大和総研コラム

存続に向けた業態の仕組みづくりと資金確保の重要度が高まる外食業界

  • 消費 / 社会
  • 掲載日 : 2021年3月17日
  • 大和総研金融調査部 主任研究員 中村昌宏

今年1月に11都府県に発出された新型コロナウイルスに係る緊急事態宣言は、2月末までに7府県で解除されたものの、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県は3月21日までの延長となっている。また緊急事態宣言が解除された地域でも、飲食事業向けに各自治体から営業時間の短縮要請が発出されており、飲食事業者にとっては厳しい環境が続いている。

これまで外食企業の多くが、①テイクアウトやデリバリー向け販売への対応、②不採算店の閉鎖や新規出店の見直し等による経費節減、③雇用調整助成金の特例措置、営業時間短縮に係る感染拡大防止協力金などの公的支援策の活用、④劣後ローンや第三者割当増資などを含めた資金調達と手元流動性の確保、に努めてきた。しかし、元々テイクアウトが多かったファストフードを除けば、失った販売機会を取り戻せていない。

日本フードサービス協会の外食産業市場動向調査によると、1月の外食市場は前年同月の8割程度に留まった。昨年4-5月に初めて緊急事態宣言が発出された時期が6~7割の水準だったことと比較すると落ち込みは限定的だが、対象地域の違い (前回:全国、今回11府県) の影響もあったと推察される。1月は、ドライブスルー、テイクアウト、デリバリーが伸長したファストフード (洋風) を除けば、ファミリーレストラン、パブ・居酒屋、ディナーレストラン、喫茶のすべての業態で前年割れが続いている。特に夜の営業時間帯での売上指数の高いパブ・居酒屋やディナーレストランでは、1月の売上高が前年同月の半分にも達しなかった。

今後は新型コロナワクチン接種の効果が期待されるとはいえ、早々に新型コロナウイルス前の生活様式に回帰する確度が低い中で、外食企業は引き続き、「新常態 (ニューノーマル) 」への対応が求められる。特に、テイクアウトやデリバリー向けの事業ポートフォリオを高めるための仕組みづくりの構築と、手元流動性の確保が重要だ。

一品単価の高い業態では、店内と同じ価格帯でテイクアウト需要を掘り起こすことは難しい。例えば、素材の良さという強みが調理後も一定時間維持できるメニューの開発、食材以外の経費をうまくコントロールしてボリューム (食材) 増を実現する等の仕組みづくりが期待される。

また、これらの経営戦略を支える資金の確保も必要となる。これまでは、劣後ローンや劣後社債など、資本と負債のバランスを意識した資金調達が多かった。しかし、厳しい業況が長期化し、足下は米国長期金利の上昇等を受けて中長期の金利水準が高くなるなど、借入金や社債での調達コストが増加する要因が増えている。3月決算の多い上場外食企業では、株主総会で定款変更等の承認が必要となる優先株式での資金調達も検討材料となろう。

新型コロナウイルスが登場して1年が経つ中、外食企業の存続に向けた業態の仕組みづくりと資金確保の動きが注目される。


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