大和総研コラム

為替スワップと店頭デリバティブ取引規制

  • 経済
  • 掲載日 : 2021年6月1日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 鈴木利光

2007年から2008年にかけての金融危機にあっては、店頭デリバティブ取引のシステミック・リスクがその一因であったと結論付けられた。

その帰結として、店頭デリバティブ取引については、透明性向上や、過度なリスクテイクの制限を企図した規制強化がされている。たとえば、前者については取引情報の報告義務が、後者については証拠金規制がそれにあたる。

ここで留意すべき点に、為替スワップと店頭デリバティブ取引規制の関係性がある。

為替スワップとは、「スタート時の為替直物レートと、エンド時の自国通貨と外国通貨の金利差が織り込まれた為替先物レートとの交換という形で、固定金利の交換をし、異なる通貨を交換する取引」 (※1) である。

これは、現物決済型の先物外国為替取引に分類されるため、金融商品取引法上の「店頭デリバティブ取引」 (差金決済や金銭の授受を想定) に該当しない。

そのため、為替スワップは、取引情報の報告義務や証拠金規制の対象取引ではない。

もっとも、これを受けて、為替スワップにはリスクがないと捉えられている、と考えるのは早計である。

というのも、証拠金規制では、為替スワップは、当初証拠金 (IM) の授受の対象となるか否かの分岐点である、「想定元本1.1兆円 (超) 」の閾値には算入されるからである。

このことから察するに、為替スワップは、金融商品取引法上の「店頭デリバティブ取引」ではないにもかかわらず、その規模によっては「過度なリスクテイク」と捉えられる取引ではある、ということである。

なお、余談だが、極端なケースでは、金融商品取引上の「店頭デリバティブ取引」はほとんど締結していないのに、為替スワップを盛んに締結した結果「想定元本1.1兆円 (超) 」に達してしまい、IMの授受の対象主体となってしまう、という事態が生じうる。

実際のIMの授受は、IM金額が「70億円」の信用極度額を超えた場合に初めて必要となるのだが、このようなケースでは、IM金額を算出するにあたって、一般的にその金額を低く抑えることが可能と考えられている「定量的計算モデル」ではなく、「標準表」によっても、「70億円」にはとうてい達しないこともあろう。

その場合は、取引相手方との交渉次第ではあるが、難解な「定量的計算モデル」を導入するというコストを負担せずに、簡易的な算出が可能となる「標準表」でIM金額を管理するというのも一計だろう。


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