大和総研コラム

Fedは長期金利の上昇を食い止められるのか

  • 経済
  • 掲載日 : 2021年3月23日
  • 大和総研金融調査部 研究員 中村文香

米国10年債利回りは2021年初から3月にかけて上昇した。新型コロナウイルスワクチンの普及が進み、経済活動が復調すれば、現金給付や消費の抑制を背景に積み上がった貯蓄が消費にまわされ、インフレ期待が高まりうる。長期金利が大きく上昇した場合、米国連邦準備制度 (Fed) ができるのは国債の買入れだ。現行の国債買入れでも長期金利の押下げは可能かもしれないが、より効果的にするためには、特定の年限の金利をコントロールできるような手段が望ましい。2020年の金融政策枠組みの見直しにあたり、2020年7月の連邦公開市場委員会 (FOMC) では長期金利のコントロールも俎上に載せられたが、導入には慎重な姿勢を見せる参加者が多かったようだ。

実はFedは過去に政治的要請から長期金利の操作を行い、中央銀行の独立性が脅かされた苦い経験がある。第二次世界大戦中、米国政府の利払い費を抑えるため、Fedは短期金利を固定し、長めの金利が一定以上に上がらないよう国債を買入れていた。終戦後に長期金利が上昇した際、Fedはインフレ率の上昇を懸念しつつ、長期金利を抑え込むために大量の国債を買う必要に迫られた。1950年に朝鮮戦争が勃発すると、米財務省は戦費調達のため金利を低く保つことを望み、Fedは戦争によるインフレと戦うため金利を引き上げることを望んだ。最終的には財務省とFedの間で協定が締結され、長期金利を抑え込む政策は撤廃された。

現在の資産買入れと当時の政策との違いは、量をターゲットとするか、金利をターゲットとするかの違いである。現在は「月に○億ドル」というように買入額の目安を示して買入れを行っているのに対し、1940年代には「○年金利が○%以下となるように」といった目標の下、買入れを行っていた。金利をターゲットにすると、金利が目標値以下であれば買入れを行わなくて済む。裏を返すと、金利が上昇する局面では、金利が抑え込まれるまで無限に買入れを行わなくてはいけない。FOMCでも議論されたように、出口戦略の難しさや中央銀行の独立性、国債市場の機能を低下させる懸念がある。

一方で、金利のコントロールは有用であることも事実で、運用面で改善の余地があるのではないか。日本銀行は、イールドカーブ・コントロールの導入以後、国債買入額を抑制しつつ、長期金利をゼロ%程度に保ってくることができた。イールドカーブ全体の水準を明示せず、翌月の国債買入は何年債をいくら買うかを示すことなどで、市場とのコミュニケーションをとり、政策の柔軟性を高めることができているといえそうだ。

米国での金利コントロール導入のハードルは高いが、日本のように工夫次第で柔軟性を高めることができるのであれば、検討に値する手段であるといえるだろう。


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