大和総研コラム

バイデン政権のインフラ投資への期待と課題

  • 国際
  • 掲載日 : 2021年4月13日
  • 大和総研経済調査部 シニアエコノミスト 橋本政彦

バイデン政権は3月31日に総額2兆ドル超規模のインフラ投資計画を中心とした成長戦略、American Jobs Plan (以下、AJP) を公表した。内訳を見ると、選挙時に公約として掲げていた橋梁・道路などの交通インフラやブロードバンド、環境分野への投資のみならず、製造業への研究開発援助など幅広い内容が盛り込まれている。今回の計画は3月に成立した1.9兆ドル規模の経済対策 (American Rescue Plan) とは異なり、成長戦略に位置付けられており、対象期間も8年間と長期に設定されている。しかし、そのタイトルに“Jobs (雇用) ”の文言が用いられていることからもわかる通り、供給面よりはむしろ需要創出に重点が置かれており、米国経済の回復を後押しすることが期待されている。

だが、インフラ投資による経済の押し上げ効果に関しては慎重にみるべきだろう。まず、様々な意見対立から、今回政権が提案したインフラ投資計画を実現するためには多くの調整が必要になるとみられる。米国のインフラの老朽化に対する問題意識は以前から超党派で共有されているものの、インフラ投資の規模や財源に関して共通認識は得られていない。バイデン政権は財源として、法人税率の引き上げや多国籍企業の海外収益への課税強化などを提案した。しかし、これに対して共和党は強く反発しており一部議員からはインフラ投資全体の規模を3分の1程度まで縮小すべきとの意見が上がっている。他方、民主党内の急進左派からは、今回のインフラ投資計画の金額が少なすぎるとの指摘が出ており、両者の隔たりは大きい。連邦議会の上下院ともに民主党が実質的な過半数を握るとはいえ、その差は非常に僅差である。超党派での合意であれ、民主党単独での成立を目指すのであれ、意見の集約は容易ではないとみられる。

2点目の理由として、財政悪化による金利上昇への警戒感が高まっていることが挙げられる。米国の長期金利は2020年後半から速いペースで上昇してきたが、その一因には財政悪化への懸念があったとみられる。仮にインフラ投資が実現としたとして、財源が十分に確保されず財政の悪化が見込まれれば、長期金利上昇に拍車がかかる可能性があろう。米国ペンシルバニア大学ウォートン校の経済モデルを用いた試算によれば、AJPのうち増税がなく歳出拡大のみが実現した場合でも、金利上昇によるクラウディングアウトが発生し、政策が実現しなかった場合と比べてGDPはむしろ低下するという結果が示されている (※1)

ペロシ下院議長は7月4日を法案可決の暫定目標に設定しており、議論は徐々に本格化していくことになる。財政規模の大きさいAJPへの注目度は当面高い状況が続くと見込まれるが、その議論の内容を冷静に見極めていく必要があろう。


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