大和総研コラム

若い世代は株式投資に抵抗が少ないかもしれない

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年5月12日
  • 大和総研政策調査部 主席研究員 土屋貴裕

同じ金額であれば利益の喜びよりも損失の悲しみの方が大きいらしい。そうであれば、報道等で「株価急落」「○○営業日続落」といった言葉を見かければ、「株価急騰」「○○営業日連騰」などよりも記憶に残りやすいのではないだろうか。そこで、日経平均株価 (出所:日本経済新聞社) の下落した頻度を日次で確認した。以下では、1981~1990年を80年代、1991~2000年を90年代、2001~2010年を2000年代、2011~2020年を2010年代とする。

90年代は株価が下落した日の方が多く、90年代以外は下落よりも上昇した日の方が多い。2000年代、2010年代は徐々に下落した日数の比率が低下している。次に「株価急落 (前日から5%以上下落した場合とする) 」を見ると、2000年代に最も多く、18回起きている。2010年代は11回に減少した。90年代以前の急落回数はいずれも一桁であった。

「○○営業日続落」はどうだろうか。連続して下落した最長日数は2000年代の12営業日続落で、2010年代は最長でも7営業日続落であった。7営業日以上の続落が繰り返された回数を確認すると、2000年代に10回起き、2010年代は4回に減少している。

株価が下落した頻度は90年代に最も高く、2000年代は下落より上昇の方が多いものの、急落や続落が頻繁だったことになる。ところが、2010年代は急落も続落も減ったのである。

上記の情報への印象は世代によって異なるのではないだろうか。経験は結構大事で、多くの人は知識よりも自分の経験をもとに判断してしまう傾向があるそうだ。若い人は預貯金に金利が付くものとは思わないだろう。年配の人が日本株投資の中心であるのは、金融資産の多寡だけではなく、かつて高度経済成長やバブル経済で、下落頻度が少ない株価上昇を経験したことも理由として考えられる。

もちろん、同じ株価の下落といっても、企業価値から乖離して下落する場合や、企業価値から乖離して上昇した分が是正されて下落する場合、企業価値の低下による下落など、意味は異なる。本来、バブル的な株価の上昇と下落、一時的な〇〇ショックなどは分けて考えるべきだろう。だが、株価が頻繁に下落すると、「株価が下落した」という情報を思い出しやすくなり、リスク資産による資産形成を考える際に株価の下落トレンドというバイアスを持つ可能性が出てくる。株価が下がったことが記憶に残って投資スタンスに影響するのであれば、2010年代以降に大人になった世代は、90年代、2000年代に大人になった世代よりも、株式投資に抵抗が少ないかもしれない。


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