハイブリッド型バーチャル株主総会を百数十社が開催した。今年はそれが大幅に増えそうだ。企業としては二重に手間がかかるが、来場を抑制するからには来場以外の方法で株主総会に参加する機会を設けるべきと考える株主もいる。来場抑制をしながら、バーチャル総会を開催しない企業は、株主の総会参加の機会保証をどのように考えているか問われるかもしれない。

(オンライン総会での質問方法等)
オンライン株主総会の運営方法は特に法定されていないため、各企業がそれぞれ工夫する余地が大きい。中には、質問の受付方法が株主から見て不適切とも思える運営をする会社もあるようであり、それでは不平が出るだろう。リアル株主総会に出席した株主がオンライン株主総会の運営を問題視することも考えられるので、運営の適切性を説明する備えはしておくべきである。

(コーポレートガバナンス・コード改訂)
この他、コーポレートガバナンス・コードの改訂に伴う対応方針も問われる可能性がある。独立社外取締役の増員やダイバーシティの一層の推進、気候変動をはじめとしたサステナビリティ課題への対応等、コード改訂に関係したテーマが問われることも想定しておくとよさそうだ。


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